前話へ
それは図書カードだった。
1冊ずつ、今まで誰がどのくらいの期間その本を借りたのかを記録する紙。
私の持っていた本のうちのどれか1冊から抜け落ちてしまったのだろう。どの本かを確認するためにカードを拾って内容を見る。
何気ない自然な行動、しかし私はタイトルを見るだけだったそのカードから目を離すことができずにいた。
カードには今現在だけでなく、かつてこの高校にいた元生徒の名前も当然書かれている。
どれもが私とは無縁な者ばかりで特に気にも留まらないもの……のはずだったのだ。
そこに書かれた一人の名前を見るまでは。
『3年 鈴森 桐江』
すずもり、きりえ――――
その名は他の誰でもないリコが、鈴森霧子が重なって感じられた。
同じ苗字、名前も漢字は違うが”きり”が合ってる。
3年とは書かれているが、本を借りた日付は今から3年前だ。
私やリコとは4つ学年が離れていることになる。
(リコの、お姉さん……?)
そう思ってしまうが、確信がない。偶然の一致だってあり得る。
でも今のリコにそれを確かめる勇気が私にはない。
そもそもリコに姉がいたからといって私に何の関係があるというのか。
「………………帰ろう」
図書室に来てから1時間しか経ってない。
有希と里穂もまだ部活が終わるまではしばらくかかるだろうが、私は先に学校を出ることにした。
カードを本に戻す前に、もう一度その名前を見る。
手書きで書かれた文字ははほんの数文字だけだったが、単純に綺麗な字だなと思った。
次話へ