◇映画『セルマ』(邦題、グローリー/明日への行進)~1965年3月公民権運動の血塗られた日曜を描 | 吉岡正晴のソウル・サーチン

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◇映画『セルマ』(邦題、グローリー/明日への行進)~1965年3月公民権運動の血塗られた日曜を描く(パート1)

【Movie “Selma” Portrays Bloody Sunday (Part 1)】

公開。

グラミー賞、アカデミー賞の両授賞式でテーマ曲「グローリー」が大々的なパフォーマンスを繰り広げ、その存在感を見せつけた映画『Selma(邦題、グローリー/明日への行進)』が日本でも2015年6月19日(金)から公開されることになった。当初は、日本公開予定がなかったが、急遽決まった。試写の案内をいただいたので、予定を変更して「いの一番」で見てきた。

試写会場に行くと、WOWOW・ニコ生「ぷらすと」でおなじみの映画評論家、松崎健夫さんがいらしてしばし雑談。

今回は公開までまだ日にちがあるので、あまりネタばれにならない感じでご紹介第一弾。

日本版オフィシャル
http://glory.gaga.ne.jp/

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この『セルマ(邦題、グローリー/明日への行進)』は、全米ではおよそ2000万ドル(約24億円=1ドル120円換算)の予算で製作、2014年12月25日に公開され、現在まで約6000万ドル(約72億円)の興行収入を得ているヒット映画。第87回アカデミー賞で作品賞と主題歌賞の2部門にノミネートされ主題歌賞を獲得した。

当初は『大統領の執事の涙(The Butler)』や、現在ヒット中のテレビ・シリーズ『エンパイヤー』をてがけているリー・ダニエルズが監督する予定だったが、ダニエルズが『大統領~』にかかりきりになったために、新進気鋭の映像作家エイヴァ・デュヴァーネイが監督になった。

物語は、公民権運動を積極的に率いていたマーチン・ルーサー・キング牧師らが選挙投票権を得るための住民登録(有権者登録)をできるように運動していく様を描く。公民権法は1964年にすでに施行されていたが、人種差別の激しい南部では実質的にその効力が発揮されず、差別は続いていた。1965年3月7日、彼らは南部アラバマ州セルマから州都モンゴメリーまで54マイル(87キロ)を多くの人とともに非暴力のデモ行進をする。しかし、そのデモ行進は街に入るエドモンド・ぺタス橋でそれをさせまいとする州兵・保安官たちと衝突になる。人種差別主義者のアラバマのウォーレス知事はこれをなんとしてでも阻止せよと命令、多くの死傷者が出て撤退するが、その模様を報道陣が目撃、テレビも中継していた。そして、この日は「ブラッディー・サンデイ(血の日曜日事件)」として全米中に知られることになり、公民権運動を多くの人が支持するようになる象徴的な事件となった。

一度はその場を撤退するキングたちだが、再度入念に準備をし直し、行進を再挑戦する。今度はその中継を見た人たちが白人も含め、膨大な人数になって参加。果たして二度目の挑戦で彼らは目的を成し遂げられるのか。

これらの過程でキング牧師が時の大統領ジョンソンや同じ黒人活動家マルコムXと会談し、運動を推し進める様子や、キング牧師周辺が白人に脅され、妻と子供らが悩む様子なども描かれる。

予告編(日本版)
https://youtu.be/-dvVAgIV_-I



予告編(アメリカ版)
https://www.youtube.com/watch?v=x6t7vVTxaic



主題歌「グローリー」ジョン・レジェンド、コモン

https://youtu.be/KnIozPJWTPM



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主人公。

映画を見ての最初の感想は、キング牧師の不屈な戦いと、家族をも巻き込むさまざまなトラブルに悩む姿、そして信念に基づいた変革(チェンジ)への闘志がすごいということだった。

命がけの闘いのすさまじさを見せるキング牧師役のデヴィッド・オイェロウォの熱演が光る。

物語は、理不尽なこと、正義ではないことがあればあるほど、見る側にそうしたものへの欲求を感じさせる。この『セルマ』はまさにそれ。だがこうした理不尽な差別がほんの50年前まで実際に起こっていたことが、こうして映像として見せられると改めて魂をえぐられる。それは『大統領~』でも、『それでも夜は明ける』でも同じだ。

弱気になったキング牧師がゴスペル・シンガーのマヘリア・ジャクソンに電話して電話超しに「テイク・マイ・ハンド、プレシャス・ロード」(映画ではレデシーが演じ、歌う)を歌ってもらうシーンなどはすごくジーンときた。

キング牧師のトレードマークであるさまざまな演説は権利の関係で、直接使うことができなかったために、スピーチを研究し、キング牧師がいかにも語りそうなスピーチ原稿にまとめたという。それでもやはり、よくできたスピーチになっていて、映画に華を添えた。

僕は個人的にはウォーレス知事を演じたティム・ロスの演技があまりににくたらしくて印象に残った。

最初は小さな運動が徐々に大きなうねりとなり、変革が起きていくというその過程が描かれ、それは感動的だ。アメリカで高い評価を得たことがよく理解できる。

■サウンドトラック

Selma - Music from the Motion Picture
Paramount Pictures/Pathé Productions Limited for this Compilation (2015-01-06)
売り上げランキング: 11,413



■セルマの橋が語られるオバマ大統領勝利演説(2008年11月)

「チェンジ・イズ・ゴナ・カム」から「チェンジ・ハズ・カム」へ~オバマ氏勝利演説
2008年11月08日(土)
http://ameblo.jp/soulsearchin/entry-10161914791.html

ブラックの歴史が簡潔にまとめられた名演説中の名演説。

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映画『セルマ(邦題、グローリー/明日への行進)』は2015年6月19日(金)公開予定。

(この項、明日に続く)


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