その名も「Thought on Flash」。
大まかに抜粋して訳を載せておきます。
(大まかなのでニュアンスで感じて頂ければと思います。)
原文はこちら
iPod、iPad、iPhoneでFlashを採用しないのは、ビジネス的な判断だと言われているが、実際には技術的な問題です。
理由１ オープン性
AdobeのFlashは100％Adobeの独占的で、機能拡張や価格等はAdobeが決定権を持っている。
Flashが世界中に広がったからといって、それがオープン性があるという意味するわけではない。
どのように定義しても、Flashはクローズドシステムです。
iPhoneやiPod、iPadのオペレーティングシステムはAppleの独自のものだが、ウェブに関する基準はオープンであるべきだと強く信じており、Flashではなく、HTML5、CSS、JavaScriptというオープンスタンダードを採用したのだ。
HTML5は、完全にオープンでAppleもメンバーとなっている標準化委員会で制御されている。
Appleもウェブ標準を作っている。例えば、完全なオープンソースHTML5レンダリングエンジンのWebKitプロジェクトを始めた。WebKitはMicrosoft以外のほとんどのスマートフォンで利用されている。
理由２ ウェブの全体
Adobeは、ウェブ上のビデオの75%はFlashであり、Appleのモバイルデバイスは、すべてのウェブサービスを提供していないと言うが、ほとんどのビデオは最新のフォーマットH.264にも対応しており、iPhone、iPod、iPadでも見られる。
Youtubeはウェブビデオの約40%を占めているし、多くのサイトで使われている、VimeoやFacebookが使われており、ウェブビデオが足りないと言うわけではない。
AppleデバイスではFlashゲームを使用できないというのは正しいが、App Storeには、50,000以上のゲーム、エンターテイメントがある。世界中のどのプラットフォームよりも多い。
理由３ 信頼性、セキュリティ、パフォーマンス
シマンテック(ノートンなどのセキュリティソフトを作っている会社)は2009年のワーストセキュリティ記録の1つとしてFlashを指摘している。
Macがクラッシュする最大の原因はFlashだ。
我々はAdobe社とこの問題の解決に数年も前から努めており、まだ続いている。
我々は、iPhone、iPod、iPadの信頼性、セキュリティを損ないたくはない。
Flashはモバイルデバイスで正しく稼働しない。
我々は、モバイルデバイスで正しく動いているFlashを見せてくれと繰り返しAbobeに依頼してきたが、未だに見たことがない。
Adobeは公に2009年の初め、2009年の後半、2010年の前半、そして今は2010年の後半と言っている。
そのうち出荷されるとは思うが、これ以上待たなくて良かったと思う。
理由４ バッテリーの寿命
モバイルデバイスでは、バッテリーを長持ちさせるために、ハードウェア上でビデオのデコードをする必要がある。
ソフトウェア上でのデコードすると多くの電力を使いすぎる。
モバイルデバイスのチップの多くはH.264と呼ばれるデコーダーを含んでいる。
Flashは最近になってH.264をサポートしたが、ほとんどのFlashウェブサイトのビデオはモバイルチップに含まれていない古いデコーダーを必要としているため、ソフトウェア上で実行しなければならない。
iPhone上では、ソフトウェアのデコードの場合は5時間未満だが、H.264ビデオでは10時間の再生が可能だ。
H.264を使用して自分のビデオをエンコードするWebサイトが登場してくれば、Flashを使用せずにウェブビデオのサイトを提供することができる。
そうすればAppleのSafariとGoogleのChromeのようなブラウザでもプラグインせずに再生することが出来、iPhoneやiPod、iPadでも見ることが出来る。
理由５ タッチ
FlashはPC上でマウスから操作するようにデザインされている。
例えば、ロールオーバー(マウスを画像などに載せた時に、画像が入れ替わったりする動作のこと)。
Appleのマルチタッチインターフェースはマウスを使用しない。
ロールオーバーというコンセプトそもそもない。
ほとんどのFlashウェブサイトは、マルチタッチデバイスをサポートするためには書き換えが必要になる。
もし、書き換えるのであれば、HTML5やCSS、JavaScriptといった今の技術を使えばいいのではないか。
理由６ 最も重要な理由
実際にはFlashはクローズドシステムや、技術的な欠点(クラッシュ)、タッチ画面のサポートをしていないだけではなく、さらに重要な理由がある。
我々は、過去の苦い経験から、プラットフォームと開発者の間にサードパーティソフトウェアレイヤー(Adobe・Flash)を許容すると、プラットフォームの拡張の妨げになることを知っている。
開発者がサードパーティのライブラリやツールへの依存性を増していくと、（プラットフォームの）新しい機能はサードパーティがその新機能を取り込んで初めて利用可能になると言うことになる。
サードパーティがクロスプラットフォームの開発ツールを提供している場合は、他のプラットフォームがサポートしない機能が取り込まれないと、開発者は最低共通機能のみ利用可能となってしまう。
競合のプラットフォームがサポートできないからといって我々の拡張機能が妨げられることになるのは受け入れることができない。
Flashはクロスプラットフォームの開発ツールです。
開発者がiPhone、iPod、iPad上で最高のアプリを開発のサポートするのはAbobeの到着点ではない。
また、AbobeはAppleのプラットフォームの拡張機能を対応するのが非常に遅い。
我々は、最も進んだ革新的なプラットフォームを開発者に提供して、彼らに、世界で最もすばらしいアプリを作ってもらいたい。
最も優れたアプリを提供することで、我々はより多くのデバイスを販売することができ、開発者はより多くのユーザを獲得することができる。
そして、ユーザは最も優れたアプリを最も広い選択肢から選択することができるようになる。
結論
FlashはPCの時代に、PCとマウスのために作られたものだ。
モバイルの時代は低電力のデバイスとタッチインターフェース、オープンウェブ基準によるもので、
Flashはどの分野においても足りない。
マスコミメディアはAppleのデバイス上でウェブコンテンツにもうFlashは必須ではないことを示している。
App Store上にある20万のアプリ、何万人もの開発者が、ゲームを含めたグラフィカルなアプリを開発するためにFlashが必須ではないことを証明してくれている。
モバイルの時代に作成された、HTML5のような新しいオープン基準はモバイルデバイス上（PCでも）での勝者になるだろう。
2010年4月
スティーブジョブズ
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