交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇


テーマ:

*---------《ラジオ脚本》---------*
  SE テレビが天気概況を伝えている。            ←(A)
三枝子「その漬け物、どう?」
トオル「(食べながら)おいしいよ。ママが漬けたの?」
三枝子「だといいんだけどね。お隣のご主人、出張のお土産なの」
隆  「(あくび混じり)おはよう(と来る)」          ←(B)
トオル「おはよう、パパ」
弥 生「アー、頭イタ(と来る)」
トオル「おはよう、お姉ちゃん」
弥 生「(ため息で返す)」                   ←(C)
隆  「母さん、お茶(と椅子に座る)」             ←(D)
三枝子「(お茶を入れながら)そこにあるでしょ。早く起きないか  ←(D)
  ら冷めちゃうのよ。はい、トオルちゃん、熱いお茶ね」
弥 生「(冷蔵庫を開けて中をあさっている)ねえ、私のオレンジ  ←(D)
  ジュースは?」
三枝子「知らないわよ。あんた自分で飲んだんじゃないの」
弥 生「ゲ……悔しいけど言い返えせない(冷蔵庫を閉める)」   ←(D)
トオル「ハハッ(と笑う)」
弥 生「何よ。言いたいことあるんだったら言いなさいよ」
隆  「まあまあ……」
三枝子「いいのよ、何も言わなくても。どうせ弥生の頭ん中はまだ
  アルコールが充満してんだから」
弥 生「かなり当たってる。今夜も合コンだっていうのに」
三枝子「トオルちゃんは、今日は塾の日だったわね」
弥 生「アー、私夜まで生きてられるだろか」
トオル「大丈夫だよ。お姉ちゃん、タフだから」
弥 生「黙れ、モヤシ(トオルの頭を新聞で叩く)」        ←(D)
トオル「痛ァ……ママ」
三枝子「弥生ッ」
弥 生「はいはい、悪者はさっさと消えます。私の味方はお父様だ
  け、ねえ、パパァ~ン」
隆  「ダメだぞ、父さんだって今月はピンチなんだから」
弥 生「いいじゃない、んなこと言わないで。諭吉ッちゃん、一枚
  でいいから……(ポンと手を合わせて)お願い印」       ←(D)
隆  「仕方ないなァ」
弥 生「イケてる、お父様!」
三枝子「知りませんよ、私は」
トオル「いいな、お姉ちゃん」
弥 生「行こ行こ、気が変わらないうちにお財布の所へ、ささ(と
  立たせて)どうぞ」                     ←(D)
三枝子「甘いんだから」
隆  「いいじゃないか(と弥生と行く)」            ←(B)
三枝子「あなたには、ママがあげるわよ」
トオル「ラッキー」
三枝子「ほらァ、またご飯粒つけて」               ←(G)
トオル「ありがとう、ママ」



*---------《テレビ脚本》---------*
○ 佐山家・リビングルーム(朝)
  三枝子が家族の朝食を支度している。トオルは既にテーブルで  ←(A)
  食べている。
三枝子「その漬け物、どう?」
トオル「(食べながら)おいしいよ。ママが漬けたの?」
三枝子「だといいんだけどね。お隣のご主人、出張のお土産なの」
隆  「(あくび混じり)おはよう(と来る)」
トオル「おはよう、パパ」
弥 生「アー、頭イタ(と来る)」
トオル「おはよう、お姉ちゃん」
弥 生「(ため息で返す)」
隆  「母さん、お茶(と椅子に座る)」
三枝子「(お茶を入れながら)そこにあるでしょ。早く起きないか
  ら冷めちゃうのよ。はい、トオルちゃん、熱いお茶ね」
弥 生「(冷蔵庫を開けて中をあさっている)ねえ、私のオレンジ
  ジュースは?」
三枝子「知らないわよ。あんた自分で飲んだんじゃないの」
弥 生「ゲ……悔しいけど言い返えせない(冷蔵庫を閉める)」
トオル「ハハッ(と笑う)」
弥 生「何よ。言いたいことあるんだったら言いなさいよ」
隆  「まあまあ……」
三枝子「いいのよ、何も言わなくても。どうせ弥生の頭ん中はまだ
  アルコールが充満してんだから」
弥 生「かなり当たってる。今夜も合コンだっていうのに」
三枝子「トオルちゃんは、今日は塾の日だったわね」
弥 生「アー、私夜まで生きてられるだろか」
トオル「大丈夫だよ。お姉ちゃん、タフだから」
弥 生「黙れ、モヤシ(トオルの頭を新聞で叩く)」
トオル「(痛がっている)ママ」                 ←(E)
三枝子「弥生ッ」
弥 生「はいはい、悪者はさっさと消えます。私の味方はお父様だ
  け、ねえ、パパァ~ン」
隆  「ダメだぞ、父さんだって今月はピンチなんだから」
弥 生「いいじゃない、んなこと言わないで。諭吉ッちゃん、一枚
  でいいから……(ポンと手を合わせて)お願い印」
隆  「仕方ないなァ」
弥 生「イケてる、お父様!」
三枝子「知りませんよ、私は」
トオル「いいな、お姉ちゃん」
弥 生「行こ行こ、気が変わらないうちにお財布の所へ、ささ(と
  立たせて)どうぞ」
三枝子「甘いんだから」
隆  「いいじゃないか(と弥生と行く)」
三枝子「(トオルを見て)あなたには、ママがあげるわよ」     ←(F)
トオル「ラッキー」
三枝子「ほらァ、またご飯粒つけて(トオルの口の横についたご飯
  粒を取って食べる)」                    ←(G)
トオル「ありがとう、ママ」



*--------《ポイント解説》--------*
(A) シーン転換の入りですが、ラジオでは場面に沿ったSE(音)を用意して
  イメージを先行させます。テレビがついている→今日の天気を伝えている
  →「おはよう」の挨拶がある→『家で朝の様子』を作ります。
  テレビでは、視覚的に「そこがどこか分かる」のでテレビの天気予報は重
  要ではありません。代わりに、その場の状況を記すト書きになります。
(B) ラジオ脚本なのにト書きで「と来る」「行く」があります。マイクに近づ
  き(離れ)ながら台詞を発すると「近づく(遠ざかる)状態」を表現でき
  るので、このように書くときがあります。
(C) ため息も台詞のうちです。「ハァ」「アァ」と書いてもいいでしょうが、
  言葉にならないほどの状態を伝える意味で「ため息」としました。
(D) 「椅子に座る」「お茶を入れる」「冷蔵庫の開閉」「新聞で叩く」……は
  すべて音が発生する動作で、何をしているかイメージできる範囲です。も
  ちろん冷蔵庫の中をあさる音(ビンなどの接触)や「私のオレンジジュー
  スは」で一層冷蔵庫をイメージさせます。また新聞で叩く音も、それだけ
  では「パン」「パシッ」となり何か分かりませんが、「痛ァ」と受けるこ
  とで、何で叩いたかは別にして「叩かれた瞬間」を表現しています。
(E) テレビでは台詞でなく動作で表現できます。「見せる」ことにも意識をお
  いて進行させるます。逆にラジオでは「一瞬の痛み」は音で表現できませ
  ん。したがって台詞で「痛ァ」としています。
(F) 三枝子がトオルを見ることで「お互いの意識が高まる瞬間」を、ドラマと
  して見せています。「ここは(トオルを)見る」タイミングなので、それ
  を明確に示したト書きです。
(G) 「ご飯粒を取って食べる」仕草でマザコンぶりを表現しました。ラジオで
  は音で表現できませんが、テレビだと表現の範囲が『視覚要素』にも広が
  るのを心得てください。


                             《つづく》


*================================*
脚本「テレビとラジオの違い」(2007年12月2日)
『ノイズの中のトオル』について(2007年12月5日)
『ノイズの中のトオル』前回までの脚本と解説

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