『song of the sea 海の歌』を観てきました☆ | 木製魔術道具作家☆ルーン&オガム マスター☆そらのともしび Official Blog

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北部ヨーロッパの樹木信仰をベースにした魔術道具制作、古代ゲルマンの文字・ルーンや古代アイルランドの文字・オガムを使ったリーディングやリーディング講座を主催しています。

先週の土曜日、昨年から夢中になっていた
『ブレンダンとケルズの秘密』を作られた
トム・ムーア監督の作品
『song of the sea 海の歌』を観てまいりました~きゃー
 



今回はとっても楽しみにしていた上に
いろいろ照らし合わせもしたりしていて、毎度ながら
好きだからこその気持ち悪いほどの長さになっておりますイヒヒ・・・モヤ
お時間のある時にでも読んでいただけましたら幸いです~汗
 

前作もケルティックなモチーフと
自然物の融合が素晴らしかったのですが
今作の特徴を一言で言うとするならば
何といっても、色使いの素晴らしさ、でありました。

どの場面を切り取っても
そのまま額に入れて部屋に飾りたくなるような
美しい色合い、美しい風景。

今作の音楽も素晴らしく、これらの映像と素敵に溶け合っていて
映画の冒頭の海の色と切ない歌声に
早くも滂沱の涙・・・涙だったのでした(早過ぎる・・・汗

それにそれに!!
何といっても、今回はオガム文字が登場しているのです~sao☆∑!!
画面の移り変わりが早いシーンで、なんて書いてあるかまでは
解読できなかったので、ぜひDVDを取り寄せて
じっくり見てみたいと思いました。

 

【追記】

2017年夏に『ブレンダンとケルズの秘密』

待望の全国公開!となった訳ですが

大きなスクリーンで観てみましたら

オガム文字、登場していました(;^ω^)

 

ブレンダンとパンガが初めてアシュリンの森に行き

狼たちに取り囲まれる、石器時代の遺跡のところです。

ぐるりと立つ巨石にオガム文字が刻まれています。


(ちなみに、ムーア監督の腕にもオガム文字が刻まれているのを
Twitterの画像にて発見ひらめき*
こちらも全容がわからないので何を刻まれていたのかは
はっきりわからなかったのですが、
映画に出てきたような装飾付きのオガム文字で、素敵でしたきゃー


以前ブログにも書きましたが
 ★過去記事矢印
 『アイルランド民話・セルキーの物語『song of the sea』』

こちらの作品は
アカデミー賞長編アニメ部門にノミネートされた作品であり
今年3月19~23日に行われた、日本を代表する国際アニメ映画祭、
東京アニメアワードフェスティバル(TAAF)2015に出品され
見事コンペティション部門でグランプリキラキラを取りました。

さらにさらにひらめき*
本国アイルランドのアカデミー賞では映画部門において
実写映画を相手に最優秀賞を受賞した、とのこと。

いつか観たい・・・と思っていたものの
TAAF2015に出品されているのを知ったのは結構間際で
その時にはすでにチケットはソールドアウト。
前作の『ブレンダンとケルズの秘密』もとても好い作品なのに
残念ながら、日本では公開・DVD等発売される気配がない模様。

なので、またアイルランド関係のイベント時に
アイルランド大使館さまのご厚意か何かで
観られたらいいなぁ・・・と思っていた矢先
毎年、国立近代美術館フィルムセンターで行われている
ヨーロッパの映画を集めたイベント
『EUフィルムデーズ2015』で上映されることを知り
いろいろ忙しかった5月はもう、
30日の公開を楽しみに、ひたすら突き進んだのでありました。
 


 

 

 

 


しかし、この国立近代美術館フィルムセンター、
チケットの予約が出来ないルールになっていて。
映画の開始時間30分前にチケット販売となり
満席(確か300席ほど)になったら札止めになる、という方式とか。

TAAF2015でソールドアウトだったし・・・と思って
早めに会場に到着して正解でした。
座席はほぼ満席。

国際的な評価も高い訳ですし
こんなに観たいと思う方がいるのだから
小さな映画館でもいいから、公開してくれないかなぁ・・・えーん
それがダメでも、
日本語版DVDとかBD発売してくれないかなぁ・・・はぁ??汗
と思うんですけどもね~。


さてさて、感想の続きですが
キャラクターは、前作に感じたデフォルメ感は残るものの
全体的にはより丸みを帯びて可愛らしさ満点。
前作の『ブレンダン~』は白猫パンガー・バンが活躍していましたが
今作は犬足跡∑!!

主人公ベンの仲良し、
オールドイングリッシュシープドックのクー(だったかな?)が
大活躍しており、前作猫、今作犬と
犬派の方にも満足な仕上がりになっておりましたよ。

パンガー・バンは猫っぽくツンデレに描かれていましたけど
クーは犬の無邪気さ満載犬
もふもふ具合の再現も素晴らしい。

上の画像の右下がクーなのですが
初めてこれを見たときに、アザラシに似ていると思ってしまい
クーはベンの妹シアーシャ

(アイルランド語読みの発音では、

シールシャ、でいいのでしょうか?)
を守るために、アザラシが変身した姿だったりして・・・と
勝手に想像してしまっていました。
(アザラシじゃなくてちゃんと犬でした汗
こんなにまったり感ある風貌だけど、勇気あるカッコいい犬!!

ストーリーの方は、神話と民話、そして魔法と冒険、さらに
様々な親子愛が描かれた、老若男女が共に楽しめる
お話に仕上がっておりました。

セルキーをはじめ、アイルランドの神話や民話に出てくる
神や妖精たちがモチーフのキャラクターたちも登場しており
監督はジブリ作品をリスペクトしているようですけど
このお話をジブリの作品に例えるならば
『千と千尋の神隠し』とか『となりのトトロ』的なジャンルになるのかな!?

子どもにもわかるようなストーリーでありながら
細部を観ていけば、大人も充分に楽しめるお話だと思いました。

ただ、事前にサラッとあらすじを読んでしまったのがいけなかったのか
観終わった後、数点なんだかもやもやしてしまった部分がありはぁ??汗

このブログを書くのに、改めて
様々なメディアに挙がっていたあらすじをもう一度読み直してみたら
『あれ?それは映画の中では語られてなかったよね?』
という部分を発見。
いやそもそも、わたしが字幕を見逃してしまった・・・ガックリ・・・
という可能性もあるかもしれないのですが・・・。

語られていなかった(とわたしが感じてしまった)部分を
知らずにおり、
辻褄が合わないというか、腑に落ちない状況だったので
調べて改めて設定を知ったことで
そうだったのか~と納得出来たので一安心、でしたけど
どうせなら映画上でそのことを知りたかったなぁ・・・はぁ??汗
(もしくはちゃんと気付けていたらなぁ・・・自分ガックリ・・・)と
ちょっぴり残念だったのでした。

ややネタバレになりますので、もしご覧になりたい方は
下の空欄部分をすべて選択されますと
字が読めるようになっていますので、もしよろしければどうぞ~↓1↓コチラ

わたしが腑に落ちなかったのは、
ベンとシアーシャの兄妹が冒険に出て
妖精たちに出会い、シアーシャがセルキーであって
しかも、とても重要な人物だとわかるのですが
『何故重要か?』の部分が、語られていなかったように
感じたのですよね。

セルキーが重要なら、海に帰った
ベンとシアーシャのお母さんがいるじゃん・・・(・・?
と思っちゃって。

のちに調べてわかったことは
シアーシャが【最後のセルキー】であり、
その最後のセルキーにあることをしてもらうことが
キーポイントだった、ということのようで
それだったらまぁ納得できるかな、と腑に落ちた訳でした。

勘違いかもしれないけど
映画の中では出てこなかった気がしたんだけども・・・。
わたしが妖精たちのおしゃべり字幕を追い切れていなかった
という可能性もあるのですけれどね(-_-;)
どうでしょう?



個人的に一番心を打たれたのは
自分のアザラシの毛皮を見つけ
海を活き活き泳いでいたシアーシャが最後にした決断でした。

『何故そう決めたのか?』をシアーシャは語らないのですけど
(まぁ、それまでのストーリーを考えればわかると言えば
わかるのかもしれませんが)
そのシーンを観たとき、監督さんは
アイルランドに伝わる神話や民話を『過去のもの』と捉えているのではなく
ましてや、世知辛い現(うつつ)から逃避するための理想としてではなく
しっかりとこの現代にも息づいているもの、繋がっているものとして
今を見つめて描かれていたのかもしれないな、と感じました。

なんというか、あり得ない夢のような話だったね、
楽しかったのに終わっちゃったね、
そんな日々は長く続くことはなく、仕方ないからまた日常に戻ろう、
いうような感じではなく
魔法のような出来事、不思議な生き物たちと冒険の日々は
『今を大切に生きるからこそ』、必然としてあった、というのかな?
『ちゃんと今を生きている自分』を中心に据えた話である、ということを
なんだか強く意識させられたのでした。


映画の中に登場する神様や妖精達についてですけど、
上映前に、ゲストトークがありまして
アイルランドの伝承文学研究家である渡辺洋子さんが
映画に出てくる神や妖精たちの出典元であろう
物語について、短い時間ではありましたが
とても興味深くお話くださいました。
(もっとあってもよかった・・・時間・・・汗

わくわくしながら聞き入っていたのですが
今となっては、ちゃんとメモを取ればよかったなぁと後悔。

うろ覚えをネットの力で補いつつ書いてみますと、
セルキーのことは、前述の過去記事にも書いたのですが
セルキーが海で泳いでいるときはアザラシの皮を着ている
というのは、アイルランドにもあるそうなんですが
どちらかというとスコットランド周辺でよく聞かれる民話なんだそうで
他の場所では、メロウ(merrow)と呼ばれる人魚のお話に
なっているらしいです。
すべての場所でセルキーの物語が伝わっているのではなく
地域性があるお話のようでした。
(アザラシの出現ポイントと関係あるのかな?)


どちらも日本の羽衣伝説に似ていて
岩などに腰かけて歌ったり髪をすいたりしているところを
見初められて人間と結婚。
身に着けていたアイテム(帽子、ショールなど)を隠され
海に帰れないのだけど、子どもを生んだのちに
それらが偶然発見され、子どもを残して海へ去っていく。

また、子どもを残して海へ去って行っても
残した子どもへの愛は変わらずに
子どもがセルキーと人間のハーフだとして虐められている場面などでは
海の中から虐めっ子へ仕返しする、というエピソードもあるんだそう。

メロウもセルキーと同じで女性だけではなく男性もいて
(男性はなぜか緑の髪と歯を持ち、鼻は赤く
目は豚のようで醜いとされています・・・何故汗
女性の場合はとても美しく
姿は所謂マーメイドと同じだとか。
男女ともに赤い羽根の帽子を被っていて
この帽子を盗られてしまうと、海に帰れなくなるといいます。

お話が面白かったので、会場で売っていた渡辺さんの御本を
購入してみました。

 

 

 

 

 

子どもに語るアイルランドの昔話/こぐま社
¥1,728
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(この中には人魚の話も載ってました。)


さて、映画に出てきた神様や妖精たちですが
特におそらく海の神、マナナーン・マクリルをモチーフとした
巨人マクリルの嘆きっぷりにグッと来てしまいえーん
なんか、素戔嗚尊の嘆きっぷりとも重なっちゃいました。

奇しくも両方とも海に纏わる神様。
だからウエッティなのでしょうかぇ

あの嘆きっぷりを目の当りにしたら
そりゃ、フクロウ魔女・マカ(マクリルの母)も
それを何とかしてあげたくなるよ・・・と思ったり。
(素戔嗚尊は伊弉諾に海から追い出されてしまったけれども。)

マクリルの母、マカはいろいろ調べたんですけど
スペルからすると、『Macha』なので
トゥアハ・デ・ダナーン族の戦いの三女神の一人、
女神モリガンの『死のペルソナ』といわれるマハ(ヴァハ)が
モチーフなのかなぁと。

神話ではカラスの姿をしているそうですが
マカは映画の中ではフクロウの姿をした魔女として
描かれています。
(若干、湯婆婆&銭婆が思い出されるルックスです。
そういえば、この二人もフクロウかカラス?
に化けていませんでしたっけ!?

井村君江さんの御本、
『ケルトの神話~女神と英雄と妖精と~』によりますと、
マハ(ヴァハ)は戦いの女神でありながら
母神と大地の女神にもなっているんだとのこと。

これは伝承される3つのお話の中で
妻や母として登場していることやお城を作ったとされ
ある土地と結びつき、豊穣の女神として崇められていた
ということからなんだそうです。
(ケルトの祝祭、8月1日のルーナサでは
最初の作物の収穫を祝いますが、この時の収穫の女神として
崇められてもいます。)

しかし、もともとマハ(ヴァハ)とはカラスという意味で
戦いの女神として戦場をカラスの姿で飛び回り
戦いで死んだ人の首を食べている、とも信じられていました。

ケルトの戦士たちはとりわけ人間の頭部に力を感じ
敵の首を打ち落とした後、
それを手柄の証拠などとして玄関に飾る風習がありますが
これは『ヴァハの木の実のえさ』と呼んで
マハ(ヴァハ)に捧げたものだという見方もあります。

戦いで死んだ人の首を食べ歩いている(飛んでいる?)
というモチーフが、映画の中ではああいう表現になったのかひらめき*
と思ったりして、なんだか面白かったりも。
さらに、死と戦争を司る恐ろしい神さまなんだけど
それが母神と表裏一体である、というのも
お話を観た後ではすごくしっくり来る感じがしました。

なのでやっぱり、マカはマハ(ヴァハ)がモチーフなのかも、と
確信が持てるような気がしてます。

他には、都会の交差点の真ん中に住んでいる妖精
ディーナシー達。

映画の中ではかしましく(というのも変だけど)
可愛らしいおじいちゃん妖精たち(ルグ・スパッド・モッシー)
として描かれていて、とにかく微笑ましいのですきゃー
アイルランドで夜な夜な行われているであろう
パブセッションを見ているような楽しさも。

下に書いたシャナキーにも通じることなんですけど
アイルランドはケルトの時代から口伝だったり
お話を聞かせる語り文化が盛んで
一人が語りだすと、周りにいる人が
次は自分だ、と言って語りだすこともあるんだとか。
今でもお話クラブのようなものがあると何かの本で読みました。

そういうDNAみたいなものを、このおじいちゃん妖精たちから
垣間見ることができた気がしたんですよね~。
それが、『各々が己の自己表現のみ万歳!』という感じじゃなくて
『おうおう、次はお前語れ~!』と暖かい雰囲気で。
(映画のおじいちゃん妖精たちは演奏し歌ってますおんぷ

彼らの元になったディーナ・シーは、
丘陵や地下に逃れた妖精族のこと。
アイルランドに4番目にやって来た種族
トゥアハ・デ・ダナーン族が5番目にやって来た種族
ミレー族との戦いに敗れ、
『常若の国』と呼ばれる地下の国、
ティル・ナ・ノーグへと逃れて行って、その姿を
今日みられるような妖精へと姿を変えた、と言われていますよね。

それから冒険の途中で出会う、歴史家妖精・シャナキー。
こちらもおじいちゃん妖精ですが、ボケっぷりがナイス・味!!*

シャナキー(seanchai)とは、アイルランド・ゲール語で
『伝統的な語り手』という意味なんだとか。
イギリスでは語り手のことをバード(bard)と呼びます。
バードは、ドルイドの階層、
記録係、吟遊詩人のバルドから来てますけど
アイルランドゲール語ではそれをシャナキーというらしいです。

歴史家妖精・シャナキーのポイントは
『髪の毛』なんですけど、これは元になる神話や民話があるのかな?
ネットでは調べきれなかったので、毎度ながら
これは地道にアイルランド神話と民話を読んで行くしかないのか・・・
とちょっと途方に暮れています・・・。
でも・・・知りたいわお!!∑!!
まずは購入した渡辺さんの御本から、地道にコツコツ・・・。
(by 津村希)


という訳で、またしても盛大に長くなっちゃいましたがはぁ??汗
『song of the sea』、本当にお子様から大人まで
アニメ好きな人もそうでない人も
みんなで楽しめる映画でしたので
何かの折に観られるチャンスがありましたら
ぜひぜひご覧くださいませ~ニコニコ