こんにちは、備え・防災の専門家を志す、今はただのパパリーマン高荷です。

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※当方、原発関係者や放射線の専門家ではなく、一般のサラリーマンであり、当サイトの情報は専門性を担保するものではございません。また原発事故の状況について、危険をあおる行為も、安全を強調する行為も、いずれをも行う趣旨ではございません。情報の活用につきましては、各自の責任と判断でお願いいたします。

※一部、いま、まさに原発内部で、必死の沈静化活動を行っている、技術者や作業員の方にとって、好ましくない表現が含まれております。当方、これら方々には心からの敬意を表しており、その活動を否定する意志はいささかもございません。「一般の方」に対する情報として特化していることをご理解いくださいませ。



福島第一原発の放射能漏れ事故、最悪の事態をギリギリのところで回避している状況に変化はなく、予断を許さない状態が続いています。

ところが報道では、放射能?格納容器?シーベルト?水素爆発?意味の分からない単語が飛び交って不安をあおり、「平時の400倍の放射線です、でも健康に影響はありません」と、ヤバイのか安全なのかが判断できない状況が、私たちを混乱させます。

「水蒸気爆発?ヒロシマやナガサキみたいになるのか?」
「レントゲン1回分とか言うけど、100倍ってなんかヤバイよね?」
「政治家が海外に脱出し始めたらしい」
「うがい薬を飲めば大丈夫って聞いた」

原発に関する様々な話題が飛び交い、ニュースを見てもよく分からない単語ばかり、もう何を信じればいいのか分かりません。この状況、私自身、心底恐ろしく感じています。


もちろん、ほんのわずかなリスクでも排除したいのならば、今すぐに海外、それが無理でも西日本に避難することが理想ですが、現実、なかなかそうはいきません。

自身、0歳と4歳の子供を抱えたパパリーマンですが、昼食は味より安さ、晩酌は第三のビール、外食は100円寿司、こんな経済状況の上、給料という鎖を首に巻かれた状態で、とてもではないですが関東の自宅を離れることはできません。

自然、原発の状況が悪化したとしても、「避難」ではなく「屋内待避」を選択することになりますが、そもそも、どのタイミングでこの決断をすればよいのか、本当に大丈夫なのか、迷いが生じることは確実です。

この記事では、私同様このような思いを抱く多くの方々に対し、「科学的な正しさよりも、目の前の分かりやすさ」「評論ではなく、今何をすればいいのか」を重視し、多少の不整合には目をつぶり、今私たちが知っておくべき、原発事故に対する知識をまとめました。



■「放射線」を浴びるとどうなる?なぜ「放射線」は危ない?
ニュースでは「放射線量値は高いが、健康に影響はない」というフレーズがおなじみになりつつあります。ところで、健康に影響はないと言いますが、「放射線」を浴びると、そもそもどんな影響が出るのでしょうか?

人体への影響は、思い切りよくまとめると次の2つです。
1)近いうちに死ぬ
2)将来ガンになる


まだパニックにはならないでください、上記には条件があります。

1)近いうちに死ぬ
 →放射線をたくさん浴びれば死ぬが、少しなら何ら問題がない。

2)将来ガンになる
 →放射線を浴びれば浴びただけ、将来ガンになる可能性が高くなる。


これを専門用語では「1)確定的影響」「2)確率的影響」と言うのですが、この辺は気にしなくてOKです。いずれにしても重要なのは、浴びた放射線の「量」がどのくらいかという点です。この点は後ほど詳しく説明します。


一方、放射線の危険性としては、人間の五感で感じることができない、という点が上げられます。放射線は、目に見えず、臭いもなく、音もせず、熱くもないため、人はその存在に気づけません。極端な話、目の前に致死量の放射線が飛び交っていたとしても、死ぬまで放射線を浴びたことに気づきません。

放射線は、特別な検出器を使わなければ、その場所の強さを計測することができません。これが危ない点で、前述の通り、危機が目前に迫っていても、検出器がなければ気がつくことができないのです。

そのため、発表される「放射線量値」には常に気を配り、その値が一定を超えるようであれば、避難するか屋内に閉じこもるかを、決断しなくてはなりません。


【少しだけ専門的に(読み飛ばしてOK)】
なぜ「放射線」を浴びると、上記のような悲惨な影響が出るのでしょうか。それは、人体が放射線を浴びると、細胞の中の遺伝子DNAが破壊され、その細胞が死ぬか、分裂能力が失われるからです。

また人体の各器官は、それぞれに放射線の影響を受けやすい部分と、そうでない部分があり、たとえば造血組織や生殖腺など細胞分裂の頻度が盛んな部位は影響を受けやすく、筋肉や骨、神経組織など細胞分裂が盛んでない部位は影響を受けづらいです。

そのため、細胞分裂が可能な部分に大量の放射線を浴びたり、また細胞分裂が盛んな時期、つまり胎児→赤ちゃん→子どもの順に、放射線を浴びた場合の影響が大きく出てしまいます。そのため、妊婦さんはとくに放射線に対して慎重になる必要があります。



■「放射線」から身を守るために、何を気をつければいいのか。
ニュースではよく、「外出の際にはマスクを」「窓を閉めて換気扇を止めた屋内に閉じこもってください」などの発言がなされます。これは何のために行うのでしょうか?

放射線を浴びるとどうなるかは、前項で述べました。ただ放射線は自然界にも存在しますので、浴びる量が微量であれば、特に気にする必要はありません。原発由来の放射線について、浴びる量をできるだけ小さくすることで、リスクを下げます。

放射線は、「放射能(放射線を出す力のこと)」を持つ、「放射性物質」から放出されます。つまり、放射線は単体では存在できず、必ず「放射性物質」から放出されます(放射性物質が空母、放射線が戦闘機)。

ところが「放射線」の飛距離には限界があるため、「放射性物質」を体の近くに寄せ付けなければ、「放射線」を浴びることはなくなります。この際にポイントとなるのは次の2つです。

1)体外被曝を避ける
2)体内被曝を避ける(超重要)



1)体外被曝を避ける
原発から放出された「放射性物質」は、風に乗って遠くまで飛んでいきます。この空気中に含まれる「放射性物質」や、肌や服に付着した「放射性物質」から放出される「放射線」を浴びると、体外被曝となります。

体外被曝は、体の至近にある「放射性物質」を取り払えば避けられますので、シャワー浴びて洗い流したり、家に入る前に服を叩いたりすることで、ある程度の回避ができます(花粉対策と似ています)。

ただ、本格的に「放射性物質」を除去(除洗というやつです)するのには、結構な手間がかかりますので、できれば原発の近くや、風下に当たる地域では外出を最小限にして、そもそも体や服に「放射性物質」が付着するのを避けることが大切です。


2)体内被曝を避ける(超重要)
体外被曝は、「放射性物質」を取り除いてしまえば防ぐことが可能ですが、やっかいであり絶対に避けなければならないのが、この「体内被曝」です。

体内被曝は、「放射性物質」が体の中に入り込み、体の中から放射線を放出して、人体を攻撃する状態です。体内に入った「放射性物質」は、一定期間後に自然に排出されるものもありますが、生涯体の中から出ていかないものもあります。

体外被曝は、「放射性物質」を取り除けば回避できますが、「体内被曝」は何しろ体の中から放射線を浴びることになりますので、回避することができません。そのため、体内被曝は絶対に避ける必要があります。


体内被曝を引き起こす「放射性物質」は、3つのルートで体内に侵入します。
-気体や粉じんとして、呼吸を通じて肺から入る
-水や食物、または指をなめたりして口から入る
-傷口などから入る


とはいえ、自然界にも「放射性物質」は存在しますので、日常生活の中でも一定量の「放射性物質」が体内に取り込まれ、日頃から体内被曝を起こしていることも事実です。

ただ、自然界に存在する「放射性物質」と異なり、原発からまき散らされた「放射性物質」の中には、きわめて破壊力の大きい「放射線」を放出するもの(代表的な例としてはプルトニウムなど)があり、それを体内に入れないことが重要になります。



■「放射性物質」には種類がある(前半)。
「放射性物質」にはたくさんの種類がありますが、原発からまき散らされるものは限られており、報道などでよく聞く名前としては「セシウム」「ヨウ素」「プルトニウム」などが存在します。

放射性物質は、放出する「放射線の種類」と、「寿命(半減期という)」がそれぞれ異なります。「破壊力の強い放射線」を放出し、かつ「寿命が長い」放射性物質には、特に注意を払う必要があり、特にこれを体内に取り入れること、「体内被曝」を避けることが重要です。


【少しだけ専門的に(読み飛ばしてOK)】
放射性物質の寿命として「半減期」という言葉が、報道でも時折聞くことがあります。半減期は、放射性物質を構成する放射性原子の数が半分になる時間のことで、「放射能」の強さが半分になる時間を表します。

「原子」には、放射線を放出する原子としない原子があり、放出する原子で構成された物質が「放射性物質」です。放射線を放出する放射性原子は、放射線を出し尽くすと寿命を迎え、放射線を出さない原子になります。

この、放射線を放出する放射性原子の数が半分になる時間が半減期であり、初回の半減期で強さは半分に、2回目で4分の1になり、10回半減期を迎えると放射能の強さは1000分の1となり、だいぶ安全になります。



■「放射線」には種類がある。
報道ではあまり語られませんが、放射線にはいくつか種類があります。ここでは今回の事故において、知っておくべきものだけを取り上げます。

1)γ線(ガンマ線)
2)β線(ベータ線)
3)α線(アルファ線)
4)中性子線(ちゅうせいし線)


この4種類の放射線は、「強さ(人体への影響力)」と「透過力(物質を突き抜ける力)」の違いで特徴が分かれています(専門的には違うのですが、ここでは気にしなくてOKです)。

1)γ線(ガンマ線) 破壊力「小」、透過力「大」
2)β線(ベータ線) 破壊力「小」、透過力「中」
3)α線(アルファ線) 破壊力「極大」、透過力「低」
4)中性子線(ちゅうせいし線) 破壊力「大」、透過力「大」


破壊力が大きいものは、浴びる量が少量であっても人体に深刻な影響を与えます。一方透過力は、物質を通り抜ける力、人間の視点で言えば「防御のしにくさ」であり、このバランスを見て、放射線に対する対応を考えます。


1)γ線(ガンマ線) 破壊力「」、透過力「
あらゆる物質を通り抜け、これを完全に防ぐには「厚さ10センチの鉛の板」を用意しなければなりません。ただ破壊力は最も弱いため、大量に浴びなければ深刻な問題にはなりません。

2)β線(ベータ線) 破壊力「」、透過力「
紙では駄目ですが、プラスチックの板レベルで防ぐことが可能です。ただし、防いだ瞬間にガンマ線を放出するため、対策としてはガンマ線とひとくくりに考えます。

3)α線(アルファ線) 破壊力「極大」、透過力「
ガンマ線の20倍の破壊力を持つ、最強の放射線の一つです。ただ、透過力がきわめて弱く、紙1枚で防ぐことができます。そのため、体外被曝であれば素早く洗い流すことで、被害を最小にできます。

しかし、アルファ線を放出する放射性物質を体内に入れてしまい、体内被曝を起こした場合、きわめて破壊力の強い放射線が、何の遮蔽物もなく人体を攻撃しますので、人体に強い悪影響をもたらします。

4)中性子線(ちゅうせいし線) 破壊力「」、透過力「
破壊力も透過力も高い恐ろしい放射線ですが、原子炉の内部(核分裂の最中)でなければ発生しないので、原発の至近で作業をするのでない限り、私たちが直接心配する必要はありません。



■「放射性物質」には種類がある(後半)。
原発では、「核燃料」を燃やして(正しくは核分裂させて)熱を得て、その熱でお湯を沸かして水蒸気を作り、その水蒸気で発電機を回しています。

「核燃料」は、新品の状態では「ウラン238」と「ウラン235」という物質だけで構成されていますが、使用するに従い成分が変わってきます。キャンプファイヤーをする際、当初は「木」だけだったものが、次第に「炭」と「灰」の量が増えていくのと似ています(厳密には違うのですが)。

「核燃料」を数年間燃やし続けると、当初の「ウラン238」と「ウラン235」に加えて、次のような生成物(炭や灰にあたるもの)が作り出されます。

-アルファ線(とモノによりガンマ線)を出す、特に危険な原子
 ・プルトニウム239 (アルファ線を出し、寿命(半減期)は2万4千年)
 ・アメリシウム241 (アルファ線を出し、寿命(半減期)は432年)
 ・キュリウム244 (アルファ線を出し、を出し、寿命(半減期)は18年)

-ベータ線とガンマ線を出す原子
 ・ヨウ素131 (ベータ線とガンマ線を出し、寿命(半減期)は8日)
 ・ストロンチウム90 (ベータ線とガンマ線を出し、寿命(半減期)は29年)
 ・セシウム137 (ベータ線とガンマ線を出し、寿命(半減期)は31年)
 ・ネプツニウム239 (ベータ線とガンマ線を出し、寿命(半減期)は2日)
 ※「寿命(半減期)」は、あくまでも放射能の強さが半分になるまでの期間です。半減期を10回迎えれば放射能の強さが千分の1となり、かなり小さくなります。

アルファ線を出す原子が体内に入ると、破壊力の高い放射線で体が攻撃されるためきわめて危険です。また原子により、体内に取り込まれた際に沈着する部位(臓器・器官)が異なります。

たとえばヨウ素131は甲状腺に集まり甲状腺ガンを引き起こす原因となり、セシウム137は筋肉に蓄積して肉体全体を攻撃します。アルファ線を出す原子は特に危険ですが、その他の原子も体の特定部分を集中攻撃することがあるため、いずれの放射性物質も、体内に入れてはいけません。



■「放射線」をどのくらい浴びると、どうなるのか?
「放射線」を放出する「放射性物質」は、原発だけで作られるものではなく、天然にも存在します。ラジウム温泉などはわかりやすい例です。従って、一定レベルの放射線を浴びることは、何の問題もありません。

1年間に自然環境から浴びる放射線の世界平均の量は、
 1.7[mSv] (1.74ミリシーベルト)
 =1,740[μSv] (1,740マイクロシーベルト)
 =1,740,000[nSv] (174万ナノシーベルト)


このようになります。これは1年間に浴びる放射線の量の総計ですので、報道でよく使われる1時間当たりの値に直すと、
 0.000198[mSv/h] (毎時0.000198ミリシーベルト)
 =0.198[μSv/h] (毎時0.198マイクロシーベルト)
 =198[nAv/h] (毎時198ナノシーベルト)

となります。
※ちなみに、[Sv](シーベルト)=[Gr](グレイ)と変換してOKです。

原発事故が起こったとしても、全国に設置されている放射線検出器の数字が、上記の数字より小さければ、何ら気にする必要は無いと言うことです。


【少しだけ専門的に(読み飛ばしてOK)】
上記で「自然環境」としているのは、大地と空気です。実際には食物などを通しても放射線を浴びており(体内被曝)、自然から受ける放射線の量は、世界平均で2.4ミリシーベルト程度とされています。

ただし、当然ながら食物由来の自然放射線は、全国に設置されている放射線量値には反映されない値ですので、今回の計算では食物由来の値を省いております。


冒頭で、放射線を浴びた場合の影響は2つと言いました。

1)近いうちに死ぬ
 →放射線をたくさん浴びれば死ぬが、少しならすぐ回復する。

2)将来ガンになる
 →放射線を浴びれば浴びるほど、ガンになる可能性が高くなる。


(1)については、ある程度明確に、「このくらい浴びると、このくらいヤバイ」という数字が出ています。

250,000[μSv]…… 白血球の減少
500,000[μSv]…… リンパ球の減少
1,000,000[μSv]…… 急性放射線障害(吐き気、嘔吐、水晶体混濁)
2,000,000[μSv]…… 急性放射線障害(出血・脱毛)、5%の人が死亡
3,000,000[μSv]…… 半数の人が死亡
7,000,000[μSv]…… 99%の人が死亡

※[μSv](マイクロシーベルト)をミリにする場合は、1000分の1にする。

今回の事故では、3月15日(火)のピーク時に、原発の正門前での空間放射線量値が下記に跳ね上がりました。
 400[mSv/h](毎時400ミリシーベルト)
 =400,000[μSv/h](毎時40万マイクロシーベルト)
 =400,000,000[nSv/h](毎時4億ナノシーベルト)


このタイミングで、原発の正門前に1時間15分滞在すると、浴びる放射線の量が500,000[μSv]に達し、リンパ球の減少などの影響が出始めることになります。また5時間滞在すれば、急性放射線障害で5%の人が死ぬ可能性が出始めます。

ただ実際には、400ミリシーベルトの値になったのは短時間だったため、上記のようなことにはなりません。また距離が離れれば放射線量値は急激に低下するため、避難するか屋内待避をしていればこの問題は生じません。

この(1)については、浴びてはならない値(しきち値と言います)が明らかですので、基準も明確です。ただ実際には、このしきい値に到達するほどの放射線を浴びることは、少なくとも原発関係者でなくてはあり得ませんので、私たち一般市民にとっては関係は薄いといえます。

また、原発から西に20キロ離れた地点の空間放射線量値は、3月16日(水)13時28分の数字で、下記の通りです。
 0.0122[mSv/h](毎時0.0122ミリシーベルト)
 =12.2[μSv/h](毎時12.2マイクロシーベルト)
 =12,200[nSv/h](毎時12,200ナノシーベルト)


5%の人が死亡する、急性放射線障害の症状が出るためには、この場所(屋外)に、16万時間=18年間滞在する必要があります。もちろん屋内にいれば放射線の値はきわめて低くなりますので、さらに期間は長くなりますし、放射線の値も時間とともに低くなりますので、問題はありません。

と、原発の内部で作業をする方々で無い限り、(1)の影響は、基本的には無視して考えてよいかと思います。問題は、(2)の影響です。


2)将来ガンになる
 →放射線を浴びれば浴びただけ、将来ガンになる可能性が高くなる。


将来ガンになる可能性は、どのくらいの放射線を浴びると、どのくらい高くなるのでしょうか?実はこれはよく分かっていないのが現状です。基本的には、浴びた量に比例して可能性が高まるのですが、ではどのくらい?という数字がいまだ明確にはなっていません。

0.001%の発ガンリスク上昇をも回避したいのであれば、即刻海外へ待避するべきですが、実際にはそういうことはできませんし、この程度のリスク上昇であれば許容できる値です。一方、東大病院放射線治療チーム(http://twitter.com/#!/team_nakagawa)の見解では、100ミリシーベルトの蓄積で、発ガンリスクが0.5%程度としています。

いずれにしても将来の発ガンリスクを低く保つ為には、「できるだけ浴びる放射線の量を減らす」としか言いようが無く、その基準をどこに持って行くかは、様々な説を頼りに、自分自身で判断をするしかありません。



■どのくらいの「放射線」を浴びて良いか。
大変難しい、というよりは答えのない問題に等しいです。そこで、いくつかの切り口で考えます。

-妊婦さん以外の基準値について
1)急性放射線障害にならなければいい
最悪の事態にならなければ、将来のリスクは許容するという考え方です。(※おそらく政府発表の「すぐに健康に害はない」は、この辺りの数字を基準にしているのではないかと思います。ものすごく勝手な想像です。)

急性放射線障害(吐き気、嘔吐、水晶体混濁)の初期症状がでるしきい値は、下記の通りです。
 1,000[mSv](千ミリシーベルト)
 =1,000,000[μSv](100万マイクロシーベルト)
 =1,000,000,000[nSv](10億ナノシーベルト)


浴びた放射線の量が上記に達すると、症状が出始めます。1分で激烈に浴びても、100年かけて緩やかにかけても、結果としては同じです。ここでは仮に、「1週間その地点にとどまると、1,000ミリシーベルトに達する」値を基準に、毎時へ直します。
 5.95[mSv/h](毎時5.95ミリシーベルト)
 =5,950[μSv/h](毎時5,950マイクロシーベルト)
 =5,950,000[nSv/h](毎時5,950,000ナノシーベルト)


屋外での値が上記に達した場合、その場所で1週間を過ごすと、急性放射線障害の症状が出始める可能性があります。そのため自分が今いる場所の放射線量値がこの値を超える場合、速やかに避難の必要があります。


2)緩い基準値がクリアできればいい
健康に影響が全くないギリギリの値までは許容する考え方です。前述の東大病院放射線治療チームは、200ミリシーベルト以下では医学的に放射線が検出できず、また今回の福島第一原発の事故を受けて、国家公務員の被曝限度量が見直されましたが、その値は250ミリシーベルトです。

ただ、250ミリ以シーベルト以上の被曝は、白血球の減少という症状が出始めますので、200ミリシーベルトを基準値と考えれば、急性放射線障害(吐き気、嘔吐、水晶体混濁)の初期症状がでるしきい値は、下記の通りです。
 200[mSv](200ミリシーベルト)
 =200,000[μSv](20万マイクロシーベルト)
 =200,000,000[nSv](2億ナノシーベルト)


上記の値は前述の通り、、浴びた放射線の累計値です。1週間滞在するとこの基準を超える、と仮定して毎時で計算し直しますと、
 1.19[mSv/h](毎時1.19ミリシーベルト)
 =1,190[μSv/h](毎時1,190,000マイクロシーベルト)
 =1,190,000[nSv/h](毎時1,190ナノシーベルト)


屋外での値が上記に達し、そこで1週間を過ごした場合、何らかの影響が出始める可能性があります。


3)リスクゼロとは言わないが、できるだけ影響は小さく
前項同様、何かしらの基準値を元に数字を定めます。今回参考にしたのは、ICRP(国際放射線防護委員会)が定めている、放射線を取り扱う人が、1年間で浴びて良いとされている下記の数字です。
※これを超えると影響が出る、とかではなく、あくまでも管理上の重要な値として設定されているものです。
 50[mSv](50ミリシーベルト)
 =50,000[μSv](5万マイクロシーベルト)
 =50,000,000[nSv](5千万ナノシーベルト)


この基準は、1年間で浴びて良い放射線の合計値ですので、これを365日で分割して毎時に直しますと、
 0.005708[mSv/h](毎時0.005708ミリシーベルト)
 =5.708[μSv/h](毎時5.708マイクロシーベルト)
 =5708[nSv/h](毎時5708ナノシーベルト)


このようになります。ただしこの数字は、健康上に害のある数字ではなく、あくまでも管理上の数字ですので、かなり余裕を持った数字ではあります。


-妊婦さんの基準値について
4)すこし余裕を持って考える
放射線は、細胞分裂が活発な部位ほど、強い影響を与えることを冒頭で述べました。そのため、妊婦さん(胎児)は、放射線を浴びることを特に回避する必要があります。

ここで用いる基準値も、さきほど同様、東大病院放射線治療チームが出典です。チームによれば、妊娠期間中に浴びる放射線の量が100ミリシーベルトまでの値であれば、胎児には影響が出ないとしています。
 100[mSv](100ミリシーベルト)
 =100,000[μSv](10万マイクロシーベルト)
 =1,000,000,000[nSv](1億ナノシーベルト)


これを、妊娠期間の300日で割って、毎時の数字に直すと、
 0.0139[mSv/h](毎時0.0139ミリシーベルト)
 =13.9[μSv/h](毎時13.9マイクロシーベルト)
 =13,889[nSv/h](毎時13,889ナノシーベルト)


妊娠期間中、この値以上の放射線を浴び続けると、胎児に影響が出る可能性があります。


5)限りなくリスクを小さくする
前述では、胎児に影響が出ないレベルの放射線を基準にしました。しかs、妊婦さんにとって「放射線を浴びる」という行為は恐ろしいもので、仮に何も起こらなかったとしても、放射線を浴びたことによる不安感やストレスは大きなものになります。

ICRP(国際放射線防護委員会)では、妊婦さんが妊娠から出産までに浴びてよい放射線の値を、1ミリシーベルトと設定しており、これを基準にします。
 1[mSv](1ミリシーベルト)
 =1,000[μSv](1千マイクロシーベルト)
 =1,000,000[nSv](100万ナノシーベルト)

これまでの値と比較してかなり小さな値ですので、毎時に直す際には、自然界から浴びる放射線の値を加算して、目安がつかみやすいようにしますと
 0.000337[mSv/h](毎時0.000337ミリシーベルト)
 =0.337[μSv/h](毎時0.337マイクロシーベルト)
 =337[nSv/h](毎時337ナノシーベルト)


このくらいの値になります。リスクをできるだけ小さくするには、今いる場所の放射線量値がこのくらいの値になってきた場合、最低でも屋内待避をする必要があります。



■浴びてよい放射線の量をまとめると・・・
-男性と中・高齢の女性の基準値
1)急性放射線障害にならなければいい
 =5,950,000[nSv/h](毎時5,950,000ナノシーベルト)
 ※1週間この値の放射線を浴び続けると、急性放射線障害の症状がでる。
2)緩い基準値がクリアできればいい
 =1,190,000[nSv/h](毎時1,190,000ナノシーベルト)
 ※1週間この値の放射線を浴び続けると、白血球の減少などの影響が出始める。
3)リスクゼロとは言わないが、できるだけ影響は小さく
 =5,708[nSv/h](毎時5,708ナノシーベルト)
 ※1年間この値の放射線を浴び続けると、原発関係者が1年で浴びて良い値と等しくなる。

-女性(出産年齢)と子どもたちの基準値
4)すこし余裕を持って考える
 =13,889[nSv/h](毎時13,889ナノシーベルト)
 ※妊娠期間中この値の放射線を浴び続けると、胎児に影響が出る可能性がある。
5)限りなくリスクを小さくする
 =337[nSv/h](毎時337ナノシーベルト)
 ※妊娠期間中この値の放射線を浴び続けると、自然放射線と、国際機関が定める基準値の合計に等しくなる。

※上記を[μSv/h](マイクロシーベルト)に直す場合は値を1,000分の1に、[mSv/h](ミリシーベルト)に直す場合は、さらに1,000分の1にしてください。また[Sv](シーベルト)と[Gy](グレイ)は同じと考えて差し支えありません。


妊娠可能年齢の女性は、(4)か(5)、その他の女性と男性は、(1)~(3)の値の、いずれかを自分自身の基準値として認識しておくとよいです。

具体的な判断基準の例としては、女性や子供の場合は、今いる場所の放射線量値が(5)毎時337ナノシーベルトを超える場合屋内に退避し、(4)毎時13,889ナノシーベルト(約13マイクロシーベルト)を超えそうであれば避難する。

男性の場合は、(3)毎時5,708ナノシーベルトを超える場合屋内に退避して、毎時1,190,000ナノシーベルト(約1,200マイクロシーベルト)を越えそうであれば避難する。などが考えられます。


もっとも上記は、医学的な「被爆の量」としては問題がないのかもしれませんが、本来私たち一般市民は、自然放射線を除けば、医療行為以外からの放射線を浴びることはありません。

そういう意味では、原発事故によって強制的に浴びせられる放射線の量は、限りなくゼロにすべきであり、今いる場所の放射線量値が、上記で言えば(5)毎時337ナノシーベルト=毎時0.337マイクロシーベルトを超えた場合、屋内に退避することが望ましいのかもしれません。

ちなみに私自身は、この考えに基づいて、放射線量値が毎時337ナノシーベルトを超える場合、家中の雨戸を締め切って家族で引きこもっています。なお、空間放射線量値については、「全国の放射線量値マップ」で詳しく紹介しています。


【参考資料】
 ・見て学ぶ放射線(赤羽 利昭)
 ・放射線入門(石川 友清)
 ・初級放射線 -第2種放射線私見受験様テキスト(飯田 博美)
 ・その他webの報道資料全般


以上