スロウ・ボートのジャズ日誌

ジャズを聴き始めて早25年ほど。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。




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きょう、ちょっと面白いニュースを目にしました。

 

アメリカ大統領選挙で共和党の指名獲得を確実にしているドナルド・トランプについて、

俳優のジョニー・デップがコメントしていたのです。

ジョニー・デップは取材者から「不動産王のトランプ氏に次期大統領になってほしいか」

と聞かれ、次のように答えたそうです。

 

「もし、ドナルド・トランプが次期大統領になったら、

 歴史的な観点からは非常に面白いことだと思います。

 アメリカ最後の大統領を自分の目で見られるわけですから。

 そうなったらアメリカは終わるでしょう」

 

次の大統領によってはアメリカの将来が暗くなる、ということを見事に表現しています。

 

これを軽い皮肉と受け流すことができないのが今の状況です。

共和党と民主党の代表が一騎打ちするわけですから、

民主党の指名を獲得するであろうヒラリー・クリントンに重大な失点があれば、

必然的にトランプが当選することになります。

世も末、としか言いようがありません。

 

ただ、トランプの登場がハプニングでないことは確かです。

いまグローバル化がどんどん進む一方で、

それぞれの国は「内向き」になっています。

マーケットが広がり、国を超えての競争が過酷になっていく中、

富の配分から取り残されて不満を抱える人が増えているのです。

 

アメリカでトランプを支持しているのはブルーカラーの白人層だと言われています。

そうした人たちにとって、中国や日本、メキシコを「敵」に仕立て上げ

「敵からアメリカを取り戻すことができるのは自分だ」とする

トランプの発言は心に届くものがあるのでしょう。

 

しかし、トランプ自身がグローバル化するマーケットの受益者であり、

大統領になったところでシステムをひっくり返すことができないのは明らかです。

それでも「アメリカを再び偉大な国に」という主張が受け入れられてしまうところに、

かつての豊かだったアメリカへの郷愁が強烈に存在することが分かります。

 

この「不穏な感じ」をジャズにするとどうなるのか・・・・

思い当たった作品が「ビレッジ・ゲートのハービー・マン」です。

1962年、ジャズの領域を超え、ポップスの全米アルバムチャートで

30位になったという伝説のアルバム。

収録曲で有名な「カミン・ホーム・ベイビー」は、ファンキーなノリのよい曲ですが、

実はそのリズムはダークな8ビートです。

どこか一筋縄ではいかない曲の雰囲気と魅惑的な「ホーム」に誘い込むタイトルに

トランプ現象とつながる部分があるように思えます。

 

1961年11月17日、NYのビレッジゲートでのライブ録音。

 

Herbie Mann(fl)

Hagood Hardy(vib)

Ahmad Abudul-Malik(b)

Ray Mantilla(conga drum,per)

Chief Bey(african drum,per)

Rudy Collins(ds)

Ben Tucker(b)

 

①Comin' Home Baby

このアルバムでベースを務めているベン・タッカーが作曲したナンバー。

リーダーでフルートのハービー・マンは1950年代末に

アフリカやブラジルのリズムに関心を持ち、アフロ・キューバン・ジャズの

バンドを結成していたそうです。

その反映なのでしょう、とにかくリズムが凝っています。

ベースはタッカーとアーマド・アブダルマリクの二人。

イントロからタッカーが「ドゥッ・ドゥー」という印象的なベース・ラインを担当、

マリクはそのラインの空間を補足するかのように音を置いていきます。

この二人が作り出す重層的なリズムが単調なドラムのビートと結びつき、

ソウルフルなグルーブを生み出していきます。

やや土着的な重みのあるリズムに対し、軽やかなのがハービーのフルート。

メロディの提示の段階で非常にクールなアプローチをしてくることに驚きます。

リズムはラテンでも「盛り上がり一辺倒」ではないところに

ハービーの冷静な計算があるようです。

ソロでもその姿勢は変わらず、伸びやかなフレーズと細切れの音を

巧みに組み合わせ、エキゾチックとも言える独自の世界を作り上げます。

これに続くのはハグード・ハーディの短いバイブ・ソロ。

勢いのあるソロが解放感を与えてくれ、一気にバンドサウンドが華やかになります。

通して聴くと、「黒いノリ」と軽やかさが同居し、単なるジャンルを横断したアプローチとも

言いきれない複雑さがあることが分かります。

その「得体の知れなさ」がヒットの一因なのかもしれません。

 

ライブの舞台となったビレッジ・ゲイトは1960年代、

カウンター・カルチャーの舞台となっていたそうです。

公民権運動やベトナム戦争などで価値観が揺れ動いていた時代。

音楽でも軽やかさがありながらどこか陰を感じさせるものが

受け入れられたのではないか、と想像します。

 

トランプ現象の中で疎外感を持つ人たちが

「カミン・ホーム」と呼びかけられ、「偉大な国」を求めたとしても、

そこには新たな行き止まりが待っています。

世界一の大国ですら答えを見つけられない厳しい時代の中で

私たちは生きているようです。

 

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ジャズ・ピアニストの福居良さんが今月15日に亡くなられました。


正直、この日がこんなに早く来るとは想像もしていませんでした。

去年、東京でのライブでお会いしましたが、

その時も非常にパワフルな演奏を聴くことができましたし、

あの人懐こい笑顔にも変わりがなかったからです

 ↓

http://ameblo.jp/slowboat/entry-12110923418.html


体調が悪いと聞いてはいましたが、福居さんには驚異的な体力があったので

どこかでまたお目にかかれると思っていました。

いま思うと、お見舞いできなかったことが悔やまれてなりません。


私が福居さんと初めてお目にかかったのは2003年でした。

札幌で福居さんご夫妻が開いているライブハウス「スローボート」で演奏を聴き、

その後にお話をさせていただきました。

正直、最初はスキンヘッドの風貌に緊張したのですが、

すぐに朴訥でありながら茶目っ気のある温かい人だと分ったのを覚えています。


驚いたのはそれから数年の間、何回も「朝まで飲む」ことになったことです。

私が長い間ジャズを聴いてきたということもあり、心を許してくれたようです。

福居さんは終演後にスローボートで日本酒を開けたり、

ススキノまで出かけて何時間も過ごすのが大好きでした。

当初は「北海道で第一人者のジャズピアニストにこんなに付きあってもらっていいのかな?」

と思うこともありましたが、様々な人たちが福居さんとの時間を楽しんでいることを知り、

私もありがたくお伴をさせていただきました。


福居さんと過ごした中で印象的だったのは、実に「面倒見がいい」ということです。

スローボートでは若いミュージシャンと組むことがありましたが、

演奏後に指導しているのをよく見かけました。

ある時は若いベーシストに「自分のことでいっぱいで他のメンバーの音を聴いていない」と、

かなりストレートに苦言を呈していることもありました。


しかし、その指導の中には常に愛情がありました。

それは音楽への誠実な姿勢と、地元のミュージシャンをきちんと育てたいという

先輩としての優しさから来るものであったように思います。


今回、福居さんの「メロウ・ドリーム」を聴こうとCDを棚から引っ張り出しました。

この作品については以前にも書いています

 ↓

http://ameblo.jp/slowboat/entry-10171557121.html


この時はCDのタイトルが「メロウ・ドリーム」だけだと思っていました。

それが、今回「メロウ・ドリーム+1」となっていることに気がついたのです。

もともと1977年に出たアルバムを再発してCDにした際、「+1」が加わりました。

それは2006年にスローボートで録音された「アーリーサマー2006-at Slow Boat」

いうトラックだったのです。


CDのライナーを読むと、このボーナストラックが加わったのは監修者の意向によるもので

福居さん自身の希望ではなかったようです。

しかし、改めて参加メンバーを見て私にはハッとするものがありました。

ベースが粟谷巧さん、ドラムが竹村一哲さんだったのです。


私が札幌にいた頃、このお二人はよく「Ryo's Young Trio」というバンド名で

スローボートに出演していて、私も聴いたことがあります。

まだまだ二人とも若くて(竹村さんは10代だった?)粗い演奏でしたが、

とにかく一生懸命にやっていました。

そんな二人を福居さんは熱心に指導していました。

「アーリーサマー」の演奏を依頼された福居さんが若者にチャンスを与えようと

指名したのは容易に想像できることです。

それだけ期待もあったのだろうなあと思います。


スローボートで購入したCDには3人のサインがあります。

私が福居さんにサインをお願いすると、二人に声をかけてサインに参加させていました。

そんなところにも福居さんの優しが感じられ、懐かしく思い出されます

 ↓



今回は福居さんを追悼してこの「アーリーサマー2006-at Slow Boat」について

書きたいと思います。


2006年9月20日、札幌・スローボートにて録音。


福居良(p)

粟谷巧(b)

竹村一哲(ds)


⑦「アーリーサマー2006-at Slow Boat」

福居さんのデビュー作「シーナリィ」にも収録されていた市川秀夫のオリジナル曲。

福居さんのピアノには独特のブルース感覚がありますが、

一方で非常にモダンな側面もあります。

これは市川作品の斬新さもあって、モダンな面が強く出ていると言えるでしょう。

そして、いまでも演奏が新しく聴こえるのは、

リズム陣がフレッシュであることも大きいと思います。

ピアノのみによるイントロは、福居さんのオリジナル「メロウ・ドリーム」にも

じる愁いのあるものです。

そこからリズムが加わり、俄然演奏に勢いが付いてきます。

若い二人が繰り出すリズムは、正気勢いがやや余っているところはあるのですが、

とても力強く、ピアノも引っ張られているところがあるように思います。

ミドルテンポの前半から、メロディを挟んでスピードがアップ。

福居さんのピアノも熱を帯び、バシバシと「決めフレーズ」を連打していきます。

熱くなってきたところでもう一度テンポを落とし、さらにまた急速調へ。

竹村さんの力強いソロを入れて一気にメロディに戻る展開は

トリオの一体感をよく表しています。

全体的にけっこう難しい展開だと思うのですが、

福居さんは若手を試していたのでしょうか。


この「+1」の後、二人の若者は大きく成長しています。

福居さんのラスト作「ア・レター・フロム・スローボート」でもその成果は聴けますし、

それぞれ有名ジャズマンとの共演も果たしています。

これから活躍の幅は広がっていくことでしょう。


67歳という短すぎる生涯を終えた福居さんに心から哀悼の意を表すとともに、

その残してくれたものに感謝したいと思います。

ありがとうございました。

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おとといの26日(金)、民主党と維新の党が3月中に

合流することで正式合意しました。


衆参ダブル選挙の可能性もささやかれる中、

巨大与党に対抗するために合流するというのは

正しい判断だと私は思います。


いま、安倍政権は「やりたい放題」です。

憲法を無効化しようという安保法制、

株価を支えるための「年金資金」のハイリスク運用、

社会保障の充実を先送りする軽減税率の導入・・・。

その一方で国会議員の定数削減には及び腰という体たらくです。


しかし、この状況を作り出した責任は野党にもあります。

野党がいま何を目指しているのか、政権を担うことになったら

何をやるのかがよく分からないからです。

安保法制にしても最近になってようやく対案をまとめていますが、

「遅い!」というのが正直なところでしょう。


去年夏の国会で、与党とは違う安全保障のビジョンを示していれば

国民の野党に対する印象も大きく変わっていたはずです。

特に民主党には一度政権を担当してしまったがゆえの

「アメリカへの遠慮」や「現実路線」があるのでしょう。


しかし、憲法違反の指摘を無視して進む与党に対して、

せっかく手にしたはずの「現実感覚」と理念のバランスを取って

自分の党をまとめていかなければ、国民が背を向けるのは当然です。

岡田代表が言うように、戦後の平和主義を大切にしようというなら、

民主党は自分たちがやるべきことを具体化する努力が

まだまだ足りないのではないかと思います。


もっと野党には「本気」になってほしい。

そんな願いを込めつつ、ここは「本気」で染め上げられたジャズを聴きましょう。

マイルス・デイヴィス(tp)の「フォア・アンド・モア」です。


ジャズ史に残る傑作なので、いまさら多くの説明は必要ないでしょう。

それでも特筆したいのは、ライブ録音でありながらどこまでも

「ピリッ」としている音楽だということです。

バンドのメンバーが一定しなかった時期を経て、

マイルスが新しいクインテットを結成してから9か月後の録音です。

新しいパワフルなスタイルが軌道に乗ってきたことに伴うテンションの高さ。

そして、お互いが一切の妥協を許していなかった姿勢がビンビンと伝わってきます。


1964年2月12日、NYフィルハーモニック・ホールでの録音。


Miles Davis(tp)

George Coleman(ts)

Herbie Hancock(p)

Ron Carter(b)

Tony Williams(ds)


①So What

テンポの速いベースとピアノによるイントロと、

それに続くホーンのコール・アンド・レスポンスから異常なテンションを感じます。

最初のソロはマイルスですが、とても攻撃的な姿勢に驚かされます。

火を吹くようなという形容も大げさではないほど、

高音を駆使した激しいブロウが続くのです。

しかも、そこに反応してトニー・ウィリアムズが爆発的なシンバルを轟かせるので、

強烈な印象はいやがうえにも高まります。

ソロ全体としては波が満ち引くように強弱があるので、

その巧みさにも圧倒されて相当長く感じます。

しかし、経過時間を見てみると冒頭からマイルスのソロが終わるまで3分もかかっていません。

それだけ中身が濃い内容です。

マイルスの後はジョージ・コールマンのテナー。

モードを完全に消化し、熱気がこもりつつもクールさを保ったプレイをしています。

コールマンの評価は後にクインテットに加わるウェイン・ショーターほど高くないようですが、

この安定感はバンドのバランスを保つ上で良かったのではないかと私は思います。

続いてのハービーのソロも素晴らしい。

最初は音数を絞っていますが、次第に強いタッチに転じていきます。

聞かせどころはメロディに戻る前のトニーとの息の合い方。

ピアノがすっと音数を減らすとドラムも直ちにペースを落として緊張感を緩め、

メロディにスムーズにつないでいきます。

バンド全体が呼吸しているかのような演奏に聴衆は息を呑むばかりです。


⑤Seven Steps To Heaven

①と比べるとメロディの影響もあるのか、かなりリラックスした雰囲気が感じられます。

それでも隙は全くなく、マイルスのソロは細かなパッセージをつないで

短いながらビシッと決めています。

特筆すべきはこれを受けたトニーのソロ。

音数は少ないのですが、新しい感覚でスイングしています。

バスドラムは極力使わず、スネアとシンバルで静かに、

しかし空間を「回す」ように巧みにスイングするのです。

この時彼はまだ18歳だったはずですが、驚異的な「設計能力」に圧倒されます。

続くテナー~ピアノのソロでもバックでテンポを次々に変えるリズム隊の変幻自在さに

聴衆が熱い拍手を送っています。


マイルスのバンドも最初から順風満帆とはいかず、

試行錯誤の末にようやくスタイルが固まったことを考えると

日本の野党にもがんばってほしいと思います。

とりあえず「野合」であっても本当に真剣に自分たちがやるべきことを決めれば

多少の混乱はあっても道は開けるはずですから。



安倍首相には祖父の岸信介から受け継がれた憲法改正への執念があります。

安倍首相は祖父ほどの大物ではないと私は思いますが、

その「本気度」が高いことは認めざるを得ません。

まずは相手を認めて自分も本気になること。

それが野党に求められています。



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