3分間の戯曲(宮城クラブの活動から) | 片岡タイムズ(日本語版)

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UPSET/宮城クラブ所属/片岡タイムズ編集長

宮城クラブの活動から。

【3分間の戯曲】

圧巻の3分間だった。


この競技には、一つのシュートで時代を動かした男が何名かいる。23番を背負う男のシュートは、唯一無二、The shotとして語り継がれている。カリフォルニア州の大都市を拠点とするチームが、同州の州都をフランチャイズとするチームの夢を奪ったのも、一つのシュートだった。前者は、マイケル・ジョーダン。後者はロバート・オーリー。勿論、他にもあるが、ここでは割愛する。

10/11。この日も、宮城クラブは練習を行う。このチーム。集団としての目標は明確。そこへ向かって邁進も出来ている、、はずである。目標について、ここではあえて書かない。集団は個の集合体である。では、それぞれの選手が希求することは何か。達成感、挑戦する中での自己成長、日々の充実感。それも様々だ。解を持たない問いもこの世には存在する。お互いに理解しようと努め、ちょっとした言動から感じ取り、それを尊重すればよい。違いを認め、他者を理解しようと努める。その上で、全体の目標達成に向けて、アクションを起こす。それこそがTEAM WORK。


冒頭の話に戻る。話題にしたいのは、蓮見直紀選手の活躍だ。資格試験に伴い、数か月の休息から復帰して約1か月。地底の遥か彼方まで失墜した信頼感も復帰しつつある。圧巻は、チーム内スクリメージでの終盤。

まず、ディフェンスリバウンドのこぼれ球を鋭く反応して拾い、あまたいるディフェンスを抜き去り、レイアップを沈める。直後、前線からのディフェンスでボールを奪う。走りこんだ味方への鋭いパス。次のオフェンス、ピックアンドロールを仕掛ける。インサイドのディフェンスのターゲットは、色黒で中肉中背の、この選手。潰すべく圧力をかけた瞬間、細かなドリブルで隙間を掻い潜り、インサイドの選手へ鋭いパス。思わず、歓声が湧きあがる。


このパスで、彼のチームの勝利は決定的となった。ゲーム終盤、激しくボールマンプレスを仕掛ける相手チームをあざ笑うかのようなドリブルテクニックで交わし、ラスト数秒でミドルシュートを沈めるオマケつき。

蓮見直紀選手のTHE SHOTである。だが、誤解を恐れずに言えば、ここでいうTHEは、THEは、THEなのであるが、マイケル・ジョーダンのSHOTを形容するときに使われたTHEとは性質が違う。言うならば、なるほど!THE!ワールドの、そんなTHEだ。華麗なプレーにも、何処か笑いを誘うのも、彼の人間性の特徴だ。

仮に、このTHE SHOTのTHEが相川欽也と楠田枝里子の香りを漂わせていたとしても、彼のコンディションが右肩上がりで向上しているのは疑いようのない事実である。

聴けば、平日、週に2回のトレーニングを欠かさないらしい。基礎体力となるランニング。ランニングマシンで30分間。定評のあるフィジカルの強さを強化するためのウェイトトレーニング。そして、粘り強いディフェンスの礎になる足腰の強化や股関節のメンテナンスも欠かさない。シルバーウィーク、3日間連続で行ったランドリルで醜態を晒した姿は、すでに無い。


彼が不在の時期、若手の山口、そして蓮見の同窓生である高山、小林兄弟がPGのポジションでチームを牽引した。前線からのディフェンスでは、河田が何度も素晴らしい守りを見せた。彼の復帰を心待ちにする選手も多かったが、戻ってくるタイミングのコンディション次第では、彼のポジションが無い事も考えられた。

チームの中で、彼が不在の時期、彼の話題をすることはタブーだった。
「こんな時、直紀がいれば・・」

そう語る選手がいるたび、その選手はチームの士気にかかわる発言をしたとされ、管理人である片岡氏にボコボコにされた。片岡氏も殴りたくて殴っているわけではない。ただ、チームの士気が明らかに下がる発言を許すわけにはいかなかった。泣きながら鉄拳を振りかざした。
※ちなみに、「こんな時・・」とは主に飲み会の席である。


閑話休題


思えば、誰よりも気持ちが強く、このチームでの目標達成を強く願う人間だ。時に理論的に、時に情熱的に、チームを牽引してきた男である。勝って泣き、負けて泣く試合後の酒を愛し、スポーツに対して深い愛情を抱いている。その哲学は、愛情と闘争、合理と非合理を同時に持ち、例のない独自性を秘めた。


知と熱と愛。たぎる情熱と鋭敏な知性は渾然一体。それを愛情がつつめば、凡人の想像を超える現実の結果がもたらされるのを知っていたからこその、ときに合理的で、時に非合理な言動だった。今になって振り返ると、そう思う。


最後に。骨太で屈強な肉体を誇る蓮見直紀選手。双子の弟である勇紀選手も同様だ。強靭な肉体の秘訣は、幼少期からの、ご両親の食育にあった。

「御飯の時は、、必ず牛乳!腹一杯を超えるおかずの量」

前述の双子は、非常に義理人情に厚く、礼儀正しい事でも知られている。すべての基礎は食にあり!そうだ、曹操にとって天下分け目の大一番となった官渡の戦いでも、袁紹軍の食糧庫を狙った攻撃が勝敗の分け目であった。


余談であるが、彼が3分間の戯曲を踊る時間帯。彼のチームのディフェンスリバウンドの成功率が非常に高かった。その中の多くは、強固な守備力と高いリバウンド力を誇る石川選手、強靭な肉体とバネを持つ福田選手の奮闘によるモノであるが、全体の中の何回かは、管理人の必死のチップアウトによってマイボールになった場面であることも付記しておく(管理人の独自スタッツでは、4ディフェンスリバウンドチップ)。

及び、彼がカットインで切り裂いてレイアップを沈めた場面、管理人がウイングへとスプリントで走り出したおかげで、彼のマークマンは手薄だった。


自らのシュートを誇らしげに語るわけではないが、全身から発するオーラから、ドヤ感が溢れ出て、それが相手チームの癪に障る。それは、それで良い。スポーツをやっていて、大きな仕事を成し遂げるのは、相手を圧倒したい、ゲームを支配したい、勝利したいという欲求を持つ人間だ。だが、彼は、囮になった片岡氏のスプリントを始めとした、周りのサポートに気が付いているだろうか。


(文責:宮城クラブ広報部 片岡)