◎「ソウル・サーチン~プリンス」~ケイリブ・トークス | 吉岡正晴のソウル・サーチン

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◎ 「ソウル・サーチン~プリンス」~ケイリブ・トークス

【Kaleb Talks About Prince】

ケイリブ。

2012年6月7日と8日に目黒のブルース・アレイで行われた「ソウル・サーチン:ザ・セッション、Vol.12~プリンス・トリビュート」。そのユーストリーム中継用のライヴ直前のプログラムで、ケイリブがちょっとプリンスについて語っている。最初は簡単なコメントは少しその場で訳していたが、ケイリブがしゃべり続けたので、その場で訳せず、字幕をつけた。その内容をご紹介しよう。 

白人音楽。

「プリンスについては、なんて言ったらいいんだろう。彼は、多くの人にインスピレーションを与えている。しかもアーティスティックな自由と尊厳を持って、妥協することなく、あらゆる面でクリエイティヴにやっている。いつでもね。僕たちはあなたの音楽をとても評価しています」

「僕はニューヨーク出身で、あらゆる小さなクラブでは、みんながプリンスをパンクロック・ミュージシャンだと思っていた。彼の着てるものや、パフォーマンスの仕方からね。周りの連中はプリンスは『白人の音楽』と捉えていた。つまり、ロックだ」

「最初僕もどう捉えていいか、わからなかった。でも、何十年も前に僕は目覚めたんだ。特にロックのルーツがどこにあるのか知って、目覚めたんだ」

「僕は黒人街に育った。セント・マリアやティト・プエンテを聞いている連中がいた。それから次の世代は、ジェームス・ブラウンやスライ・ストーンを聞いてきた。そして僕の父、おじさん、姉たちの世代になる。リトル・リチャード、チャック・ベリー、ボ・ディドリー・・・。ロバート・ジョンソンまで聞く。ロック・ミュージックは直接ブルーズ、R&Bから生まれていることを知ったんだ」

黒人ロック。

「黒人がロックをやって驚くとは、リンゴの木にリンゴが成って驚くのと同じことだ。どっちもそもそもリンゴの種から育ってるんだからね。黒人がロックをやって驚くなんて馬鹿げてる。どう説明すればいいんだろう。プリンスが白人音楽をやってるというのも馬鹿げてる。レニー・クラヴィッツがロックをやっておかしいという。ジミ・ヘンドリックスやリヴィング・カラーのヴァーノン・リードもそう言われる。ただ、彼らは唯一ロックをやることを許される黒人のようにみえるだけだ。80年代から今にいたるまでそんな感じだ」

「黒人がロックをやってはいけないというのがそもそもおかしい。黒人音楽をロックとして売るのは変だなんてことはないのだ」

「だって、(白人の)リック・アストリーや、ホール&オーツ、ジョージ・マイケル、エミネムが黒人音楽をやってても、誰も文句は言わないだろう? ブラック・ミュージシャンがギターの音をひずませ、ワウワウの音を出して、長いトーンを出して、それを『おい、白人の音楽をやってるぞ』っておかしいだろ。本当はみんなブラック・ミュージックなんだよ。もし仮に音楽に色を付けるならね。僕は音楽に色付けはしないけど、どうしても色付けしなければならなければ、それはブラックだ。ルーツはブラックだ」

「リンゴの木にオレンジが成ったら、驚いてもいいだろうが、リンゴが成っても驚くべきじゃない。そうした馬鹿なことに気づかせてくれ、多くの人の頭に音楽的外科手術をしてくれたのが、プリンスなんだ。彼はそうした問題を浮き彫りにして、パンク、ファンク、ロックといったものの『つながり』を我々に教えてくれた。『おや、これはロックじゃないのか』と気付かせてくれたのだ」

パイオニア。

「ディスコ好きな奴がファンクを聞くようになったり、ファンク好きがロックに興味を持ったり、ロック好きがソウルを聞き始めたり、彼のおかげでそうなった。そしてプリンスはそうしたあらゆる音楽をひとりでやってきた。彼はそんなジャンルを超えたパイオニアなんだ。しかも、あらゆる人々、リスナーをひとつにした。もちろんプリンス以外にも同じようなことをしたアーティストはいるが、プリンスはその中でもトップだ」

「彼は自身の(アーティストの)名前を変えたが、それはアーティストとしての自我、尊厳を守るためだった。こういう過去もある。今でも僕たちは(ブルーズ・アーティストの)ロバート・ジョンソンを聞く。ほかにも多くのインスピレーションを与えてくれるミュージシャンの音楽を今でも聞く。だがそうしたかつての偉大なミュージシャンたちは一文無しで死んでいる。多くの黒人アーティストがそうだ。たとえ有名なR&Bアーティストでも今日までうまく生きてこれていない者もいる」

「プリンスはそうしたアーティストに対しても声高にサポートしてるんだ。特にアーティストの尊厳についてね。自分の仕事は、自分の未来だ。僕たちの将来のファミリーのためでもある。たとえば、ドナルド・トランプはその孫の孫の孫まで、働かなくても大丈夫だろう。生まれる前から将来を心配する必要なんかない。プリンスの子供もそうだろう。僕も素晴らしい曲が書けたら僕の孫もその恩恵に浴することもできるだろう。だが、そのためには、アーティストは戦わなければならない。ミュージシャンは常にクリエイティヴに深く掘り下げていかなければならない。それが大事なんだ。そして、(それができるための)カギはアーティストが称賛され、評価されることなんだ。その音楽をずっと人々の記憶に残らせることだ。アーティストとして彼が称賛されることが大事なんだ。それは自分たちの音楽をピュアにし続けるために、そして自分自身のためにね」

「スティーヴィー・ワンダーはそれができている。トーキング・ヘッズのデイヴィッド・バーンも、REMも、トッド・ラングレンもそうだ。みんなアーティストの尊厳、プライドを持っている。プリンスもそんな一人だ。アートとしての音楽をそうしてくれたことに対して、僕はプリンスを称賛し、高く評価するよ。素晴らしいアーティストであり、素晴らしい人間だと思う」

ケイリブのコメントおよび、「ソウル・サーチン~プリンス・トリビュート」ライヴ映像アーカイブ↓

http://www.ustream.tv/recorded/23237304

プリンスがこの映像を見て、この中から誰かをプリンスのバンドに引き入れてくれたらおもしろいのだが。(笑)

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