高橋大輔 100%を目指して……。 | フィギュアスケート研究本

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フィギュアスケート企画

NHK杯 高橋大輔 (上)


2013年11月14日 大阪日日新聞

まだ100%ではない

 11月8日、グランプリ(GP)シリーズ第4戦のNHK杯が国立代々木競技場第一体育館(東京)で開かれた。日本から男子は高橋大輔、織田信成、無良崇人、女子は浅田真央、鈴木明子、宮原知子、ペアは高橋成美/木原龍一組、アイスダンスはキャシー・リード/クリス・リード組が出場した。今回は男子シングル総合1位の高橋大輔(関大大学院)をクローズアップし、2回で連載する。(ライター・黒尾順子、写真撮影・森田正美)

 GPシリーズ初戦のアメリカ大会で、何度もジャンプへの不安と戸惑いを口にした高橋。しかし、「演技として自分はもっとできる。これから練習を積んで自信をつけていくしかない」と2戦目のNHK杯への雪辱を誓っていた。

 そして迎えたNHK杯初日のショートプログラム(SP)。最終滑走の高橋は、大声援を受けながらスタートポジションについた。プログラムは「バイオリンのためのソナチネ」。この曲は作曲家の佐村河内守氏が、義手でバイオリンを弾く少女のために作った祈りの曲。それを宮本賢二氏が振り付けた。

 ピアノの調べが流れた途端、高橋は音楽と一つになる。追ってバイオリンの音色が響くと滑走のスピードは上がり、課題だった4回転トーループを着氷。会場全体が沸いた。続くトリプルアクセル、3回転ルッツ-3回転トーループのコンビネーションジャンプも成功させた。スピン二つにレベルの取りこぼしはあったが、見せ場のステップはレベル4を獲得し、95・55点をマーク。この点数は世界歴代2位になるもので、自己ベストも1・55点更新した。「良い演技をすれば(良い)評価をもらえるという自信にはなった」と高橋は安堵(あんど)の汗を流した。

 「体の感じはいいのに、ジャンプのタイミングが合わない」と訴えたスケートアメリカからわずか3週間。スケーティング、ステップ、ジャンプで見せる本来の姿に復活を遂げたのはなぜか。その理由は五輪への思い、そしてその先の目標をより明確にしたことにある。

 スケートアメリカ後、高橋はニコライ・モロゾフコーチをはじめとする関係者に叱咤(しった)激励を受け、あらためて五輪へ向かう意識を強くしたという。「他の選手たちの調子もいいことから、本当にオリンピックに行けるのかという不安があった。オリンピックに向かう気持ちも他の選手と比べると少なかった」。そう気付いた高橋はさらに自己を追求した。「オリンピックに向けて、自分自身はどうしたいのか」-。つまり「心技体」の心、「使命」「構想」「価値観」の理念を見直した。その後、高橋はかつてないほど集中して練習に取り組んだ。「ひたすら、がむしゃらに練習をした。またそうすることで、より前向きにもなれた」

 もう一つ、大きな決断もあった。NHK杯出場に向け、プログラムの演技構成を変えて臨んだ。「変えたのは直前の火曜。ギリギリだった」。決断をしたのはニコライコーチ。演技構成に合わせた曲の編集もニコライコーチの手で行われた。実質的な練習期間はわずか3日。『チーム高橋』がどれほど濃密な時間を過ごし、NHK杯に臨んだのかは、このエピソードだけでも十分に伝わってくる。

 5年前に右足膝の前十字靭帯(じんたい)と半月板を損傷。手術をしたことで抱えた違和感と戦いながら、それでも自分の理想を追い求めてきた。今シーズンはスケーティングを一から見直して臨んだ。3度目の五輪、ソチへ。自分の納得できる演技へ、戦いはまだ続く。

 「(今回は)会心の演技はできたが、まだ100%ではない。今日の演技が理想(の演技)に近づけたかどうかは分からない。しかし、ここに来てみんなと戦える位置に来られたかなと思う」。高橋は最後にこう結んだ。

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自己ベストを更新し、世界歴代2位の95.55点をマークした高橋大輔のショートプログラムの演技

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NHK杯 高橋大輔 (下)


2013年11月15日 大阪日日新聞

ジャンプ復調に意義

 グランプリ(GP)シリーズNHK杯2日目は、9日に男子フリーが行われ、高橋大輔(関大大学院)は172・26点で総合1位(268・31点)、織田信成が170・46点で総合2位(253・16点)、ジェレミー・アボット(アメリカ)が158・63点で総合3位(237・41点)という結果になった。

 最終滑走の高橋はリンクの中央に立ち、柔らかな表情でポーズを作る。プログラムは「ビートルズ・メドレー」。この曲を選んだのは振付師のローリー・ニコル氏。「ダイスケなら愛を伝えることができるんじゃない?」という言葉を添えて勧めたという。高橋のスケート技術と身体能力を認めたからこそ、ローリー氏はこのプログラムで“心”を求めた。「スケートとスケートにまつわるすべてに感謝したい」。音楽が流れると高橋の表情はより穏やかになり、幸福に満ちているように見える。ビートルズの音楽と高橋が発する優しいオーラで会場が包まれた。

 流れるような滑りで大きくカーブを描き、冒頭の4回転トーループを奇麗に着氷。会場のボルテージが一気に上がった。続いて予定していた4回転トーループ-2回転トーループは単独の3回転トーループになったが、その後のトリプルアクセルは成功。後半に予定していたトリプルアクセル-2回転トーループはアクセルの着氷が乱れ、後ろにつなげることができなかったが、続く3回転ルッツ-2回転トーループ-2回転ループのコンビネーション、3回転ループ、3回転フリップ、3回転サルコウは確実に着氷した。

 高橋は「イエスタデイ」「カム・トゥゲザー」「フレンズ・アンド・ラバーズ(ビートルズのプロデューサー、ジョージ・マーティンのナンバー)」「イン・マイ・ライフ」「ロング・アンド・ワインディング・ロード」のメドレーを順に織りなす。スピン二つにレベル4、見せ場のステップでレベル4を獲得、コレオグラフィックシークエンスでは高橋自身の紆余(うよ)曲折、「長く曲がりくねった道」を表現し観客の心をつかんだ。

 「6分間練習で4回転の調子が悪かったが、『見た目は悪くないから大丈夫』というコーチの言葉を受けて、思い切り跳んだ。2本目は失敗したくないという弱気な自分が出てしまった」と高橋は分析。そして「今大会で自分のジャンプに対する信頼は回復したと思う」とも。

 この時期に課題だった4回転とトリプルアクセルを取り戻したことは大きな意義がある。年末にかけてますます激しくなる五輪レースに向け、自信と誇りを持って挑めるからだ。長光歌子コーチはジャンプの復調をこう話す。「9月半ばに2年半前に使っていた重い靴とブレードに戻したことで、ジャンプのタイミングが狂ってしまった。スケートアメリカからの3週間、ひたすらジャンプの数をこなして修正してきた」と。

 また、ジャンプの復調とともに、強い気持ちも戻ったとも話す。「スケートアメリカのときは、勝負するという意思が少し弱かった。これまでのオリンピックシーズンと違い、ある程度のものを手に入れてしまった後だったので、モチベーションを自分で高めるというのが難しかったのだと思う。しかし、今大会は大輔の本来の強さを見せてくれました」

 14年間、スケートにまつわるすべての思いを分かち合ってきた高橋と長光コーチ。『The long and winding road』-。長く曲がりくねった道の先にある、2人が望むものにたどり着くのはもうすぐ。今はその行方を祈るばかりだ。

 ※次回はNHK杯の宮原知子選手を紹介します。

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会場を魅了した高橋大輔のフリープログラム

http://sportsnavi.yahoo.co.jp/sports/figureskate/all/1314/columndtl/201311100002-spnavi

高橋大輔、優勝を呼び込んだ危機感
自信を取り戻し、再びスタートラインへ


スポーツナビ2013年11月10日 11:30

日本のエースが見せた圧巻の滑り

「今日はかなり緊張感があるなかでの試合でした。弱気になってしまった部分もありますけど、スケートアメリカから成長した演技だったと思います。少しは自信になったかなと思います」

 日本のエースはやはりこの男しかいない。11月8日から開催されているフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第4戦・NHK杯。9日は男女のフリースケーティングなどが行われ、男子は高橋大輔(関西大学大学院)が合計268.31点で2年ぶり5度目となる同大会優勝を飾った。前日のショートプログラムで自己ベスト(95.55点)を更新し首位に立っていた高橋は、2日連続で4回転トゥーループに成功。細かいミスはあったものの、大会を通じて圧巻の滑りを披露した。

「6分間練習で4回転ジャンプの失敗があったので不安はあったんですけど、曲が始まってからは前向きに滑ることができました。4回転ジャンプを失敗したあとはすぐに3アクセルに切り替えていましたし、次のことをずっと考えていました。2回目の3アクセルで手をついてしまったりしたのは悔しいですけど、スケートアメリカよりは良くなったと思います」

 優勝が決まってようやく見せた安どの表情。長年、高橋を指導する長光歌子コーチも「彼本来の実力を見せてくれて少し安心しました」と胸をなでおろした。前日のSPで世界歴代2位となるスコアをたたき出しながら、会見場ではほとんど笑顔を見せなかった。「今日だけ良くても仕方ないので、2日続けられるようにしたいです。今回、ライバルは自分自身という気持ちで来たので、点数よりも自分の出来を重要視していました。このリズムを明日につなげられればいいと思います」。目指していたのはSPとFSの両方で納得できる滑りを見せること。それだけ追い込まれていたのだろう。SPで自己ベストを出してうれしくなかったはずはないが、気を緩めるわけにはいかなかった。

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フリーでも冒頭の4回転を決めた高橋大輔。五輪へ向け、エースが勢いを取り戻した【坂本清】

「五輪を狙う気持ちは僕が一番小さかった」

 高橋は不安のなかで戦っていた。今シーズン初の実戦となるジャパンオープンでは4回転ジャンプで転倒するなど思うような演技が披露できず。GPシリーズ初戦のスケートアメリカでも精彩を欠き、表彰台に上がることさえ許されなかった(4位)。闘争心を失っていることをニコライ・モロゾフコーチに見抜かれ、喝を入れられた。

「かなり痛いところを突かれました」と、高橋は苦笑する。高橋はシーズンが始まってからも「平常心」でいることを強調していた。五輪シーズンだからといって特別なことをするわけではなく、流れに身を任せて、できることを精いっぱいやる。これが今季のテーマだったが、流れに身を任せるということは、裏を返せば何があってもそれに逆らわないということでもある。そのスタンスが無意識のうちに気の緩みにつながっていた。

「五輪を狙う気持ちという意味では、シーズンオフからインにかけて僕が一番小さかったんじゃないかなと思っています」

 NHK杯の前日会見に出席した際、高橋はこう語った。長光コーチもこれに同調する。
「過去2大会の五輪とモチベーションが違いました。2006年のトリノ五輪のときはとにかくがむしゃらに出場権を取りにいきました。前回のバンクーバー五輪のときは、前年に足をけがしていたので他のことを考える余裕がなかった。今回はある程度のものを手に入れてしまったので、モチベーションを自分で高めるのが難しかったんです」

 そこをモロゾフが突き、高橋は気持ちを入れ替えた。スケートアメリカから帰国後、ジャンプの練習量を大幅に増やした。「ジャンプがパンクするくせがついていたので、何があっても体を締めきるということを考えて今回練習してきました。ジャンプの調子が戻ってくれば、自信は取り戻せると思っています」。その言葉通り、SPで4回転ジャンプを成功させると波に乗り、観客を魅了する圧倒的な演技を見せた。

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スケートアメリカ後、モロゾフコーチ(右)から渇を食らった【写真は共同】

出場権を争うライバルたち

 ソチ五輪の出場権を争う他の候補選手の存在も、高橋の危機感を増長させた。日本の男子フィギュアはいまだかつてない最盛期。昨シーズンはGPシリーズ全6戦で6人の日本人選手が表彰台に上がっており、海外からは「五輪でメダルを取るより、日本で出場権を勝ち取るほうが難しい」とさえ言われている。そのなかでも昨年の全日本選手権で優勝を争った羽生結弦(ANA)と高橋が頭ひとつ抜け出しているかと思われていた。しかし、高橋も出場したスケートアメリカで、23歳の町田樹(関西大)が自己ベストを30点近く更新する世界歴代5位の記録で優勝。五輪出場候補どころか一躍メダル候補に躍り出たのだ。

 高橋にあこがれ、高校・大学と同じ道を歩んできた町田は、いまも変わらぬ尊敬の念を先輩に示す一方で、「五輪に出るためには越えていかなければならない存在」として、高橋をライバル視している。

 またバンクーバー五輪に出場した織田信成(関西大学大学院)も、スケートカナダで3位、NHK杯では高橋に次ぐ2位と好調を維持。「もちろん五輪には行きたいですし、誰よりも強い気持ちを持って、練習でも1日1日をしっかりやっていきたい」と、出場権獲得に意欲を燃やす。現在のところ結果を出せていない小塚崇彦(トヨタ自動車)、無良崇人(岡山国際スケートリンク)といった他の候補者たちも、五輪に懸ける思いには並々ならぬものがあるだろう。

 こうした選手たちと争っていくためには、高橋自身も覚悟を決める必要がある。「スケートアメリカが終わってからはひたすら練習していましたし、気持ちも入っていました。五輪に向かうにあたっては自分自身がどうしたいのか、気持ちの面で改善をしています」。もはや高橋に気の緩みは一切ない。長光コーチも「アメリカでは勝負をする意識が足りなかった。ただNHK杯は何らかの結果を出さないといけないということでかなり闘争心を持っていたと思います」と、教え子を評価した。
再びトップ戦線に返り咲く
 遅ればせながらようやく高橋はシーズンのスタートラインに立った。五輪という特別なイベントがあるにもかかわらずスロースタートになってしまったことについて、「今回は3年前から目指すと決めて、いまこの時期になって喝を入れられるなんて、やっぱりギリギリにならないと自分は焦らないというか、気持ちが入らないタイプなんだなという感じました」と、高橋は反省する。しかし、日本のエースが期待に違わぬ結果を残したことは、他の選手にとっても大きな刺激となることだろう。

 五輪に向けた課題は多くある。4回転ジャンプの確率を上げることもそうだが、ミスをした場合の精神面における管理はNHK杯でも解決できなかった。「気持ちが乗らなかった部分がある」と、高橋自身もこうした課題を理解している。

「もうちょっと自分自身、気を引き締めていかないといけない。五輪まではまだ現段階では遠い道のりだと思うので、少しでも近づけるようにしたいし、五輪だけじゃなくメダルにも近づけるように、いま自分が何をしなきゃいけないかを日々考えながら頑張っていきたいと思います」

 その一方で、勝負強さも示している。FSの直前練習では、4回転ジャンプを1度も成功させることができなかったが、本番では成功させた。結果を出すことを目標として今大会を戦い、見事にそれを有言実行した。「この大会は五輪に向けてのリスタート。スケートアメリカから気持ちを切り替えて、これを良いスタートにできれば」。集大成のシーズン、高橋は急加速で再びトップ戦線に返り咲いた。

<了>

(文・大橋護良/スポーツナビ)

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同じ時代を戦ってきた織田(左)も表彰台に。まずは五輪代表の座を目指して、高橋が“本格”スタートを切った【写真は共同】


ここ最近の、高橋選手のジャンプの不調は、見ていて胸の詰まる思いでした。

しかし、やっとトンネルを抜けたようで、本当に良かったです。

高橋選手の実力は世界一でしょう。

本来、一番金メダリストに近く、また相応しい選手だと思います。

採点では、演技構成点で一番高く評価されているのは、チャン選手ですが、あれは高橋選手を基準として、それより高く付けているとしか思えません。

演技が一番、素晴らしいのは、高橋選手でしょう。

そこに確実なジャンプが加われば、絶対に鬼に金棒となるはずです。

ここの所、変な採点と、日本男子代表争いの激化に自信を失っていた事が、高橋選手のモチベーションに良くない影響を与えていたのだと思われます。

モロゾフコーチが、それを見抜き、喝を入れてくれた事で、こんなに変わるなんて、別の意味でびっくりしました。

彼のゴールドメーカーというあだ名は、やはり伊達ではなかったという事ですね~。

高橋選手には、真央ちゃん同様、悔いのないラストシーズンを過ごしていただきたいです。

100%を出しきって、有終の美を飾って欲しいのです。

それだけの実力のある選手ですからね。



↓大ちゃん、頑張ってくだいね。≧(´▽`)≦


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