前話へ
ガタンという音、それに続くバサバサと何かが落ちる音。
二人に続いて、私もその音のする方へ目を向けた。
「お、おい、北崎!? どうしたんだよっ!」
そこには二人のクラスメイトがいた。
そのうちの一人の男子生徒が慌てた様子で声を掛ける。
その視線の先には、北崎と呼ばれる女子生徒がうずくまって下を向いていた。
顔を伏せたままの彼女は、見ると小刻みに震えている。
突然の大きな音とただならぬ雰囲気に、教室にいた生徒のほとんどがその様子に注目していた。
それでも誰かが何をするわけでもない。ザワザワと何かを口にするだけ。
いたたまれなくなったのか、男子生徒はもう一度、北崎に声をかけようとする。
「北崎、どうしたん――――」
「触らないで!!」
教室が静まり返る。
男子生徒を制止させたのは北崎ではなく、さっきまで窓の外をぼんやり眺めてたはずのリコだった。
男子生徒をにらみつけたまま、ツカツカと二人の元へ歩み寄っていく。
「彼女に、触らないで」
静かに、しかし強い圧を込めた物言いは、男子生徒に有無を言わさず引き下がらせる。
そのまま視線を北崎に移し、ゆっくりと彼女を抱きかかえて立ち上がった。
「北崎さんを保健室に連れていくから……先生にはそう伝えておいて」
クラスメイトにそう言い残し、二人は教室を出ていった。
次話へ