たくさんのひとを支えられる代わりに破たんの道へ/行政と仕事をすること | 若者と社会をつなぐ支援NPO/ 育て上げネット理事長工藤啓のBlog

たくさんのひとを支えられる代わりに破たんの道へ/行政と仕事をすること

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一本の電話がありました。

福祉関連のNPO法人が行政から受託している案件があり、その支払いが
3か月後でキャッシュが持たないがどうしたらいいだろうか。

というものです。要するに、どこかお金を貸してくれる金融機関は
ないか、ということです。

行政を仕事をすると破たんの道へまっしぐらです。

もちろん、全部が全部ではないです。上場企業も中小企業も
「公共調達」によって行政の事業を受けています。利益も出して
います。というか、利益が出ないようなものはやりません。よほどの
理由がない限りにおいて。

NPOだから利益を行政予算に付けてはいけない、ということもありません。
例えば、経済産業省の事業は、一定のルールの中で販管費が付けられます。
民間企業同士のようにはいかないかもしれませんが、公共の予算なので
民間と同レベルまで求めるかどうかは議論の余地があります。

省庁や自治体によって利益(≒販売管理費)を出していいかどうかという
のもないと思います。その事業ごとに仕様が異なります。

ただ、私的な経験から「対人サービス」関連、例えば、介護や援助
若者支援など、についての事業は、その活動に直接かかった費用以外は
一切認めないというものが多い気がします。

一例として、相談をメインとした事業の場合、相談員の日給や
交通費の一部はできますが、受託組織が何らかの理由によって
相談員のいる場所に行くとか、電話をかけるとか、研修を行うといった
間接経費は認められません(販売管理費がつけられない)。

もちろん、予算は不必要分はすべて返還します。オーバー分はすべて
自腹です。それは当然ではありますが、どんなに努力をしても
収支は0またはマイナスにしかなりません。

たくさんのひとを支えられるのだから収支ゼロでいいじゃないかという
考え方もあります。微妙ではありますが、僕自身もそこはある部分
同意します。ゼロまでいけるなら、です。

収支ゼロは理念的には担保されています。

事業の委託費(実際に使った経費)は原則全額支払われます。
問題はその時間軸にあります。

僕がかかわった事業は「清算払い」が少なくありません。
簡単に言えば、後払いです。企業でも交通費は自腹で
あとで領収書を経理に出して返してもらう、あれと同じです。

しかしその清算のタイミングが12か月後だったりするのです。

仮に、1,200万円の事業を任されたとしましょう。

経費は毎月100万円です。人件費や事業費、雑費です。
毎月毎月、組織からはキャッシュが流出します。

現金がたくさんある組織にとっては問題ないかもしれませんが
現金が少ないと大変です。特にお給料は翌月に支払わないと
いけません。

清算は12か月後です。つまり、1,200万円は先に自腹になります。

それではさすがにといって数か月に一度清算される「概算払い」という
ものもあります。だいたい3か月に一回とか、4か月から半年に一回
これまで使った分を返してくれます。

これはこれでありがたいのですが、先に現金が必要なのは
変わりません。ちなみに、仕様書(契約書みたいなもの)は
清算払いと書いてあります。あくまでも概算払いは約束ではありません。

たくさん現金がない組織はどうしたらよいでしょうか?

自腹が切れない場合は、金融機関から借り入れます。
これは比較的借りられます。行政が最後に「ちゃんと返すよ」
と言っているわけですから信頼度は高いわけです。リスクが少ないと
同じです(当然ですが)。

で、ランニングコストを充足するために借ります。

当たり前ですが・・・

利息がかかります。3%前後でしょうか。

この利息は誰が負担してくれるのか。行政でしょうか。
もちろん、組織が自分で負担します。

他の事業の利益を充当するしかありません。金額が小さければ
代表者の自腹もあるのかもしれません。

こうやって行政と仕事をしていると、(全部ではないです)破たんの道へ
突き進むわけです。

たくさんのひとを支える代わりに、身を切られていきます。


じゃあ、受けなければいいのでは?というコメントもあるかと思います。
確かにそうでしょう。でも、

たくさんのひとを支えられる、といのはNPOにとっては大変魅力的であり
そのために活動しているからです。

だからこそ、行政と仕事をするときには、細心の注意や戦略性などが
必用になります。予算が大きければいいわけでもなく、また、
無用に少ない事業を請け負ってはそれはそれで大変です。

いっつも「どうしたらいいのかな」と考えています。

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NPO法人「育て上げ」ネット
理事長 工藤 啓


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