3Dに代わる映画興行の新たな希望。映画「貞子 3D 2」(スマ4D) | 忍之閻魔帳

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▼3Dに代わる映画興行の新たな希望。映画「貞子 3D 2」(スマ4D)

Jホラーの生んだ名物キャラクター・貞子が人々を震え上がらせていたのも今は昔。
始球式には登場するわ、写真集は出すわ、握手会は開くわ、
今や貞子はホラーの枠から飛び出してネタ系ニュース界のトップアイドルと化している。
前作「貞子 3D」でも、「漂流教室」に登場した未来人間風になったり
大増殖をしたりと、ネタ系アイドルの面目躍如で
やりたい放題(by 斉藤満喜子)の大活躍であったが
続く本作では製作スタッフまでが一丸となって映画業界の常識を破壊しにかかった。

それは、

『スマホの電源を入れ、音量も最大にしたまま持ちながら鑑賞する』

上映前のマナーCMで注意される事柄の中でも
とくに周囲への不快指数が高い携帯(スマホ)をフル活用しようというのである。
3D映画をさらに進化させる「+1」として匂いを掲げたのは「スパイキッズ4D」だが
場面に応じてスクラッチをこするというクラシカルな操作は
新時代どころか侘しさすら感じさせ、お世辞にも成功とは言い難かった。
「貞子 3D 2」は、従来の鑑賞スタイルそのものを見直し
スマホを使って劇場を体験型アトラクションの空間に変えようというわけだ。
私も初めてニュースを聞いた時は耳を疑った。
いくらなんでも悪ノリが過ぎると思った。
映画を殺す気かと憤慨もした。
しかし、しかし、「貞子 3D 2」は予想以上に楽しかった。
ディズニーランドやユニバーサルスタジオといった
テーマパークでしか味わえない昂揚感を劇場で体感することが出来た。

今後ホラーやキッズ向けを中心に、このスタイルを導入する映画が増えるだろう。
海外にまで波及するかはまだ分からないが
インパクトの薄れかかっている3D映画に取って代わる可能性すらある。
断言する。
映画「貞子 3D 2」は、スマ4D版で観なければ意味がない。
何故なら、ストーリーはどうでも良いからだ。



どうでも良いと言いながら一応ストーリーを説明すると
激しい闘いの末に貞子を腹の中に封じ込めた茜(石原さとみ)は
昏睡状態に陥るが、同時期にひとりの娘を身籠っていた。
数年後、生まれた娘・凪(平澤宏々路)は孝則(瀬戸康史)と
妹・楓子(瀧本美織)の元で暮らしていたが
凪の周りでは常に不吉な怪死事件が続いていた。
この子は本当に兄の子なのだろうかと不審に思った楓子は真実を追い始める。

ストーリーとしては「呪怨2」のその後とでも言うべきだろうか。
「呪怨2」でも、やはり主人公(酒井法子)が身籠り
ラストで幼い伽倻子を産み落とした数年後に殺されて終わる。
設定も登場人物も全く異なるが、Jホラーを代表する2大シリーズが
本作で少しだけクロスしたようにも思えて妙に嬉しかった。

都市伝説ドタバタホラーに終始した前作と打って変わって
本作では少し哀しい物語を組み込んでおり、展開も「戦慄迷宮」や
「ラビットホラー3D」のような香り、と思って調べてみたら
脚本がその2作を手掛けた保坂大輔(と杉原憲明の連名)であった。
監督の英勉は本作を撮るにあたり「リング」の中田秀夫ではなく
「呪怨」「戦慄迷宮」の清水崇を参考にしたのではないだろうか。

タイトルは「貞子 3D 2」だが、貞子はほとんどステージ外へと追いやられ、
本作の事実上の主役は娘の凪である。
凪が貞子と同じく世間から奇異の目で見られ、不幸な死を迎えたりすれば、
母娘の両世代で報われない運命の血族という
ホラー的に美味しいファミリー育成も可能だったはずだが
本作ではそこは目指さず、怖過ぎず難し過ぎずの
「女子中高生がワーキャー言えればそれでいいホラー」を忠実に守っている。
現在の貞子のパブリックイメージと支持層を考えれば、この選択は間違っていない。
凪を演じた平澤宏々路は、懐かしの韓国ホラー
「ボイス」のウン・ソウを彷彿させる熱演ぶり。
特殊メイクを施した顔はほとんどハルクだが、それも含めて良く頑張った。

さて、またスマ4Dの話に戻そう。
スマ4D版を楽しむには、iPhone(iOS 5.0以降)かAndroid(2.3.3 以上)が必要。
鑑賞前(できれば前日)に専用の無料アプリをインストールしておき
公式HPで動作確認をしておくのが望ましい。
劇場についてからは、

・機内モードにする
・マナーモードをOFFにする
・ボリュームを最大にする

3つの動作を済ませ、あとは上映開始を待つのみ。
今回はサービスデーということもあり、ほぼ満席での鑑賞だったのだが
たったこれだけの操作でも分からないという声があちこちから聴こえていた。

A子「ねえねえ、私の携帯ってiPhone?Android?」
B子「A子の携帯は?」
A子「エクスペリア」
B子「じゃあAndroid」
A子「本当?」
B子「そんなに言われたら自信ないよ」

C子「機内モード?何それ?」
D子「私も初めて聞いた」
E子「飛行機乗る時のモードでしょ」
C子「E子、すごーい!」
D子「ねえE子、教えて!機内モードってどうするの?」
E子「知らない」

こんな会話がそこら中で交わされているのである。
しかし、この何とも言えないざわつきが、
テーマパークのホラーアトラクションに並んでいる時の感覚にも似ていて
不思議とお祭り感覚が上がってゆくのだった。

そして上映前、田口浩正が4D上映に関する説明を開始する。
この説明の仕方がまさにアトラクションの前説と同じスタイルで、気分はさらに盛り上がる。

スマホを使った遊びと言っても、せいぜい突然電話が鳴ってくる程度のものだろうと
タカを括っていた私を次々に驚かせる仕掛けが満載。
カメラも使う、フラッシュ機能も、アドレス帳も、電話も、タッチパネルも
スマホに備わった機能を片っ端から使って観客を楽しませようとする心意気には感服する。
全部書くとつまらないのでいくつか書くと、
スクリーンの中で誰かが電話をしているとする。
その場面で手元のスマホを耳にあてると、先方(話し相手)の声が聴こえてくる。
そう、懐かしのファミコンディスク「中山美穂のトキメキハイスクール」よ再び、である。
他にも突然大音量でサイレンが鳴り響いたり、事件現場をカメラで撮影したり
WiiリモコンとWii U GamePadを兼ね備えたような遊びが随所に盛り込まれている。

序盤から中盤はあまりにもスマホメインで進むため
ストーリーがさっぱり頭に入らないことなど、もうどうでも良くなるほど楽しい。
何か起こる度に場内が悲鳴と笑いで包まれる一体感は
これまでの映画館では味わえなかった楽しさ。
私の隣の女性はびっくりし過ぎて携帯を放り投げていた。
場内での携帯使用が御法度なのは、あくまでも「普通の映画」の場合。
「この作品ではOK」にしただけで、こんなにも不快感がなくなるとは思ってもみなかった。
物語の進行とリンクして端末内の感染率が上がってゆき
MAXになったラストでは一体どうなるのか、是非ご自身で体験していただきたい。

ちなみに、懸念していた電池の消費量だが
私の使用したiPhone5は上映終了時点で残り85%(バッテリー消費は15%)だった。
会場までモバイルバッテリーを持参し、上映開始直前まで100%をキープしての数字なので
充電池がへたっていたり、残量が不安な方は事前に充電しておくことをお薦めしておく。

そうそう、観賞後にすぐアプリを消すとちょっとだけ損をする。
せめて翌日までは残しておくと・・・何か良いことがあるかも。

映画のことをほとんど書かなかった気がするが、アトラクションなのだからそれでいい。
もう一度断言する。
「貞子 3D 2」は、スマ4D版を体験しないと意味が無い。
長い行列に並ぶ必要のない、入場料2000円前後のアトラクションと考えれば
充分それだけの価値がある。

観るなら絶対にスマ4D版。
いいな、約束だぞ。

映画「貞子 3D 2」は現在公開中。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:貞子3D2
    配給:角川
   公開日:2013年8月30日
    監督:英勉
   出演者:瀧本美織、瀬戸康史、平澤宏々路、他
 公式サイト:http://www.sadako3d.jp/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


おまけ。

ジェームス・ディーンみたいな女の子から数十年が経過した大沢逸美が
シュレッダーに髪の毛を吸い込まれ
連獅子の毛振りよろしく機械ごとぶんぶん振り回すシーンで大爆笑した。



全国232スクリーンで公開された本作のオープニング成績は
土日の2日間で動員11万3835人、興収1億6063万8850円。
2012年公開の「貞子 3D」はオープニングで2.5億円を稼ぎ出していたので
3割程下げていることになるが、中身は前作よりも遥かに上。
ただしスマ4D版の場合(しつこいか)




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【紹介記事】貞子は未来人間になりました。映画「貞子 3D」

貞子の生い立ちや井戸の存在にも言及し
「呪いのビデオ」に代わる素材として「呪いの動画」を用意したりと
「2」を見た後で思い返してみると、思ったよりも「リング」を意識していたのが分かる。

「フーッ」「ッハァー」と叫びながら大量の貞子が走り回るシュールさは
笑い飛ばさずにいられない荒唐無稽さ。
実写版の「赤んぼ少女」でも、悲劇の名キャラクターのタマミが
猛スピードで移動する別の生き物になっていて驚いたが
本作の貞子はあれを上回る奇天烈さである。
逃げてばかりだった石原さとみが、自身に備わったサイキック能力ではなく
ミラ・ジョヴォビッチか座頭市かというほどの剣術で
バッサバッサと貞子を斬ってゆく勇ましさは
巨大ハサミを持って襲いかかる小沢真珠に向かって
サンポールをぶちまける「エクスクロス」の鈴木あみを彷彿させる。




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