イントロデューシング・カール・パーキンス | スロウ・ボートのジャズ日誌

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ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

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今年、何回目になるでしょう?

縁あって、先週末に再び札幌に行って来ました。


土曜日は北海道各地で運動会が行われており、

朝方、車で移動していた私はビニールシートを抱えたお父さんや

足早に学校に向かう多くのお子さんを見ました。

この日の天気はちょっと不安定。

朝方は暗い雲が垂れこんでいましたが、

昼には快晴に。

それが、夕方4時ぐらいからは雨になりました。

運動会にはぎりぎり間に合った、というところでしょうか。


4泊5日の滞在中、雨の日が多かったのですが、

一つ収穫がありました。

雨に濡れるライラックの花を見られたことです。


札幌では「ライラックまつり」というイベントもあるぐらい

おなじみの花。

大通り公園で紫の花が咲くと、

雰囲気もぱっと華やかになります。

今回、車窓から眺めていると、住宅の庭にも実に多くの

ライラックが植えられていることに気が付きました。


私はイベントとこの花を結びつけて考えていたので、

まぶしい陽光の中、見るのがいいとばかり思っていました。

しかし、雨の日のライラックもなかなかいいものです。

ちょっとアジサイに似て、濡れていても風情があるのです。

紫という色がそう感じさせるのか、

まだ空気が冷たさを持つ札幌の気候が

雨との相乗効果で独特の効果をもたらすのか・・・・


そうこうするうち、「雨のライラック」を扱ったジャズが

あったのを思い出しました。

聴くのは何年ぶりでしょうか。

ピアニスト、カール・パーキンスのデビュー作

「イントロデューシング・カール・パーキンス」。

パーキンスは幼い頃に左手が不自由になったのですが、

ハンディキャップを感じさせない、

軽快で小気味いいピアノを弾く人です。

それが、このアルバムの一曲「ライラック・イン・ザ・レイン」では

なぜか湿った音色を響かせているから不思議です。


1955年と56年の録音。

メンバーも良いです。


Carl Perkins(p)

Leroy Vinnegar(b)

Lawrence Marable(ds)


⑩Lilacs In The Rain

非常にスローで優雅なイントロを聴くだけで、

「おっ」と思うはずです。

何せ、アルバムの他の曲「Way Cross Town」や「Just Friends」では

玉を転がすような快調さを聴かせていたピアノが、

妙にしっとり迫ってくるのですから。

あえて言えば

⑧It Could Happen To You

の抒情性に、その予兆はありましたが・・・・。

さて、「ライラック~」に戻ると、

メロディでパーキンスは美しいながら

少しもやがかかったような、あいまいさもある音色で

雨に濡れた花を描き出しています。

ソロに入ってもテンポを上げることなく、

ちょっと間違えば美しさを損なってしまいそうな

デリケートなタッチを聴かせます。

これだけ他の曲とタッチが違うのはメロディの力か、

雨粒のついたライラックのことを思った

パーキンスの想像力のためなのか・・・・・

非常に興味深い一曲です。


アメリカのインディアナポリスに1928年、

生まれたというパーキンス。

かの地の気候は分かりませんが、

この曲に対する特別なアプローチを聴くと、

生まれ故郷で雨に濡れたライラックに出会っていたのでは・・・・

と想像してしまいます。

花をテーマにしたジャズの中で、傑作のひとつと言えるでしょう。


追伸:

都合により、しばらくブログを休ませていただきました。

この間もペタなどで応援して下さった皆さん、ありがとうございます。

これからもゆっくりとではありますが書き続けていきますので、

宜しくお願いします。