傷は抱えたままでいい 27 | あの空へ、いつかあなたと

あの空へ、いつかあなたと

主に百合小説を執筆していきます。
緩やかな時間の流れる、カフェのような雰囲気を目指します。

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夕暮れと呼ぶにはまだ少し明るい時間。

やがて訪れる黄昏に向かって、少しずつ日が落ちていく。



学校を出て、家までの道のりをぼんやりと歩いていく。
私の家と学校とは決して近いとは言えない。
それでも自転車やバスを使う生徒にとっては徒歩で行き来できる分、いくらか恵まれている方と人によっては言うかもしれない。


私のお母さんも実家が田舎で学校も遠かったらしく、家から歩いて通える私を羨ましがる人間の一人だったが、私はというとそのまったく逆の考えだった。
自転車も使えるなら使いたいし、バスでの登下校にも正直言って憧れていた。


その理由はもちろん、歩くより乗り物を使った方が楽だから。
有希も里穂もバスでの通学のため、一緒に帰ると言ってもいつも途中で別れてしまって寂しいというのもある。
でも、徒歩通学をあまり好ましく思わないもう一つの理由もあった。
そしてそれは寄りにもよって今、私の目の前に現れたのだった。


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