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08月07日発売■DVD:「呪怨 白い老女」
09月21日発売■DVD:「呪怨 黒い少女」
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」旋風が全国の劇場を席巻する中、
ビデオ版、劇場版、ハリウッド版を全てリアルタイムで見ている私は
あえてこちらを取り上げたい。
かつては「リング」フォロワーの筆頭であった「呪怨」も、
ハリウッド版の大ヒットによって今やジャパニーズホラーの最高峰である。
今回の「呪怨 白い老女 / 黒い少女」は、シリーズ開始10周年のお祭り企画で、
「呪怨」という題材を使った若手監督二人の競作として製作された。
新たな血を迎え入れた「呪怨」がどう変化したのか。
「白い老女」は「怪談新耳袋 劇場版」「ほんとにあった怖い話」の三宅隆太監督、
「黒い少女」は「トワイライトシンドローム デッドゴーランド」の安里麻里監督が担当。
これまで脚本・監督を務めて来た清水崇監督は原案・監修に止まり、
シリーズを通して描かれて来た佐伯家のエピソードも登場しない。
この世に強い怨念を残して死んだ者の呪いが、その場を訪れた人間達に
次々に伝染していくという「呪怨」の基本コンセプトだけを残し、
ストーリーはどちらもオリジナル。
ハリウッドにまでその名を轟かせた伽倻子を封印する思い切りの良さと、
2作立てによるテンポの良さが功を奏し、予想以上に楽しめた。
「呪怨」という作品は素材としてもいじり甲斐があるようで、
それぞれの監督の持ち味を吸収しつつ、「呪怨」らしさも失われない仕上がり。
本筋に位置する「呪怨」の新作ではなく、「呪怨アンソロジー」なのである。
1本目の「白い老女」は、三宅監督が手掛けている「怪談新耳袋」シリーズを
「呪怨」のシステムにはめ込んだような作り。
本家の「呪怨」と同じく時間軸をバラバラにしたオムニバス形式になってはいるが、
エピソードの数が本家よりも遥かに多く、その分、1話あたりはかなり短い。
この辺のテクニックは、5分前後のショートストーリーで構成された
「怪談新耳袋」シリーズで培われたものであろう。
シナリオの練り込み不足は気になるものの、物量作戦かと思うほどの小ネタの嵐と
やたらと笑える「バスケ婆さん」(命名:私)の存在は、
いかにもB級ホラーらしくて私好み。ゲラゲラ笑いながら観た。
ちなみにこの「バスケ婆さん」、「怪談新耳袋 劇場版」に収録された
「姿見」というエピソードの中でも登場する。
YouTubeに動画があったので紹介。(ホラーが苦手な方、心臓の弱い方は注意)
「白い老女」は、「姿見」に出てくるバスケ婆さんの誕生秘話ということなのだろう。
この時点で、「呪怨」ファンならば「あっ」と気付くに違いない。
そう、清水監督もかつて、オムニバスホラー「学校の階段 G」に収録された
「片隅」「4444444444」という2編で「呪怨」の俊雄君と伽倻子を登場させている。
三宅監督は「呪怨」の基本コンセプトだけでなく、誕生の過程まで踏襲しているのだ。
これにはやられた。座布団を差し上げたい。
「黒い少女」は、サブカルホラー的な面白さを持った「白い老女」から一転し、
至極まっとうなエクソシスト系でまとめて来た。
生い立ちや理由付け、主人公の家族構成や周辺の人間家系までが
しっかり準備されているので、「白い老女」よりも物語性は強く
ホラー映画としての完成度はこちらが上。
気になる点は、名前が大きい割に加護亜依の存在感が薄過ぎることぐらいか。
「渋谷怪談」や「こわい童謡」など、映画1本分の面白さもない作品を
敢えて2本に分け、順次公開するようなセコいホラー映画が多い中、
2本立てを1本分の鑑賞料金で観せてくれる東映ビデオの太っ腹に感謝したい。
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07月30日発売■Wii:「恐怖体感 呪怨」
7月末にWiiで発売予定のゲーム版。
清水監督が監修として参加しているので、恐さには期待が持てるのでは。
私はもちろん購入予定。
■DVD:「呪怨 パンデミック ディレクターズカット」
ハリウッド進出第2弾。
今のところ、この「パンデミック」が清水監督の手掛ける「呪怨」の最新作。
劇場公開時にブログパーツを貼った時にはクレームが何件も寄せられた。
今や懐かしい存在となったエディソン・チャンも出演している。
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タイトル:呪怨 白い老女 / 黒い少女
配給:東映ビデオ
公開日:2009年6月27日
監督:三宅隆太監督 / 安里麻里
キャスト:南明奈、加護亜依、瀬戸康史、中村ゆり、他
公式サイト:http://www.juon2009.jp/
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