スロウ・ボートのジャズ日誌

ジャズを聴き始めて早25年ほど。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。




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ジャズ・ピアニストの福居良さんが今月15日に亡くなられました。


正直、この日がこんなに早く来るとは想像もしていませんでした。

去年、東京でのライブでお会いしましたが、

その時も非常にパワフルな演奏を聴くことができましたし、

あの人懐こい笑顔にも変わりがなかったからです

 ↓

http://ameblo.jp/slowboat/entry-12110923418.html


体調が悪いと聞いてはいましたが、福居さんには驚異的な体力があったので

どこかでまたお目にかかれると思っていました。

いま思うと、お見舞いできなかったことが悔やまれてなりません。


私が福居さんと初めてお目にかかったのは2003年でした。

札幌で福居さんご夫妻が開いているライブハウス「スローボート」で演奏を聴き、

その後にお話をさせていただきました。

正直、最初はスキンヘッドの風貌に緊張したのですが、

すぐに朴訥でありながら茶目っ気のある温かい人だと分ったのを覚えています。


驚いたのはそれから数年の間、何回も「朝まで飲む」ことになったことです。

私が長い間ジャズを聴いてきたということもあり、心を許してくれたようです。

福居さんは終演後にスローボートで日本酒を開けたり、

ススキノまで出かけて何時間も過ごすのが大好きでした。

当初は「北海道で第一人者のジャズピアニストにこんなに付きあってもらっていいのかな?」

と思うこともありましたが、様々な人たちが福居さんとの時間を楽しんでいることを知り、

私もありがたくお伴をさせていただきました。


福居さんと過ごした中で印象的だったのは、実に「面倒見がいい」ということです。

スローボートでは若いミュージシャンと組むことがありましたが、

演奏後に指導しているのをよく見かけました。

ある時は若いベーシストに「自分のことでいっぱいで他のメンバーの音を聴いていない」と、

かなりストレートに苦言を呈していることもありました。


しかし、その指導の中には常に愛情がありました。

それは音楽への誠実な姿勢と、地元のミュージシャンをきちんと育てたいという

先輩としての優しさから来るものであったように思います。


今回、福居さんの「メロウ・ドリーム」を聴こうとCDを棚から引っ張り出しました。

この作品については以前にも書いています

 ↓

http://ameblo.jp/slowboat/entry-10171557121.html


この時はCDのタイトルが「メロウ・ドリーム」だけだと思っていました。

それが、今回「メロウ・ドリーム+1」となっていることに気がついたのです。

もともと1977年に出たアルバムを再発してCDにした際、「+1」が加わりました。

それは2006年にスローボートで録音された「アーリーサマー2006-at Slow Boat」

いうトラックだったのです。


CDのライナーを読むと、このボーナストラックが加わったのは監修者の意向によるもので

福居さん自身の希望ではなかったようです。

しかし、改めて参加メンバーを見て私にはハッとするものがありました。

ベースが粟谷巧さん、ドラムが竹村一哲さんだったのです。


私が札幌にいた頃、このお二人はよく「Ryo's Young Trio」というバンド名で

スローボートに出演していて、私も聴いたことがあります。

まだまだ二人とも若くて(竹村さんは10代だった?)粗い演奏でしたが、

とにかく一生懸命にやっていました。

そんな二人を福居さんは熱心に指導していました。

「アーリーサマー」の演奏を依頼された福居さんが若者にチャンスを与えようと

指名したのは容易に想像できることです。

それだけ期待もあったのだろうなあと思います。


スローボートで購入したCDには3人のサインがあります。

私が福居さんにサインをお願いすると、二人に声をかけてサインに参加させていました。

そんなところにも福居さんの優しが感じられ、懐かしく思い出されます

 ↓



今回は福居さんを追悼してこの「アーリーサマー2006-at Slow Boat」について

書きたいと思います。


2006年9月20日、札幌・スローボートにて録音。


福居良(p)

粟谷巧(b)

竹村一哲(ds)


⑦「アーリーサマー2006-at Slow Boat」

福居さんのデビュー作「シーナリィ」にも収録されていた市川秀夫のオリジナル曲。

福居さんのピアノには独特のブルース感覚がありますが、

一方で非常にモダンな側面もあります。

これは市川作品の斬新さもあって、モダンな面が強く出ていると言えるでしょう。

そして、いまでも演奏が新しく聴こえるのは、

リズム陣がフレッシュであることも大きいと思います。

ピアノのみによるイントロは、福居さんのオリジナル「メロウ・ドリーム」にも

じる愁いのあるものです。

そこからリズムが加わり、俄然演奏に勢いが付いてきます。

若い二人が繰り出すリズムは、正気勢いがやや余っているところはあるのですが、

とても力強く、ピアノも引っ張られているところがあるように思います。

ミドルテンポの前半から、メロディを挟んでスピードがアップ。

福居さんのピアノも熱を帯び、バシバシと「決めフレーズ」を連打していきます。

熱くなってきたところでもう一度テンポを落とし、さらにまた急速調へ。

竹村さんの力強いソロを入れて一気にメロディに戻る展開は

トリオの一体感をよく表しています。

全体的にけっこう難しい展開だと思うのですが、

福居さんは若手を試していたのでしょうか。


この「+1」の後、二人の若者は大きく成長しています。

福居さんのラスト作「ア・レター・フロム・スローボート」でもその成果は聴けますし、

それぞれ有名ジャズマンとの共演も果たしています。

これから活躍の幅は広がっていくことでしょう。


67歳という短すぎる生涯を終えた福居さんに心から哀悼の意を表すとともに、

その残してくれたものに感謝したいと思います。

ありがとうございました。

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おとといの26日(金)、民主党と維新の党が3月中に

合流することで正式合意しました。


衆参ダブル選挙の可能性もささやかれる中、

巨大与党に対抗するために合流するというのは

正しい判断だと私は思います。


いま、安倍政権は「やりたい放題」です。

憲法を無効化しようという安保法制、

株価を支えるための「年金資金」のハイリスク運用、

社会保障の充実を先送りする軽減税率の導入・・・。

その一方で国会議員の定数削減には及び腰という体たらくです。


しかし、この状況を作り出した責任は野党にもあります。

野党がいま何を目指しているのか、政権を担うことになったら

何をやるのかがよく分からないからです。

安保法制にしても最近になってようやく対案をまとめていますが、

「遅い!」というのが正直なところでしょう。


去年夏の国会で、与党とは違う安全保障のビジョンを示していれば

国民の野党に対する印象も大きく変わっていたはずです。

特に民主党には一度政権を担当してしまったがゆえの

「アメリカへの遠慮」や「現実路線」があるのでしょう。


しかし、憲法違反の指摘を無視して進む与党に対して、

せっかく手にしたはずの「現実感覚」と理念のバランスを取って

自分の党をまとめていかなければ、国民が背を向けるのは当然です。

岡田代表が言うように、戦後の平和主義を大切にしようというなら、

民主党は自分たちがやるべきことを具体化する努力が

まだまだ足りないのではないかと思います。


もっと野党には「本気」になってほしい。

そんな願いを込めつつ、ここは「本気」で染め上げられたジャズを聴きましょう。

マイルス・デイヴィス(tp)の「フォア・アンド・モア」です。


ジャズ史に残る傑作なので、いまさら多くの説明は必要ないでしょう。

それでも特筆したいのは、ライブ録音でありながらどこまでも

「ピリッ」としている音楽だということです。

バンドのメンバーが一定しなかった時期を経て、

マイルスが新しいクインテットを結成してから9か月後の録音です。

新しいパワフルなスタイルが軌道に乗ってきたことに伴うテンションの高さ。

そして、お互いが一切の妥協を許していなかった姿勢がビンビンと伝わってきます。


1964年2月12日、NYフィルハーモニック・ホールでの録音。


Miles Davis(tp)

George Coleman(ts)

Herbie Hancock(p)

Ron Carter(b)

Tony Williams(ds)


①So What

テンポの速いベースとピアノによるイントロと、

それに続くホーンのコール・アンド・レスポンスから異常なテンションを感じます。

最初のソロはマイルスですが、とても攻撃的な姿勢に驚かされます。

火を吹くようなという形容も大げさではないほど、

高音を駆使した激しいブロウが続くのです。

しかも、そこに反応してトニー・ウィリアムズが爆発的なシンバルを轟かせるので、

強烈な印象はいやがうえにも高まります。

ソロ全体としては波が満ち引くように強弱があるので、

その巧みさにも圧倒されて相当長く感じます。

しかし、経過時間を見てみると冒頭からマイルスのソロが終わるまで3分もかかっていません。

それだけ中身が濃い内容です。

マイルスの後はジョージ・コールマンのテナー。

モードを完全に消化し、熱気がこもりつつもクールさを保ったプレイをしています。

コールマンの評価は後にクインテットに加わるウェイン・ショーターほど高くないようですが、

この安定感はバンドのバランスを保つ上で良かったのではないかと私は思います。

続いてのハービーのソロも素晴らしい。

最初は音数を絞っていますが、次第に強いタッチに転じていきます。

聞かせどころはメロディに戻る前のトニーとの息の合い方。

ピアノがすっと音数を減らすとドラムも直ちにペースを落として緊張感を緩め、

メロディにスムーズにつないでいきます。

バンド全体が呼吸しているかのような演奏に聴衆は息を呑むばかりです。


⑤Seven Steps To Heaven

①と比べるとメロディの影響もあるのか、かなりリラックスした雰囲気が感じられます。

それでも隙は全くなく、マイルスのソロは細かなパッセージをつないで

短いながらビシッと決めています。

特筆すべきはこれを受けたトニーのソロ。

音数は少ないのですが、新しい感覚でスイングしています。

バスドラムは極力使わず、スネアとシンバルで静かに、

しかし空間を「回す」ように巧みにスイングするのです。

この時彼はまだ18歳だったはずですが、驚異的な「設計能力」に圧倒されます。

続くテナー~ピアノのソロでもバックでテンポを次々に変えるリズム隊の変幻自在さに

聴衆が熱い拍手を送っています。


マイルスのバンドも最初から順風満帆とはいかず、

試行錯誤の末にようやくスタイルが固まったことを考えると

日本の野党にもがんばってほしいと思います。

とりあえず「野合」であっても本当に真剣に自分たちがやるべきことを決めれば

多少の混乱はあっても道は開けるはずですから。



安倍首相には祖父の岸信介から受け継がれた憲法改正への執念があります。

安倍首相は祖父ほどの大物ではないと私は思いますが、

その「本気度」が高いことは認めざるを得ません。

まずは相手を認めて自分も本気になること。

それが野党に求められています。



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2015年が終わる前に、書いておきたいことがあるのを思い出しました。

優秀な「日本人ジャズマン」のことです。


これまで、仕事が忙しいうえに不規則で、思うようにジャズライブに

足を運ぶことができませんでした。

昨年、転勤で北海道から東京に戻ってきてからも、その不規則具合は変わらず。

たまにライブに足を運ぶ時は身体に相当ムチ打って・・・という感じだったのです。


ところが!ことしの配属変えで、予定がかなり読める仕事になりました。

この仕事は「1年限定」と言い渡されているので、この生活も来年初夏ぐらいまで。

となれば、ジャズライブに行かないわけにはいきません。


詳しく日付をメモっていないのですが、かなり精力的に出かけたと思います。

敬称を略して挙げていくと・・・


福田重男(p)トリオ、ジェルミー・スタイグ(fl)と片倉真由子(p)トリオ、辛島文雄(p)トリオ、

渋谷毅(p)のエッセンシャル・エリントン、早坂紗知(as)のTReS、山中千尋(p)トリオ、

松島啓之(tp)カルテット、渡辺貞夫(as)クインテット、ノーマ・ウィンストン(vo)のトリオ、

イベントでは東京JAZZ・・・。

変わったところでは東京外国語大学大学院教授でジャズトランペッターでもある

伊勢崎賢治カルテットというのもありました。


若干、行き過ぎの気もしますが、あと半年ぐらいのことだと考えれば許されるでしょう(?)。

多くのライブに同行させられた私のパートナーが楽しんだかは分かりませんが・・・。


それはさておき、驚いたのは日本人プレーヤーのレベルの高さです。

私は日本ジャズの熱烈な聴き手ではないと思っていますが、

実際に生の演奏に触れると、「ここまですごかったのか!」と驚くことが多かったのです。


確かにパワーでは外国人に及ばないところがありますが、

歌心や繊細な表現ではかなりのレベルに達しています。

国が違えば風土や生き方を反映した表現になるのは当然ですから、

どんどん「日本人ジャズ」を追求していけばいいのではないでしょうか。


前置きが長くなりましたが、ことし最も印象に残ったライブの一つが

ピアニストの福居良さんによるものでした。

札幌在住の福居さんですが、10月にツアーで東京に来てくれました。

12日は水道橋で、翌13日には新宿ミノトール2でライブを行っています。

私は新宿のライブに出かけました。


メンバーは福居良(p)、粟谷巧(b)、江藤良人(ds)、

ゲストにレイモンド・マクモーリン(ts)という顔ぶれでした。


演奏は2セットで、いずれも最初はトリオ中心、後半はカルテットでという編成です。

福居さんはバド・パウエルやバリー・ハリス、それにセロニアス・モンクなどから

影響を受けており、正統的なビ・バップとブルージーなスタイルを持っています。


最初を飾ったナンバーは「Be My Love」。1950年代のバラードナンバーで、

福居さんが以前からよく取り上げている曲です。

1曲目というのは意外でしたが、ミドルテンポで美しいメロディとソロを

流れるように展開しました。


ファースト・セットのラストでは「Body and Soul」と「Speak Low」を演奏。

レイモンド・マクモーリンが加わっていたため「Speak Low」は

かなり激しい展開となり、テナーのハイトーンが連発されていました。


そんな激しさの余韻を残したセカンド・セットがどうなるかと思ったのですが、

最初は何とピアノ・ソロによるモンク・メドレー。

Ask Me Now~Pannonica~Epistrophy~Ruby,My Dear と続きました。

私はこの演奏に福居さんの円熟を感じました。

勢いだけで突っ走るのではなく、訥々と、しかしモンク・ナンバーらしい

ひねりを加えてピアノの世界に一気に聴き手を引き込んでしまったのです。


さらに福居さんのオリジナル「Mellow Dream」が披露されると、

古くから応援を続けているらしいお客さん(転勤で札幌にいたのでしょうか?)が

大きな拍手を送ります。

この勢いを受けて、カルテットによる「4月の思い出」「星影のステラ」が続き、

最後はブルース(曲名は分かりませんでした)で福居さんが泥臭いプレイに徹すると

会場はさらに盛り上がり、エンディングとなりました。


このライブが思い出深いものとなったのは、私が福居さんを知って10年ほどが経ち、

演奏に触れるだけで感慨があるということもあるでしょう。

しかし、それだけではなく、福居さんの演奏に臨む真摯な姿勢と

いい意味でお客を意識した展開力があることも大きいと思います。

演奏でお客が熱くなった時は駆け抜け、ちょっとクールダウンすべき時は

抑制がきいた音で勝負する・・・

そんな「大人の優しさ」が福居さんの音楽の魅力の一つだと気がついたのでした。


さて、ライブについてはここまでとして、久しぶりの福居さんの新作についても

書いてみたいと思います。

タイトルは「A Letter From Slowboat」。

なんと、1999年以来、16年ぶりとなる新作です。

福居さんが札幌で開いているライブハウス「スローボート」の

20周年を記念して制作されたもので、ここでもそのプレイは溌剌としています。


福居良(p)

粟谷巧(b)

竹村一哲(ds)


2015年1月、札幌・スローボートにて録音


①Sonora

ピアニスト、ハンプトン・ホーズが作曲したナンバー。

ライブと同様、冒頭にするにはちょっと意外な選曲です。

愁いのあるメロディに続き、福居さんのソロとなります。

このソロ、進んでいくにつれて哀愁のフレーズがどんどん出てきます。

それが単調にならず、次第に熱を秘めたものになっていき、引きつけられます。

思えば、「メロー・ドリーム」でも福居さんは切なさのあるフレーズに

巧みに「温度」を込める人でした。

この曲が最初に置かれたのは、

そんな福居さんの特質がよく現れているからかもしれません。


③Stella by Starlight

ライブでも演奏されていたおなじみのスタンダード。

まず、スローなピアノのみでメロディが提示されます。

これがしっとりとした音色で、聴き入ってしまいます。

続いてブラシに導かれるようにピアノ・ソロに入りますが、

これもペースは全く変えずにひたすらスロー。

この抑制に抑制を重ねたプレイが原曲の美しさをさらに際立たせています。

派手さをねらわなかったことが成功した演奏です。


⑧Be My Love

映画の劇中歌として1950年にミリオン・セラーとなった曲。

ライブの冒頭で演奏されたものです。

私は原曲を知らないのですが、華やかさと切なさを兼ね備えた

魅力的なメロディーだと思います。

ミドル・テンポのブラシに乗りながら、福居さんのソロが「歌って」います。

時にメロディの断片を入れて、素材を「転がす」ように料理して

そのまま自分の「歌」にしてしまう・・・

うまく表現できないのですが、その名人芸に酔わされてしまう演奏です。


福居さんをはじめ、多くの才能あるミュージシャンがいる日本。

もっとその実力が評価され、演奏の場が広がっていけばいいと思います。

私も微力ながら応援すべく、職場が変わってもうまく抜けて(?)

ライブに足を運ぶようにします。

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