煽り過ぎてズコー。映画「パラノーマル・アクティビティ」 | 忍之閻魔帳

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パラノーマル・アクティビティ
(C)2009 Oren Peli d.b.a. Solana Films.

「全米が泣いた」

「10年に1本の傑作」

「本年度オスカー最有力」

洋画のコピーにしばしば登場するこの手の煽り文句には、
観客の期待を膨らませ過ぎてしまう効果がある。
30点の期待で観に行った映画が60点の出来映えなら30点分「得した」と思うが、
120点の期待で観に行った映画が60点の出来映えだと60点分の「大損」となってしまう。
かように人の期待というものは、煽り過ぎると良くないのである。
今回は、「パラノーマル・アクティビティ」を紹介しよう。



低予算が当たり前のインディペンデント系の作品の中でも、
ほとんど同人レベルの規模で製作された本作が
北米だけで1億ドルを超える興行収入を得たことは奇跡だ。
しかしこの奇跡は、

「無名の新人監督が、たったの135万円で作った映画が意外に面白かった」

という、ノンブランド作品ならではの”ご祝儀”がベースになっていることは間違いなく、
メジャー作品をも上回るほどの面白さがあるかと言われると、正直苦しい。
予告編で流れるような「これ以上の映画を作ることはできない」
「前代未聞の映画体験 まもなく解禁」は、いくら広告でも煽り過ぎである。

恋人にまとわり憑く悪霊の正体を見極めるため、
毎晩定点カメラを設置して謎の解明に挑もうとする男性の姿と、
心霊現象に怯え、徐々に平常心を失ってゆく女性の姿を捉えた
ドキュメンタリービデオ風の展開だが、劇中で起こる心霊現象は
足音が聴こえたり、ドアがひとりでに開いたり、
シーツがゆっくりと盛り上がったりと、どれも他愛のないものばかり。

これが現実で起こっていることなら、充分怖いと思う。
例えば同じ現象が深夜、私の寝室で起こったら確実にチビるだろう。
しかし、映画の中で起こる心霊現象としては、あまりにも刺激が無さ過ぎる。
少ない予算の中で、いかにして観客を驚かせるかというアイディアは
いくつも詰め込まれていて、なるほどと感心する箇所もあるのだが、
全体を通しては、残念ながらまだ映画未満の出来と言わざるを得ない。

「SAW / ソウ」の監督であるジェームズ・ワンは、「SAW / ソウ」を撮る前に
8分ほどのパイロットDVDを作り、あちこちの映画会社に売り込んでいた。
この売り込み作戦が見事に成功し、映画会社と契約、
パイロット版のエピソードを膨らませて完成したのが「SAW / ソウ」である。
「呪怨」の清水崇監督も、「呪怨」の原型とも言える小作品を
「学校の階段G」の中で披露していた。(「片隅」「4444444444」
「パラノーマル・アクティビティ」の面白さは、
上記の作品と同じ原石としての面白さであり、それ以上のものではない。
せっかくドリームワークスが名乗りを上げたのであれば、
そのまま劇場公開にはせず、監督のアイディアを最大限膨らませるための
お膳立てをして、きっちりリメイクした方が良かったのではないか。

というわけで、オーレン・ペリ監督の次回作に期待。
観に行く予定の方は、あまり過度の期待はしないように。
期待し過ぎなければ、そこそこ楽しめる。

ちなみに、オーレン・ペリはゲームクリエーターでもあるらしい。
過去にどんな作品を作っていたのかは不明。
ホラーゲームならば、ちょっと遊んでみたい。

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  タイトル:パラノーマル・アクティビティ
    配給:プレシディオ
   公開日:2010年1月30日
    監督:オーレン・ペリ
    声優:ケイティー・フェザーストン、ミカ・スロート、他
 公式サイト:http://www.paranormal-activity.jp/
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