「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」DVD化決定、他 | 忍之閻魔帳

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■BD:「硫黄島からの手紙 Blu-ray」
■BD:「父親たちの星条旗 Blu-ray」

クリント・イーストウッドの魂が込められた傑作
「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」の2作が
早くもDVD化されることとなった。
1945年、小笠原諸島の硫黄島で繰り広げられた壮絶な戦いを、
アメリカ側(父親たちの星条旗)と日本側(硫黄島からの手紙)の
2つの視点から描いている。

日本では「硫黄島からの手紙」ばかりが話題になり、
興行収入、評価ともに「父親たちの星条旗」とは
かなりの差が出来てしまっているようだが、
この2作は言ってみればコインの表と裏。
どちらか片方だけを観てもあまり意味がないように思う。

「父親たちの星条旗」は、硫黄島の戦いにおいて
アメリカ側の勝利を印象づけた1枚の写真の裏に隠された
「勝者の憂鬱」をテーマにした作品。
戦争を続けるため金策に走る国家に操られ、
集金マシーンとして「勝者」の看板を背負わされる
兵士達の苦悩が淡々と描かれている。
アイスクリームにかけられたストロベリーソースの「赤」に
今なお戦地で戦い続ける仲間達のことを思い、
祝勝パレードで打ち上げられる花火に
銃声や戦闘機の爆音をオーバーラップさせる彼等が
少しずつ病んでいき、辿り着いた先は・・・

「硫黄島からの手紙」は、圧倒的な劣勢でありながら
1ヶ月以上も硫黄島を守り続けた
栗林中将率いる日本軍の姿を克明に描いた作品。
アメリカ国内のシーンも多い「父親達の星条旗」は
建物も衣服も色彩豊かだが、
「硫黄島からの手紙」では、人々の流す血の「赤」と
立ち上る炎の「オレンジ」以外は色というものがほとんど存在しない。
それだけに、「赤」の痛々しさや「オレンジ」の恐ろしさが
「父親たちの星条旗」以上に際立って見える。
クリント・イーストウッドが惚れ込んだという二宮和也は
表向きの主役である渡辺謙を支える陰の主役的役回りで、
歴史の陰に隠れた人物にスポットを当てる
イーストウッドらしい作品となっている。

ただ、全編日本語の台詞を採用しているためか、
滑舌よりも表情を優先したような箇所が多く、
台詞が聴き取りにくい部分がかなりあったように思う。
そこだけは本当に惜しい。

ハリウッドメジャー作品でありながら
「アメリカ万歳」のチープなドンパチ映画にならずに済んだのは、
スティーヴン・スピルバーグに直談判して監督をもぎとった
クリント・イーストウッドの真摯で冷静な視点があればこそであろう。
劇場で見逃した方なら2作とも絶対に観ておいて損はない。


■DVD:「硫黄島からの手紙」
■DVD:「父親たちの星条旗」