先月31日に、近鉄内部線近鉄四日市-内部間および八王子線日永-西日野間を乗車しました。 いずれの路線も30分間隔の運行で、主な利用者は高校生と高齢者です。 現在、両線は存続問題に揺れていますhttp://mytown.asahi.com/mie/news.php?k_id=25000001206150001 。


近鉄四日市から西日野行きに乗車します。762mmの特殊狭軌であるため、車内はかなり狭くなっています。


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日永まで内部線の線路を走り、日永で八王子線に入ります。八王子線は、日永からわずか1駅の西日野までの1.3kmの路線です。かつては、西日野から先の伊勢八王子まで路線が延びていましたが、1974年7月25日に、日永駅-伊勢八王子駅間が集中豪雨によって休止となり、1976年4月1日に正式に廃止されました。1981年5月6日からは、内部線・八王子線に対して「支線加算運賃」が適用され、現在に至っています(近畿日本鉄道への電話調査より)。


西日野へは近鉄四日市からわずか3.1km、8分の行程です。当駅は無人駅ですが、自動券売機が設置されています。乗降人数は2,565人/日(2008年)と、内部・八王子線では、近鉄四日市に次いで利用が多い駅です。駅のすぐ近くにある四日市南高校の生徒に多く利用されています。



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しかし、写真を見てわかる通り、駅に入る際に階段があり、車いすやベビーカーの利用には障害となっています。ぜひスロープを付けてほしいものです。また、駅舎を改築してコンビニや公民館を入居させてはどうでしょうか。あるいは地域住民が交流できるコミュニティースペースを設置し、駅ににぎわいを作る工夫をすることで、鉄道に親しみをもってもらうことも一考に値します。


再び八王子線の列車に乗車し、内部線内部方面への分岐点である日永に向かいます。日永も無人駅ですが、自動券売機が設置されています。当駅の乗降客は930人/日(2008年)です。駅舎内に改札柵があって、ベビーカーや車いすにとってのバリアになっています。撤去した方がよいでしょう。2番線・3番線へは、構内踏切を渡る必要がありますが、階段があります。しかし、見たところ、工夫すればスロープを付けられるスペースはありそうです。


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1番線から出発する内部行きに乗り換えて、内部に向かいます。


内部駅は駅本屋に接した単式ホームが1面あるだけの終点駅です。駅入口から段差なしで列車内に入ることができます。しかし、ホームの入口に改札柵があり、ベビーカーや車いすはまず通れません。駅員さんに尋ねたところ、ベビーカーや車いすの人は利用してこないとおっしゃっていました。こんな無用なバリアがあるようでは、車いすの方は利用したくても利用できません。早急に撤去していただきたいものです。


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駅を出て、小古曽踏切まで移動し、列車を撮影しました。田んぼの緑と列車のコントラストが素晴らしく、今の時期は絶好の撮影機会だと思います。



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内部駅に戻り、近鉄四日市行きの列車に乗り込みました。追分と南日永で大勢の中学生や高校生が乗車し、混雑していました。



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内部・八王子線に乗車し、色々と感じることがありました。以下、感じた問題点を記します。


問題点1:バリアが多い。

問題点2:冷房がなく、夏場の利用が敬遠されかねない。

問題点3:無人駅を含むすべての駅で全扉を開放していることから、運賃の取りこぼしが多いと推測される。

問題点4:近鉄の高い給与体系による人件費が内部・八王子線の収支を圧迫している。

問題点5:全体として施設が老朽化しており、鉄道を利用する魅力が低下している。
問題点6:沿線は住宅密集地であるにもかかわらず、駅および駅前に活気が乏しい。

以上の問題点を踏まえて、私としては、以下の項目を活性化策として提案します。


収入向上策

(1)ネーミングライツ販売を実施。副駅名の命名権だけなく、路線愛称の命名権も販売する。

(2)トレインアテンダントをアルバイトとして採用し、朝夕ラッシュ時に改札業務を担わせる。日中時間帯は後ろ乗り、前降りを徹底し、運賃取りこぼしを防ぐ。

(3)JR東海と提携し、珍しい特殊狭軌の鉄道のPRを実施する。JR東日本「ローカル線の旅」やJR西日本「Train+」などのローカル線PRキャンペーンをJR東海でも実施することで、JR東海と内部・八王子線双方の利用促進を図る。東京・横浜・静岡エリアでPRし、名古屋まで新幹線で来てもらい、名古屋で近鉄特急に乗り換えてもらえばJR東海・近鉄にとっても増収となる。

(4)内部線・八王子線の日中時間帯には、車内売店を実施する。業者に、生鮮食品や日常品を車内に設置・販売してもらう。

(5)沿線や駅に、菜の花、あじさい、コスモスなどを植えて、夜はライトアップするなどして観光化する。あまり費用がかからない上、花観賞目当ての観光客を見込める。花観賞専用列車や納涼ビール列車、宴会列車を運行する。あじさいやコスモスなどの四季ごとに咲く花々は、ボランティアの手で栽培してもらう。例えば、京王井の頭線では今の時期沿線にたくさんの紫陽花が咲き誇り、同線東松原駅では紫陽花の開花時期に併せたライトアップが実施されている。また、真岡鐵道の菜の花も好評である。なお、婚活列車を運行すれば、少子化対策にも役立つだろう。


井の頭線の紫陽花
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真岡鐵道の菜の花
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経費圧縮策

(6)分社化を実施し、経営形態を抜本的に変更する。近鉄の高い給料体系と切り離すためにも分社化が必要。分社化を実施の上、近鉄などの他鉄道を定年退職した運転士を採用し、人件費を抑制。


利便性・サービス向上策

(7)車内に、置き型エアコンを設置する。

(8)内部駅と山中胃腸科病院の間に屋根付通路を新設する。病院利用者に鉄道を選んでもらうようにすることが重要。

(9)各駅のバリアフリー化工事の実施。不要な改札柵は早急に撤去する。

(10)内部駅・西日野駅・日永駅の駅舎を改装し、コンビニを誘致または近鉄のKPLATを設置するか、または大阪モノレールなどのように出札口に売店を併設する。コンビニ店員に改札業務を行わせる(伊予鉄道古町駅で実施されています)。鉄道利用者だけでなく、地元住民がコンビニ利用で駅を訪れてもらうようにする。カフェなどを設置しても面白い。近隣は住宅密集地であり、集客は十分可能ではないか。コンビニの1日当たりの平均来店客数は1,000人程度であるとのことhttp://www.shopbiz.jp/fc/news/65241.html 。内部駅の一日乗降客数は1,105人、西日野駅は2,565人、日永駅は930人。鉄道利用者の他、鉄道を利用しない周辺住民も買物に来ると予想される。

(11)各駅の駅舎を改造し、学習塾や託児施設、福祉施設などを誘致する。


両線の一日の利用者数は約1万人、経常損益は約2.7億円の赤字とのことです。しかし、運賃徴収の徹底と人件費抑制、そして以上の増収策によって赤字圧縮は十分可能です。


1067mmなどへの改軌案ですが、駅改良、線路幅変更、架線ポールの移設、車庫の改築、変電所の改修などで最低でも数十億円の投資が必要になるでしょう。1067mmへ変更すれば、他社から中古車両を譲り受けてもらえるなどのメリットがありますが、中古車両を譲り受けても、せいぜい15年~20年くらいしか使用できません。新造車両であれば、40年は使えます。内部・八王子線の現有車両数は14両です。


ここで改軌した場合と改軌しない場合の試算をしてみましょう。


1,067mmゲージに改軌した場合に中古車両の購入に1両1,000万円、改軌しなかった場合には新造車両の導入に1両1億5,000万円が必要だと想定します。また、減価償却計算は法定耐用年数13年でなく、使用可能期間により行うものとします。


(a)(改軌)中古車両:1両0.1億円×14両=1.4億円

(b)(現状)新造車両:1両1.5億円×14両=21億円

(c)(a)と(b)の差額:19.6億円


(d)(a)の年間減価償却費(20年と仮定した場合の実質ベース):0.07億円(=1.4億円÷20年)

(e)(b)の年間減価償却費(40年と仮定した場合の実質ベース):0.525億円(=21億円÷40年)

(f)(d)と(e)の差額:0.455億円


以上の計算は個人的な試算であることをお断りした上で、計算結果の考察をしてみましょう。


中古車両を導入できれば、年間4,550万円の減価償却費の節約になります。しかし、この減価償却費の節約額を実現するために、莫大な投資を実行してまで改軌を実施することが妥当なのかについては、慎重な議論が必要です。私は個人的にはこの貴重な特殊狭軌を売り込み、観光化する方がよいと思っています。採算性の観点からも改軌には慎重になるべきです。


内部・八王子線を活性化させ、永続的な運営につなげてほしいものです。