東北地方太平洋沖地震で被害を受けている福島第1・第2原発の放射能漏れ事故、状況は一進一退を繰り返し、絶望も、楽観も、いずれもできない状態です。一般市民である私たちが、いま、なにをすればいいのか、まとめます。

【関連】福島第一原発と放射線、専門的な話以外のQ&A集
【関連】福島第1・第2原発、報道の読み解き方、事実の見極め方。
【関連】放射線を、どのくらい浴びるとどうなって、そしていつ避難・屋内待避すればいいのか?


※当方、原発関係者や放射線の専門家ではなく、一般のサラリーマンであり、当サイトの情報は専門性を担保するものではございません。また原発事故の状況について、危険をあおる行為も、安全を強調する行為も、いずれをも行う趣旨ではございません。情報の活用につきましては、各自の責任と判断でお願いいたします。

※一部、いま、まさに原発内部で、必死の沈静化活動を行っている、技術者や作業員の方にとって、好ましくない表現が含まれております。当方、これら方々には心からの敬意を表しており、その活動を否定する意志はいささかもございません。「一般の方」に対する情報として特化していることをご理解いくださいませ。



※3月14日(月)14:50-----
福島第一原発の3号機で水素爆発(致命的な水蒸気爆発ではない方)、(恐らくは)物理的なけが人は出るも、政府発表では大規模な放射性物質の拡散はないと。確かに、女川(宮城)、柏崎(新潟)、神奈川の放射線量値は昨日と変化がありませんが、原発付近のモニタリングポストが軒並み機能停止で、一番知りたい箇所の線量値は不明。

が、昨日までのピーク値(原発境界で1,500マイクロシーベルト/h)も、政府は胃のレントゲン写真数回分だから問題ないと報道していますが、それを24時間浴び続けた場合のリスクは無視できる物ではありません。特に妊娠されている方や赤ちゃんはなおさらです。

原発からの距離が開けば線量値は低下しますが、120キロ離れた女川原発ですら、直近の値は0.68マイクロシーベルト/h。原発から女川原発までの半径100キロ圏内に、これ以上の濃度の放射性物質が拡散しているのだとすれば、確かに汚染のレベルは「低濃度(政府が言うところの)」ですが、それを常に浴び続ける住民に、「大丈夫です」と言い続けるのは問題があります。

冷却作業もまだよい話が無く、3号機の水素爆発で炉心を遮る壁が1枚無くなったこともあり、半径100キロ圏内においては、屋内待避が必須では無いかと考えます。原発の南側、東京や神奈川では現在の所通常と異なる放射線値は観測されていませんが、事態の急変に備え、常に情報をチェックできるようにしておくことは変わらず大切です。


※3月14日(月)08:10-----
深夜に圧力を下げるため、気体を放出させる作業が行われた様で、その影響を受けて原発周辺の放射線量値が上昇していますが、これまで以上の深刻な状態にはなっていないようです。福島大に原発の側では、冷却がうまく行き始めているとの報もあり、こちらは紛れもなく良い知らせ。

第一原発側はいまだ詳細不明ですが、水蒸気爆発、圧力容器の破損、ともに報じられておらず、また女川、柏崎、東京、神奈川のモニタリングポストの放射線量値を確認したところ、女川の値が昨日同様高いものの、いずれの地点も昨日と比較して極端な数字は表しておらず、さしあたり、私自身もこれから出勤いたします。


★3月14日(月)以降、通勤や通学で外出する際の注意
■関東・甲信越より北側の地域
※やや大げさな部分もありますので、実際の判断は個人に委ねられます。慎重に慎重を重ねてのオススメです。ちなみに筆者は実施します。

原発の状況については、現在まだ決定的に良い話も、悪い話も、出ていません。何事もなければ万事問題ありませんが、事態が急変して最悪の事態(放射性物質が大規模に拡散して、広範囲が放射能汚染されるという事態)へ進む可能性もまだゼロにはなっていません。

原発災害においては、放射性物質を体内に取り込まず、体内被曝を避けることが最も重要です。そのため、
 ・肌の露出は最低限にする
 ・屋外ではマスクを付ける
 ・屋外での飲食は避ける。室内なら大丈夫です
 ・室内に入ったら手洗いをよくする
  →帰宅時にはできるだけ早くシャワーを浴びる。衣類はすぐに洗濯機へ入れる。

完全に原発が安全になるまで、できれば上記を意識できると、万が一の場合の被害を最小限に抑えることができます。特に幼児や胎児は放射線に対する影響を強く受けるため、子供や妊婦の方は意識してください。

■東海・北陸より西側の地域
原発から放出された放射性物質は、風に乗って拡散します。日本の場合、基本的に風向きは西から東ですので、最悪の事態となった場合でも、西日本に影響が出るのには若干時間がかかります。

西日本にお住まいの方は、こまめに情報を得られる手段だけ用意して、事態の推移をチェックできれば当面は問題ありません。謝ったデマや流言を流さないことが、むしろ重要です。



★よく寄せられる質問
Q.原発で爆発事故が起こると、ヒロシマやナガサキみたいになるの?
なりません。原子爆弾の爆発は、ウランやプルトニウムの「核分裂(制御しない激しい核分裂)」という原子核反応から、巨大な破壊力を取り出していますが、原発事故の爆発は、核燃料が発する熱(普段はこれで発電している)による、水蒸気爆発などが原因です。

そのため、原子力発電所の建物自体は、その爆発により吹き飛ぶかもしれませんが、爆弾ではないので、その周囲もまとめて破壊される、ということはあり得ません。問題なのは、多くの場合原発は、核兵器よりも多くの放射性廃棄物(いわゆる死の灰)をため込んでおり、爆発でこれがまき散らされることで、広い周囲が放射能汚染されることです。


Q.千倍の放射線が観測されたって言うけど、もうおしまい?
11日のピーク時で1,015[μSv](マイクロシーベルト)、12日のピークで1,204[μSv]の放射線量が、原発の敷地境界で観測されました。千倍と言われると凄そうですが、この値は、福島第一原発の敷地ぎわに10分間立っていた場合に、健康診断の胸のレントゲン写真1回分程度の放射線を被曝する値です。

また胃のX線写真で受ける線量は4,000[μSv]、CTスキャン1回分は、7,000[μSv]ですので、これらの値と比較すれば不安になりすぎる値ではありません。また、急性放射線障害(すぐ死ぬわけではないが、吐き気などをもよおす)が生じるためには、瞬間的に1,000,000[μSv]の放射線が必要で、この値は、現在報道されている値のさらに千倍です。

※ただし、だからといって問題がないわけではありません。詳しくは後述の「■放射線の強さについて」をご覧ください。


Q.なんだかんだいって、もう大丈夫でしょ?
このまま収束すれば、国の原子力政策には大ダメージでしたが、付近の環境汚染と、被曝者の数は最小限に留められ、いったん事態は解決に向かいます。が、このまま収束するかどうかが全く未知数です。

国と東京電力は必死の対応を行っておりますが、ここから事態が悪化して、最悪の状態に進まないとは言い切れません。最悪の事態となった場合、その影響範囲と深刻度合いは、過去の災害の比になりません。今後の報道には引き続き注意を払ってください。


Q.さっきから変なにおいがするんだけど、これって放射能?
ちがいます。放射線を人間が直接関知することはできません。臭いもなく、目に見えず、温度も感じません。唯一放射線を検知することができるのは、ガイガーカウンターをはじめとする各種の計測機器だけです。それ故に、報道や、後述の放射線量計測のモニタリングポストの値に、注目する必要があります。


★とりあえず、何をすればいいのか?
■距離別、何をすればいいのかリスト

-原発の周囲30キロ圏内
・避難指示に従い迅速かつ慎重な避難が必要です。

-原発の周囲120キロ圏内(福島県全域、および県境に接する近隣)
・できるだけ外出は避け、窓などを閉め切った屋内で、すぐに避難が行えるように身の回りのものをまとめておきます。報道に注意を払ってください。特に赤ちゃんと妊婦の方は、放射線に対する影響を強く受けやすいので注意してください。

※リスクを最小限にすることを前提に、上記を記述しております。外出したからと言って、目に見える健康被害が出ることは現状ありません(3/18現在)。この辺りの考え方は、下記を参考にしてください。
【最新】福島第1・第2原発、報道の読み解き方、事実の見極め方。
【最新】放射線を、どのくらい浴びるとどうなって、そしていつ避難・屋内待避すればいいのか?


-福島県より北の地域
・最悪の事態が生じて大規模な放射線漏れが発生した場合、放射性物質は風に乗って原発から北側を汚染します。(日本の平均的な気象条件の場合)。他の地域よりも迅速な避難が求められますので、外出する際には情報源を絶やさず、また自宅では戸締まりをして、身の回りのものをまとめておいてください。

-関東・甲信越
・状況としては福島県より北の地域と同じで、風向き次第ではすぐに直接的な汚染エリアとなります。原発周辺の風向きに注意しながら、報道に注目してください。

関東より北側の地域に共通して
・夜寝る際は、戸締まりをすべてして、できれば換気扇やエアコンなど、外部からの空気の取り入れは止めてください。

・起床した際には、窓を開ける前にニュースをチェックして、放射能汚染の範囲が拡大していないことを確認してから、窓を開けるようにしてください。早朝の停電エリアに入っている場合は、ラジオ、携帯電話などで情報を収集してください。

・またできれば、風呂にきれいな水を張って置くと安心です。
(最悪の最悪の場合、水源が汚染されると、水道が利用できなくなる「可能性」があるため。これは本当に最悪の事態なので、おそらくないとは思いますが…。)

-東海より西の地域
・最悪の事態が生じたとしても、風向き的に、すぐに直接的な影響が出ることはありません。ニュースなどで情報を集めて、何よりも落ち着いた行動、情報の伝達を行ってください。


■避難する際に気をつけること
人体に悪影響を及ぼす放射線を放出する「放射性物質」は、体外に付着した際には洗う(除洗)ことができますが、体内に入ると容易には取り出せなくなります。体内に入った「放射性物質」は、放射線を体内から放出し、細胞のガン化などの影響を及ぼします。この「体内被曝」を避けることが、避難の際には重要です。

・避難をする際は、できる限り肌の露出を避けて、マスクをし(なければ濡れタオルを口に当て)てください。ただ、被災地では濡れタオルの調達も難しいかもしれません。その場合は布でも、シャツでも、何でもかまいません、とにかく外気を直接吸い込まないでください。

・原発周辺(具体的には避難区域内の)外気と触れていた食べ物、水は、摂取しないようにしてください。水道水、ペットボトルの水、包装されていた食べ物は大丈夫です。

・避難をする際には、風向きを確認しながら、原発の風上に避難してください。日本の場合季節風の影響で、基本的には南西へ逃げることになります。

・避難する際、雨や雪には絶対に直接触れないようにしてください。雨や雪には空気中の放射性物質が溶け込んでおり、濃度が高くなっており危険です。

【参考:原発周辺の風向き(一番右の海岸線、中央あたりが原発です)】
 http://weathernews.jp/observation/#//c=26/ddm=wind



★今、どのくらい「危ない」のか?
■放射能ってなに?さわったら死ぬの?
言葉が複雑ですので、簡潔に並べます。

「放射性物質」…原発の燃料(ウランやプルトニウムなど)や、その使用済み燃料(セシウム、ストロンチウムなど)といった、放射能をもつ物質のこと

「放射能」…放射線を放出するための能力のこと

「放射線」…X線やガンマ線、中性子線といった電磁波や粒子線の総称

わかりやすくするため、これを「ホタル」で表すと、「放射性物質=ホタル」、「放射能=おしりを光らせる力」、「放射線=光」となります。

現在原発から微量に漏れ出しているのが「放射性物質」そのものや、それを含む水蒸気であり、これ自体は人体に悪影響を及ぼしませんが、放射性物質から出てくる「放射線」が人体を傷つけます。


■放射線って、どうすれば感じられるの?
放射性物質からは、アルファ線、ベータ線、ガンマ線という3種類の放射線が放出されます。しかしやっかいなことに、放射線というのは、目に見えず、臭いもせず、熱さや冷たさも感じないため、たとえ致死量の放射線を浴びたとしても、人体は何も感じることがありません。

放射線を計測するには、ガイガーカウンターをはじめとする、各種の計測器具を使うしかありません。そのため、原子力災害時には、今自分が危険にさらされているのかどうかが分からず、状況判断に困るわけです。

人体が感じることのできない相手が対象ですので、「避難って言われてるけど、なんとなく大丈夫な気がする」というのは通用しません。避難指示が出る段階というのは、目の前に(見えませんが)脅威が迫っている可能性がありますので、大急ぎで対応してください。

この件、具体的には次の記事に最新情報をまとめています。
【最新】
福島第1・第2原発、報道の読み解き方、事実の見極め方。



★原発で事故が起こるとどうなるのか?
■原発って、そもそもなに?
当たり前ですが、原発は、発電所です。発電所で電気を作るのにはいろいろな方法がありますが、一番多いのが、何かの力で発電機を回す、という方法です。

自転車のライトは、人間がタイヤを回すことで、発電機が回って明るくなりますが、何を使って発電機を回すかによって、種類が分けられています。

 ・水で発電機を回せば水力発電
 ・風で回せば風力発電
 ・石油・石炭・LNGを使ってお湯を沸かし、その蒸気で回せば火力発電
 ・そして、核燃料(ウランやプルトニウム)によってお湯を沸かし、
  その蒸気で発電機を回すのが原子力発電です。


■原発って、何が問題なの?
火力発電所で、石油や石炭やLNGを燃やすと、二酸化炭素や窒素酸化物が排出されます(いわゆる、温室効果ガスというやつです)。一方原発の場合、核燃料を燃やしても(正しくは核分裂反応)二酸化炭素などは排出されないため、地球に優しいとされています。

が、問題なのは、二酸化炭素などは一切出さない代わりに、「高レベル放射性廃棄物(いわゆる死の灰)」と呼ばれる、燃え残り(正しくは放射性物質)を生成してしまい、これが環境や人体にとって有害であるという点です。

また、火力発電所では、火を消せば発電所は静かになりますが、原発の場合、一度でも火を付けた(ただしくは臨界状態になった)原発は、反応を停止させても、核分裂反応に伴って熱を出し続けてしまい、常に冷却をし続けなければ、自分の熱で燃料が溶けてしまう(=炉心溶融)ことも問題です。

そして現在、福島第1原発では、この反応を止めた核燃料を冷やし続けることができなくなっており、一部分が溶け始めている、という報道がなされています。


■今、いったい何が起こっているの?
前述の通り、原発は、たとえ点検中などで停止させていても、核燃料自体の発熱を止めることができないため、常に冷却をし続ける必要があります。

しかし今回の地震で、原発への送電が止まり(発電所なのに…)、非常用の発電機も動かず、この冷却をするための装置が停止してしまい、そのまま放置すると核燃料が熱で溶けてしまうため、現在様々な処置がなされています。

核燃料が格納されている原子炉は、たとえるならば巨大な圧力鍋のようなもので、超高圧状態を保つことで、水蒸気を高温に保持し、効率のよい発電を行っています。しかし冷却がされなければ、圧力が高まりすぎて炉心が爆発するか、溶けた燃料が炉心すら溶かし、外部の水と接触して水蒸気爆発を起こしてしまいます。

すると、外部に放射性廃棄物がまき散らされることになり、深刻な事態となりいます。そのため現在、燃料を冷却すること、炉心の圧力を下げること、これを目的に作業が行われています。


以上