これまでに、2回内部・八王子線の記事を書いておりますので、今回で3回目です。


「近鉄内部・八王子線乗車記&活性化への提案」http://ameblo.jp/shitetsuensen98/entry-11287351538.html


「存続問題が浮上!ナローゲージの近鉄内部線・八王子線」http://ameblo.jp/shitetsuensen98/entry-11243648476.html


近鉄四日市で8時49分発西日野行きを待ちます。後発の8時59分発内部行が先に10番線に停車していましたが、今回は見送ります。


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9番線に到着した列車からは約60名が下車し、入れ替わりに8時49分発西日野行きに36名が乗り込みました。


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車内は半数以上を高校生が占めます。また、近鉄職員2名も同乗しました。


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赤堀では乗降がなく、日永で2名が下車し、1名が乗車してきました。


わずか8分で終点の西日野に着きました。下車した職員2名は簡単な清掃をした後、改札に立っていました。どうやら、利用の多い時間帯は駅員として派遣されるようです。


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その後、四日市南高校の門まで歩き、再び西日野駅に戻ります。


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西日野駅周辺は、住宅密集地帯です。これだけ住宅が建て込んでいるのに、八王子線の利用が低迷しているのが不思議でなりません。やり方次第で十分にテコ入れは可能と見ました。

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帰りは、駅前の県道8号線を通る三重交通バスJR四日市行きに乗ることしました。バスの本数は1時間に2本程度です。



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バスの出発時刻まで時間があるので、西日野駅構内で9時23分発近鉄四日市行きを見ることにしました。到着した列車から13名が下車し、代わりに26名が乗車しました。どうやら、朝ラッシュのピークは完全に過ぎたようでした。改札口では係員による集札が実施されていました。


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西日野駅を後にし、西日野バス停に移動します。9時25分発JR四日市行きの三重交通バスがほぼ定刻にやってきました。私を含め13名が乗車していました。


途中、日永駅前では乗降はゼロでした。中央緑地公園前で2名が下車した他は、9名が近鉄四日市で下車しました。所要時間は渋滞が全くなくて14分かかりましたので、内部・八王子線の8分と比べると、倍近い時間がかかっていることになります。内部・八王子線が廃止された場合の社会的損失は相当に大きいと思われます。


西日野→近鉄四日市間は、バスは鉄道よりも6分余計にかかりました。また、同区間のバス運賃は260円で、鉄道の220円より40円高い金額です。


ここで内部・八王子線の社会的便益の簡単な計算を試みてみましょう。まずは、社会的便益項目の一つである(1)時間短縮効果を試算します。仮に1時間当たりの時間給が800円とします。6分当たり80円/人(=800円×6分÷60分)です。内部・八王子線の年間乗車人員は362万人ですから、鉄道廃止によって失われる(1)時間短縮効果は約2.9億円(=80円×362万人)です。時間短縮効果2.9億円だけで内部・八王子線の経常損失2.7億円を超えます。


さらに、時刻表や地図に掲載されることによる(2)地域イメージアップ(広告)効果は、次の通りです。時刻表や地図が年間100万部発行され、1部当たりの広告料が50円と仮定すると、鉄道が維持されることで発生する地域イメージアップ(広告)効果は0.5億円(=50円×100万部)となります。

以上をまとめると、内部・八王子線の社会的総便益は、(1)+(2)=3.4億円となります。つまり、経常損失2.7億円を差し引くと0.7億円(=3.4億円-2.7億円)の社会的純便益となります。


このほかにも社会的便益項目はありますので、さらに内部・八王子線の社会的総便益は増加するでしょう。


このように、内部・八王子線の社会的便益は、会計上の営業損失(または、経常損失)を超える正の値である可能性が高いと予想されます。「鉄道の営業損失<鉄道の社会的総便益」であるならば、鉄道の社会的純便益は正となります。


鉄道を廃止して赤字を節約できたとしても、鉄道を廃止したことによって失われる社会的総便益が大きい場合、社会としては損失(=負の社会的純便益)を生じることになります。いわば、鉄道存続を議論する場合、こうした機会費用(=鉄道廃止によって失われる社会的総便益)の存在を考えることが重要なのです。鉄道の営業損失は、社会的総便益を損ねることを防止するためのコストです。こうした機会費用は目に見えないため、これまで多くの鉄道が会計上の営業損失だけを判断基準に廃止されてきましたが、鉄道を失ったことで地域の衰退を招いた事例が多く存在します。こうした事例を教訓にしなければなりません。鉄道廃止で衰退した地域の事例は近いうちにご紹介したいと思います。


鉄道の存廃の判断は、こうした費用便益分析を適用して、慎重になされなければなりません。


内部・八王子線沿線地域では、朝夕の通勤時間帯は道路がかなり渋滞するようですので、バスはもっと時間がかかるのではないでしょうか。また、バスは立席を含めても、60人が限界と思われる点も不安です。鉄道の社会的総便益は上記の試算よりもさらに大きい可能性があります。とても、内部・八王子線の乗車人員分の需要に対応しきれないと思われます。8月20日にまた訪問する予定ですので、次回は最混雑時間帯にバスに乗車して実際に確かめてみようと思います。


私は四日市市役所で下車し、市役所11階に向かいました。


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10時00分からは、四日市市議会「第1回総合交通政策調査特別委員会」を傍聴しました。


会議では、傍聴者にも資料が配布され、途中10分の休憩をはさんで、約2時間議論が交わされました。


委員会で提起された主な発言は以下の通りです。


・内部・八王子線に金沢で実施されている「トリガー方式」を適用してみてはどうか。


・来年夏までに、近鉄が内部・八王子線の方向性を示すと言っている。委員会としては、年内に内部・八王子線存続に向けた結論を出したい。


・平成19年頃から、近鉄より四日市市に対して、内部・八王子線の存続が厳しいとの声が寄せられるようになった。それを受けて、市としては、車両更新費補助と西日野駅・内部駅の駅前広場整備を計画に位置付けることとした。


・高架化して本線に乗り入れるためのコストはどれくらいか?(事実上、改軌を支持する発言)


・内部・八王子線はとても珍しい鉄道であると聞いている。レトロな車両の活用や観光ルート開発をすべきと思っている。そのためのコストはどれくらいか?


・近鉄に廃止を促すような議論は避けたい。近鉄にできるだけ内部・八王子線の運営をやってもらう方向での議論が基本となるべき。


・近鉄は私企業ではあるが、公共交通事業者としての社会的責任もあるはず。近鉄と市の責任の分かち合いという考え方が必要。「民民」という考え方だけで議論すべきではない。


・委員会としての権能を、次回会議までに提示すべき。委員会での議論に、内部・八王子線だけなのか、コミュニティバスを含めるのか。また、どこまで委員会として調べるべきなのか決めるべき。


また、ある委員からは詳細な内部・八王子線の路線別収支の開示が要求されました。行政と市民が、収入増加および費用削減のためのよりよいアイデアを出すためには、詳細な財務資料が不可欠ですが、現在開示されているのは本当にざっくりとした数字のみです。


次回は8月20日(月)10時より開催されるとのことです。ぜひ、活発な議論を期待したいと思っています。