傷は抱えたままでいい 15 | あの空へ、いつかあなたと

あの空へ、いつかあなたと

主に百合小説を執筆していきます。
緩やかな時間の流れる、カフェのような雰囲気を目指します。

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体育館に響き渡るバスケットボールの弾む音が、まるで他人事のように思える。

「ねえ、今日はもう帰った方が……」
里穂が心配そうに私に聞いてくるが、それに対する返事すら、私は「んー……」としか答えることができなかった。




結局プリントは居残りでは片づけることができず、宿題となってしまった。
だが家に持ち帰ったところで頭の中のモヤモヤは消えず、全てをやり終えるのにほぼ徹夜に近い時間がかかってしまった。

正直に言えば今でも、胸に何かが刺さってるような感覚が消えない。
いや、消えないどころか、異物感がますます鋭敏になってきているようにさえ感じる。


昨日の出来事がグルグルと頭の中を巡る。
北崎のこと、保健室でのこと、ルイと呼ばれた人のこと、そして放課後のリコの姿と言葉。

何かが分かるかもと思って行ったことなのに、何も分からないまま。
リコのことを何も分からない。
なぜそのことで心が乱れているのか、私は何も分からない。

あの時まで、気にも留めないただのクラスメイトだったはずなのに……


少しでも気が紛れればと思ったことと、昨日一昨日と(完全に自分の責任で)参加できていない申し訳なさから部活に顔を出したが、まるで集中できていないことが自分でも分かった。


だから、次の瞬間起こることは、偶然でもなんでもない必然的なことだった。
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