「どうぶつの森」にインスパイアされた「福福の島」 | 忍之閻魔帳

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福福の島


偶然か意図的かの判定は、最終的には模倣した側が
白状しない限りはっきりしない問題ではあるのだが、
一見して「パクりだ」と分かるレベルでの「インスパイア」は
やはり見ていて愉快なものではない。

今月20日に発売予定のPSP用ソフト「福福の島」は、
タイトルが発表された瞬間から
「どうぶつの森」に酷似しているとの指摘が相次いでいる。
雑誌等でシステム説明を見てみると・・・確かに似ている。
プレイしてみると・・・これがやはり似ているのである。
実際、メーカーの人間も
「会う人会う人に『森だね』と言われます」と言っていた。
つまり、「誰の目にも明らかなレベルのインスパイア」だということだ。
やはり見ていて愉快なものではない。

説明を聞きながらプレイしていて、ひとつだけ大きな相違点を発見した。
「福福の島」には、「『退屈』も生活の一部である」という認識が欠けている。
欠けてはいないかも知れないが薄い。
昨日と同じ今日を過ごすことが罪悪であるかのように、
「毎日新しい」に固執しているような印象を受けた。

・草むしりのためだけに電源を入れたことがある
・ひたすら釣りだけをしたことがある
・部屋のベッドでゴロゴロしてるだけで満足

「どうぶつの森」をプレイしたことのある方なら
これらのシチュエーションも「あるある」と思っていただけると思うのだが、
この「一見不親切にも思える大らかさ」を「福福の島」は
「することがない=退屈=マイナス点」と認識したのではないか。
この点をどう受け取るかによっては、
「どうぶつの森」よりも好み、という(酔狂な)方も(もしかしたら)いるかも知れない。

私が何故このタイトルを取り上げようと思ったかと言うと、
「がんばれ森川君2号」「アストロノーカ」「くまうた」などで知られる
ムームーが手掛けているからだ。
ムームー作品のファンであり、代表である森川幸人氏の日記も
以前から読ませていただいていた私にとって、
本作がムームー作品であることはにわかに信じ難い。
森川氏の日記の過去ログに、こんな記述がある。

>新しいコンセプトを提案するっていうのは、大きなリスクがある。
>商売のことだけを考えれば、「2番手」のほうがうんと効率がいい。
>でもなー、それでいいんだろうか。
>「ビジネスはそんな甘いもんじゃない」という理屈の元、
>もっと大切なものを捨ててしまっているというか、
>あきらめてしまっている気がしてならない。
>ゲームもしかりだ。
>たぶん、テレビも本も映画もしかりなんだろう。
>
>日本はどーも「加工文化」と開き直って、
>まねることを当たり前としているところがあるが、
>ぼくなんかは、アイデアをまねるとは、ものを盗む行為に等しい。
>とちょっときつめに考えている。
>
>マネをしない。
>同じ事をしない。
>これくらいは生涯守っていこう。

このお言葉を、今の森川氏はどんな気持ちで読み返すのだろう。
森川氏から言わせれば、
「『どうぶつの森』とはここが違う」という部分も多くあるのかも知れないが、
作り手が弁解しなければユーザーに届かない差異など、
実際には無いのと同じである。

これまでのムームー作品はオリジナリティの高い物が多い。
発売元のSCEが次々に新しい作品を仕掛けていた時期とうまく重なり、
初期のムームー作品にはヒット作も多いのだが、
ここ数年、SCEのソフト施策がオリジナリティよりも
大作重視に偏重していくにつれ、ムームーが手掛けるような作品は
品揃え程度の扱いまで落とされてしまった。
「くまうた」などは、昔のSCEなら確実にCMを投入して
例え強引にでもヒットにまで持っていったはずなのだが、
結局、ほとんどプッシュされることもなくひっそりと消えていった。
今でも私のフェイバリットソフトの1本だ。

「福福の島」は、商売のことを考えた効率の良い「2番手」ではないか。
森川氏は大切なものを捨ててしまっているというか、
あきらめてしまっている気がしてならない。

【関連記事】

本館過去ログ:「パクるならもう少し頭を使ってパクれ」
 >そこに制作者なりの味や元ネタに対する愛情が見えていれば、
 >パクるという行為自体はさほど責められることではない。

*当BLOGでの新作紹介は、
 1:あくまでも開発途中のROMを使ってのプレイであること。
 2:数分のプレイによる第一印象に過ぎないこと。
 3:発売までに内容変更の可能性もあること。
 を予めお断りしておく。
 簡単に言えば、「あまりあてにしないでくれ」ということだ。

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  タイトル:福福の島
    機種:PSP
  メーカー:SCE
   発売日:2005年10月20日
    価格:5040円(税込み)
    公式:http://www.playstation.jp/scej/title/fukufuku/
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