煽り過ぎてズコー。映画「パラノーマル・アクティビティ」 | 忍之閻魔帳

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「全米が泣いた」

「10年に1本の傑作」

「本年度オスカー最有力」

洋画のコピーにしばしば登場するこの手の煽り文句には、
観客の期待を膨らませ過ぎてしまう効果がある。
30点の期待で観に行った映画が60点の出来映えなら30点分「得した」と思うが、
120点の期待で観に行った映画が60点の出来映えだと60点分の「大損」となってしまう。
かように人の期待というものは、煽り過ぎると良くないのである。
今回は、「パラノーマル・アクティビティ」を紹介しよう。



低予算が当たり前のインディペンデント系の作品の中でも、
ほとんど同人レベルの規模で製作された本作が
北米だけで1億ドルを超える興行収入を得たことは奇跡だ。
しかしこの奇跡は、

「無名の新人監督が、たったの135万円で作った映画が意外に面白かった」

という、ノンブランド作品ならではの”ご祝儀”がベースになっていることは間違いなく、
メジャー作品をも上回るほどの面白さがあるかと言われると、正直苦しい。
予告編で流れるような「これ以上の映画を作ることはできない」
「前代未聞の映画体験 まもなく解禁」は、いくら広告でも煽り過ぎである。

恋人にまとわり憑く悪霊の正体を見極めるため、
毎晩定点カメラを設置して謎の解明に挑もうとする男性の姿と、
心霊現象に怯え、徐々に平常心を失ってゆく女性の姿を捉えた
ドキュメンタリービデオ風の展開だが、劇中で起こる心霊現象は
足音が聴こえたり、ドアがひとりでに開いたり、
シーツがゆっくりと盛り上がったりと、どれも他愛のないものばかり。

これが現実で起こっていることなら、充分怖いと思う。
例えば同じ現象が深夜、私の寝室で起こったら確実にチビるだろう。
しかし、映画の中で起こる心霊現象としては、あまりにも刺激が無さ過ぎる。
少ない予算の中で、いかにして観客を驚かせるかというアイディアは
いくつも詰め込まれていて、なるほどと感心する箇所もあるのだが、
全体を通しては、残念ながらまだ映画未満の出来と言わざるを得ない。

「SAW / ソウ」の監督であるジェームズ・ワンは、「SAW / ソウ」を撮る前に
8分ほどのパイロットDVDを作り、あちこちの映画会社に売り込んでいた。
この売り込み作戦が見事に成功し、映画会社と契約、
パイロット版のエピソードを膨らませて完成したのが「SAW / ソウ」である。
「呪怨」の清水崇監督も、「呪怨」の原型とも言える小作品を
「学校の階段G」の中で披露していた。(「片隅」「4444444444」
「パラノーマル・アクティビティ」の面白さは、
上記の作品と同じ原石としての面白さであり、それ以上のものではない。
せっかくドリームワークスが名乗りを上げたのであれば、
そのまま劇場公開にはせず、監督のアイディアを最大限膨らませるための
お膳立てをして、きっちりリメイクした方が良かったのではないか。

というわけで、オーレン・ペリ監督の次回作に期待。
観に行く予定の方は、あまり過度の期待はしないように。
期待し過ぎなければ、そこそこ楽しめる。

ちなみに、オーレン・ペリはゲームクリエーターでもあるらしい。
過去にどんな作品を作っていたのかは不明。
ホラーゲームならば、ちょっと遊んでみたい。

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  タイトル:パラノーマル・アクティビティ
    配給:プレシディオ
   公開日:2010年1月30日
    監督:オーレン・ペリ
    声優:ケイティー・フェザーストン、ミカ・スロート、他
 公式サイト:http://www.paranormal-activity.jp/
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