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「……だから私は、あそこで見ていたの。いわゆる張り込み捜査というものなのかしらね。これまでの事件があの辺りに集中していたから、そこで見ていた。……これ以上、事件を起こさないように」
「見ていたって……ずっと!?」
「さすがに何時間も同じ場所にいるのは疲れるわね……」
フッと、リコはため息をつくように短く息を漏らして、自嘲気味に微笑んだ。
私は言葉を失っていた。
彼女がここ何日か元気がなかったのは、ずっとあの場所にいたからだ。何時間も、ということはその行動はおそらく深夜まで及んでいたのかもしれない。
そして私が絶句したのは、単にその行動に対してだけではなかった。
自分のクラスメイトというだけの関係。ましてや普段話したこともない生徒が被害にあったというだけで、自らの身体を省みずにそこまでのことをするだろうか。
不可解だと言わんばかりの私の気持ちを察したのか、こちらが聞くより先にリコは言い放った。
「私も、事件の被害者の一人だと言ったら……分かってくれるかしら?」
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