協栄vs角海老宝石・2つのTKO勝負! | BOXING MASTER first 2006-2023

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輪島功一選手の試合に感動、16歳でプロボクサーを志し、ボクシング一筋45年。ボクシングマスター金元孝男が、最新情報から想い出の名勝負、名選手の軌跡、業界の歴史を伝える。

17日後楽園ホール。私の担当する2選手、元Sフライ級ランカー白石豊土選手と、デビュー戦を初回KO勝利で飾っていた小野木協栄(カナエ)選手の二人が、角海老宝石ジムのSフライ級12位奈須勇樹選手、エディ賞受賞の田中栄民先生が、「将来のチャンピオン候補」といわれるコーチ義人選手と対戦。

「調子はいいし、やる気はあるよなァ」

「今回は意欲があります。かつてない程調子もいいです」

「後はゴングが鳴って、どうかだな」



白石豊土選手。これまで14勝(6KO)5敗1分。現在2連敗中。対する奈須選手は17勝(13KO)4敗。かつての全日本新人王である。グリーンツダジムから角海老宝石ジムへ移籍し、今は田中先生に師事する。

青コーナー観客席とは扉1枚隔てた階段踊り場で出番を待つ。相変わらず調子はいい。気合も十分。

「新人王は準決勝の翌日引越しなんて予定組んでるんだもんなァ」

「A級決勝は固まっちゃうし」

「富山(浩之介)戦は、相手の戦績にビビッちゃうし」

「福本(雄基)戦は、いい気になりすぎちゃって」

「永安(潤之介)戦は、舐めちゃってなんにもしないんだから」

「今日は頼みますよ。ゴング鳴った瞬間、方針変更なんてやめてくれよ」(~~)

後からやって来た大竹マネジャーも全く同じアドバイス。

「さァ、行くぞ!」

 ペタしてね

練習中、試合中問わず、「オカマパンチ禁止」とドヤされる白石選手。奈須選手のパワーに対抗するには?

「白石なんて気持ちがハッキリしないやつは、先に行かせて調子乗らせて逃げ切るしかないよ。向こうに前半取られたら、オカマパンチじゃ逆転出来ないぞ」

「確かにである」。大竹マネジャーのアドバイス通り、練習は先行逃げ切りを意識。水分の誘惑に負けずしっかり減量すればスタミナはある。真面目でいい子なんだが、誘惑にはめっきり弱そうな性格で、ブログにも弱気な事平気で書いて、同情誘って満足してる。かと思うと、いきなり自転車で九州まで行っちまったり、予断を許さぬ白石君である。

「オッ、今日は違うみたいだな!」

ネチネチ見栄えがするものではないが、前進し手を出している。「腹強く」も予定通り。とにかく下がらない事。パワーでは断然かなわない。

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「今日はひょっとすると、いいかもね。まだわかんないけど」(~~)

「パンチ切るんだよ!」。ヒルマ先生が叫ぶ。

「それ出来ないんだから、ああやってるんじゃないか」(~~)

大竹マネジャーと思わず顔を見合わせる。今、出来る事をやらせる他ない。

「よ~し、今までで一番いいよ。このまま続けろ。腹、いいぞ!」

3回、4回と調子に乗って来た”サスケ”。奈須選手もそのパワーで押し返そうと打って来るが、引かずにやっている。ラウンド中盤以降はスタミナの差が出て来たか。

「よし、5回。後4回戦一つ。もう力抜いて、楽にやって来いよ!」

5回。ごくたまに打つ、素早いコンビネーションが出た。コーナーに追い込む。決め手がないだけに強烈なブローを打ち込めないが、数も当れば効いて来る。「ショート。ショート!。ここで勝負賭けろ!」。

奈須選手は顔面血まみれ、バッティングでカットした左目に加え右目上からの出血も激しい。疲れたかと見えた白石選手だったが、さらに追い討ちをかける。南側リングサイドからは、「危ないよ」の声も飛ぶ。

「さっきはあんなに早く止めといて、何で止めないんだよ」

レフェリーはストップのタイミングを探している。それに一生懸命のせいか、あれだけの出血がありながら、このラウンドはドクターチェックが一度もない。吉田レフェリーが試合をストップした瞬間、白石選手も頭から足まで返り血でぐっしょり。最近、あれほどの流血をラウンド中一度の試合停止もなく続行されたケースは記憶にありません。



ストップの瞬間うれし涙の勝者。今までの呪縛から開放された事を願います。また調子に乗って自爆も十分考えられますが。(~~)とにかく、この試合は相手が強いぞという危機感を持って挑んだ事が良かった。奈須選手とは、シャワー室で中身の濃い会話を交わしたようです。お互い意地のぶつかり合い、良い試合だったと思います。



小野木協栄選手。こちらも調子は良い。4回攻め続けても切れないスタミナはある。対戦相手コーチ義人選手は、予想通りの好選手。うまいボクシングをする。この日、なぜか前に出ない小野木選手。

「お前1ラウンド取られちゃったよ」

「ああいううまい選手には、1発、2発じゃ当らないから、3つ、4つと打って、すぐにまた追い打ち。それ繰り返せば、当るようになるから。ちょっと打って様子見てたんじゃダメだよ」

「前に出て打って行く。相打ちのタイミングでいいから。パンチはお前の方が上だ。前に出ながらカウンター」

しかし、2回もおとなしい。一発KOが忘れられないのか、勝たなきゃまずいと慎重になっているのか、いつもの思い切りの良さがない。

「お前、このままじゃ何にもしないで終わっちゃうぞ。たくさん応援に来てもらって申し訳ないと思わないか」

「前に出て打てば効いちゃうから。頭入ってきたら右アッパーから左フックおもい切り返せ!」

「倒すしかないな」

最終回が始まった。ようやく前に出てパンチを繰り出す協栄選手。しかし、焦りからかバランスは悪い。良いパンチも当てた。最後まで一発KOパンチは持っている。だが、打ち合いの最中試合は唐突にストップ。青コーナーは思わず苦笑い。だが、完敗である。恐るべし18歳、コーチ選手。

結果的には白石選手的自爆。(~~)

「お前、白石がこっち来いよ~って呼んでなかったか」(~~)

涙を見せた協栄選手だが、白石先輩の奮闘を見て元気回復。一つの勝負に対して、もっと必死にならなけりゃダメだ。「次は頼むぞ!」(~~)

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