これだけは観ておきたい、2011年度公開映画総まとめ(邦画編) | 忍之閻魔帳

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DVD視聴を除いた2011年の劇場鑑賞作品を、独断と偏見により総括。
邦画は57本で、昨年より6本減。
まずは公開順に全作品を一言コメント付きで振り返ってみる。
お勧めの作品のみAmazonリンク付き。画像付きならもう一段階上。
(Blu-ray/DVDの発売が決まっていないものはタイトルが色付き)
なお、大半の作品は過去ログにて個別で紹介しているので
サイドバーの過去ログ検索でタイトルを放り込んでいただけると
該当記事が引き当たるはず。



【2011年1月公開作品】

・僕と妻の1778の物語
 SF作家の眉村卓氏が、2002年に大腸癌で亡くなられた妻の悦子氏のために
 1日1本のコメディを書き続けたエピソードの映画化。主演は草なぎ剛と竹内結子。 

・犬とあなたの物語 いぬのえいが
 犬を題材にしたオムニバス第2弾。
 どのエピソードもバラエティ番組の1コーナーのようで質は低い。

・嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん
 設定が無茶苦茶過ぎて染谷将太の努力も水の泡。
 ラノベ原作はいつもこんな仕上がり。

・ハイブリッド刑事(デカ)
 史上初、無料公開の劇場作品。
 スポンサーであるトヨタを連呼する鷹の爪団の潔さに笑った。


・冷たい熱帯魚
 「愛のむきだし」以降、演出法がきっちり固まった園子温監督の新作。
 金の為なら人殺しも厭わない、コミカルで残虐なでんでんの怪演が見物。

・GANTZ
 人気コミックの実写映画化。原作をなぞってはいるが、本当にそれだけ。
 テレビドラマではいけない理由が皆無。

・白夜行
 ドラマ版とは違ったアプローチで見せるもうひとつの「白夜行」。
 高良健吾が達者なのは予想していたが、それ以上に堀北真希が頑張っている。



【2011年2月公開作品】

・毎日かあさん
 西原夫妻の生活を綴ったドラマだが、コミックより湿度が高く楽しめず。
 子どもの悪戯は限度を超え、親の責任放棄も目に余る。

・ジーン・ワルツ
 不妊治療と代理出産をテーマにした医療ドラマ。
 雷鳴轟く闇の向こうから浅丘ルリ子が登場するシーンはほとんどホラーコメディ。


・洋菓子店コアンドル
 彼氏を追って上京した娘がパティシエとして成長する物語。
 鼻っ柱の強い主人公を蒼井優が魅力的なキャラクターに仕上げている。
 
・太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男
 脚本も竹野内豊も作り込み不足のため、主人公の言動がちぐはぐで統率力に欠ける。
 日米合作とは名ばかりの完全な分業制で双方の視点が交差しないのも難。



【2011年3月公開作品】

・わさお
 わさおに振り回されたらしき爪痕が作品のそこかしこに見え隠れ。
 名物犬でひと儲けしようと企む人間を、わさおが嘲笑っているような作品。

・ランウェイ☆ビート
 ファッションを題材にした青春映画。
 ・・・のはずが、出演者にそれほどファッションセンスがあるように見えず。

・漫才ギャング
 少年マンガ風のカット割とベタな泣かせ展開は「ドロップ」を踏襲。
 興行的に成功したからか、松本人志のような迷走は見られず、妙な安定感はある。 

・攻殻機動隊 S.A.C. SOLID STATE SOCIETY 3D
 旧作に3Dの化粧を施してリニューアル。
 見映えが良いのは冒頭ぐらいで、3Dの恩恵は少なめ。



【2011年4月公開作品】


・婚前特急
 タカビーを気取っていた女が格下に見ていた男に振り回されるコメディ。
 安い扱いを受け仰天している吉高由里子が実に可愛い。

・クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ黄金のスパイ大作戦
 数分刻みで笑いを用意する「M-1」スタイルで子どもの注意力低下を阻止。
 大人だけが気付く名作のパロディもあり、親子で楽しめる。


・まほろ駅前多田便利軒
 架空の町「まほろ市」の日常を描いた瑛太・松田龍平によるドラマ。
 脚本の弱さを主演の二人でカバーする役者主導の作品。続編に期待したい。


・八日目の蝉
 角田光代のベストセラーを「孤高のメス」の成島出監督が映画化。
 2010年の「悪人」を彷彿させる濃密なドラマで、永作博美、井上真央の両名が素晴らしい。

・阪急電車 片道15分の奇跡
 ローカール線を舞台にしたオムニバスドラマ。
 ご当地映画らしく背景こそが主役で物語は弱め。悪くはないが引きも弱い佳作。

・これでいいのだ!! 映画★赤塚不二夫
 全編に渡ってすべりまくる寒いギャグ演出のせいで
 浅野忠信演じる赤塚が出川哲朗に見えてくる哀しさ。



【2011年5月公開作品】

・岳 ガク
 同名人気コミックを、コミックの実写化では常連の小栗旬主演で映画化。
 「海猿」の抜けた後を狙ってシリーズ化への欲もチラホラ。市毛良枝が良い。

・星を追う子ども
 新海誠監督の新作はジブリの欠片を寄せ集めたような既視感満載の作品。
 無理はせず「秒速5センチメートル」のような小作品に戻って欲しい。

・キミとボク
 猫との共同生活を淡々と描いた癒し系作品。
 坂本真綾の猫台詞は可愛いが、生き死にまで手軽に描いてはイカン。


・富江 アンリミテッド
 井口昇監督の持ち味であるエロ&グロ&ギャクが伊藤潤二の作風とマッチし
 怖くて笑える快作に仕上がった。きちんと怖がりたいホラーファンには不向き。


・マイ・バック・ページ
 ひとりのジャーナリストと活動家が立場を越えて響き合う人間ドラマ。
 青臭い妻夫木聡と未熟な松山ケンイチはどちらもハマり役。情報量は多いが良作。

・プリンセス トヨトミ
 万城目学の原作を堤真一、綾瀬はるか、岡田将生らで映画化。
 キャストを豪華にしてなんとなく映画っぽさを出すフジのお家芸炸裂。



【2011年6月公開作品】

・もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
 浅田美代子の歌に匹敵するほどの破壊力を持つ前田敦子の大根芝居が強烈。
 話も無茶苦茶で、本当にこんな本が何百万も売れたとは信じ難い。


・奇跡
 離ればなれになった兄弟が奇跡を起こすために旅に出るドラマ。
 正直まえだまえだは苦手だったが、是枝監督の腕によって等身大の魅力を開花させている。

・さや侍
 映画作りの文法に則って作られた、割と真面目な時代劇。
 捨て切れない遊びと親の欲目が邪魔をしたのか、まとまりは悪く今一歩。

・デンデラ
 日本を代表する大女優達が、吹雪の中で人喰い熊との死闘を繰り広げる
 なんだか良くわからないが壮絶なドラマ。2011年の怪作No.1かも知れない。

・アンダルシア 女神の報復
 穴だらけの脚本と黒木メイサの安っぽさと色気のない織田裕二で
 洋画のような作品を目指したところで討ち死には当然。



【2011年7月公開作品】


・コクリコ坂から
 往年の少女マンガが持っているベタを時代の香りに置き換え、瑞々しく再生。
 大人だけが楽しめるジブリに着手した宮崎吾朗監督の次回作に期待。


・大鹿村騒動記
 原田芳雄の遺作ということを差し引いても、阪本順治監督のテイストが色濃く出た
 「THE・日本映画」な1本。ちょい役に至るまで全員が良い仕事をしている。
 


【2011年8月公開作品】

・七つまでは神のうち
 古い言い伝えと神隠しを題材にしたホラー。
 タイトルは良いのにVシネレベルの脚本でがっかり。日南響子は可愛かった。

・うさぎドロップ
 同名コミック(アニメ)を松山ケンイチと芦田愛菜によって実写映画化。
 香里奈がケバ過ぎるのと、ファンタジックな演出が邪魔。SABUには不向きだったのでは。

・神様のカルテ
 保険会社のCMを務める二人が共演した医療ドラマ。
 加賀まりこ演じる老婦人が作品をぐっと引き締めている。

・一枚のハガキ
 現役最高齢、99歳の新藤兼人監督が引退作と銘打った戦争ドラマ。
 起こっていることは悲劇そのものだが、希望に満ちたラストで救われる。



【2011年9月公開作品】

・監督失格
 惚れ抜いた女の想い出にひと区切りつけるため、監督自らの手で編集した男泣き映画。
 女々しくてどうしようもない男だが、同性として共感できる部分も多い。


・モテキ
 連ドラ版の後日談を原作者自らが書き下ろした劇場版。
 長澤まさみが最高にキュートで、森山未來とPerfumeのダンスも華麗。PV映画の上級。

・ラビット・ホラー 3D
 清水崇の新作ホラー。予告編では完全に「呪怨」の後釜を狙っていたが
 サイコスリラーに近い。殻から脱したい監督と配給会社の思惑にズレがある。


・探偵はBARにいる
 主演の大泉洋がドンピシャのハマり役で、松田龍平とのコンビも抜群な刑事ドラマの秀作。
 カルメン・マキの「時計をとめて」は、2011年度映画主題歌No.1だと思う。

・僕たちは世界を変えることができない。
 平和ボケした大学生が「何となく」カンボジアに学校を建てることを思いつき
 現実を目の当たりにして心が折れそうになりつつ、強くなってゆく物語。掘り出し物。



【2011年10月公開作品】

・天国からのエール
 沖縄の田舎町に音楽スタジオを作った男性の実話をベースにした青春映画。
 病状の進行が唐突で、バンドの成長とどちらを主題にするか迷った形跡あり。

・DOG×POLICE 純白の絆
 「サイボーグ009」ばりの加速装置を備えていそうな戸田恵梨香の俊足ぶりと
 起爆装置もわからないまま時限爆弾を抱えて走り出す市原隼人に大笑い。

映画 エンディング・ノート
・エンディングノート
 定年を迎えて第二の人生を始める矢先に癌を発症した父親が、亡くなるまでの準備を
 自らの手で進める姿を追ったドキュメンタリー。娘の初監督作品。温かい映画。

映画 電人ザボーガー
・電人ザボーガー
 往年の特撮ヒーローを、井口昇監督が永井豪や島本和彦も真っ青な熱血魂で映画化。
 中年期を演じる板尾よりも、青年期を演じた古原靖久の健闘が光る。

映画 ステキな金縛り
・ステキな金縛り
 三谷幸喜らしい贅沢で安心して楽しめる喜劇。従来の作品に比べて展開が散漫な上に
 深津絵里、西田敏行、阿部寛、中井貴一の主要4人に頼りきった感あり。

・スマグラー おまえの未来を運べ
 「キル・ビル」のアニメパートをそのまま実写でやったようなセンスは買うが
 背骨(安藤政信)以外のキレキャラに魅力を感じないのは、役者の力量不足か。

・東京オアシス
 意味も無く夜の東京をぶらぶらして朝を迎えるだけの映画。
 かつてのスローライフムービーは、ついに「何もない映画」にまで堕ちてしまった。



【2011年11月公開作品】

・カイジ2 人生奪回ゲーム
 前作よりもスケールダウンしてバカバカしさがアップ。
 「クズの皆様」とは劇中の人物ではなく製作陣のことのように思えて仕方がない。

・恋の罪
 「冷たい熱帯魚」に続いて2011年2本目の園子温作品。
 詩的な台詞遊びとこってりした演出は健在だが、全体的に饒舌なのが惜しい。

・アントキノイノチ
 携帯小説かラノベかという急展開で観客が置きざりな、さだまさし原作の映画。
 どこかで聞いたような話がよくあるパターンで幕。凡庸。

映画 指輪をはめたい
・指輪をはめたい
 「モテキ」の変形版とも言うべきコメディタッチの恋愛映画。ラストは意外にもホロリ。
 記憶喪失の青年を演じる山田孝之が好演しているが、何と言っても二階堂ふみが良い。

映画 ナニワ・サリバン・ショー
・忌野清志郎 ナニワ・サリバン・ショー 感度サイコー!!!
 忌野清志郎が企画した伝説のライブを、参加者達の撮り下ろし映像を加えて編集した
 音楽ドキュメンタリー風の回想録。全員が清志郎を愛していたのだと良くわかる。泣。



【2011年12月公開作品】

映画 RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ
・RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ
 仕事一筋で還暦を迎えた運転士が、長年連れ添った妻との諍いをきっかけに
 人生を見つめ直し、夫婦の形を見つめ直すヒューマンドラマ。三浦友和が絶品。

・ワイルド 7
 派手な舞台装置でストーリーの稚拙さを誤魔化した「海猿」と同じ方式のアクション映画。
 序章といった作りなので続編がありそうな気もするが、止めた方が良いような気が。



これだけは観ておきたい、2011年度公開の邦画10本
(*並びは公開順であって、優劣を示すものではない)

・「冷たい熱帯魚」
・「八日目の蝉」
・「マイ・バック・ページ」
・「奇跡」
・「大鹿村騒動記」
・「探偵はBARにいる」
・「エンディング・ノート」
・「指輪をはめたい」
・「忌野清志郎 ナニワ・サリバン・ショー 感度サイコー!!!」
・「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」




ここからは各賞をオスカースタイルで紹介。



作品賞

・「奇跡」
・「八日目の蝉」
・「探偵はBARにいる」
・「エンディング・ノート」
・「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」 

「ソラニン」「春との旅」「パーマネント野ばら」「告白」「悪人」が揃った
2010年に比べると全体的に小粒だった印象が強く、抜きん出た作品も無かったように思う。
上記の5本は、ほとんど横一線。

主演男優賞
 大泉洋「探偵はBARにいる」
 妻夫木聡「マイ・バック・ページ」「スマグラー」
 三浦友和「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」
 山田孝之「指輪をはめたい」
 原田芳雄「大鹿村騒動記」

主演女優賞
 蒼井優「洋菓子店コアンドル」
 吉高由里子「婚前特急」
 井上真央「八日目の蝉」
 永作博美「八日目の蝉」

 大竹しのぶ「一枚のハガキ」

助演男優賞
 でんでん「冷たい熱帯魚」
 松田龍平「まほろ駅前多田便利軒」「探偵はBARにいる」
 佐藤浩市「大鹿村騒動記」
 安藤政信「スマグラー」
 中井貴一「ステキな金縛り」「ワイルド7」「プリンセス・トヨトミ」

助演女優賞
 神楽坂恵「恋の罪」「冷たい熱帯魚」
 加賀まりこ「神様のカルテ」「洋菓子店コアンドル」
 大楠道代「大鹿村騒動記」
 二階堂ふみ「指輪をはめたい」
 余貴美子「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」「八日目の蝉」

特別賞
 「デンデラ」の方々。浅丘ルリ子、倍賞美津子、山本陽子、草笛光子、
 山口果林、白川和子、山口美也子、角替和枝、田根楽子、赤座美代子

新人賞
 二階堂ふみ「指輪をはめたい」

監督賞
 園子温「冷たい熱帯魚」「恋の罪」
 井口昇「富江アンリミテッド」「電人ザボーガー」
 成島出「八日目の蝉」「聯合艦隊司令長官 山本五十六 太平洋戦争70年目の真実」
 橋本一「探偵はBARにいる」
 岩田ユキ「指輪をはめたい」

脚本賞
 園子温「冷たい熱帯魚」「恋の罪」
 是枝裕和「奇跡」
 高田亮/前田弘二「婚前特急」
 奥寺佐渡子「八日目の蝉」
 小林弘利 /ブラジリィー・アン・山田「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」



これだけは観なくて良かったかも知れない、2011年度公開の邦画5本

・わさお
・これでいいのだ!! 映画★赤塚不二夫
・もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
・DOG×POLICE 純白の絆
・東京オアシス