※ この記事は公開から13年以上経過していることにご留意ください。
2024年1月追記
「ノイズフィルタ」 はこのままでは日本国内に限り大変問題の多いパーツだと思っております。
「ノイズで困ったらこれを入れればイイ・・・のではないか」と疑問を残しながらも名前が名前だけに片想いのように期待されている為にその根源的問題と誤りに目が行かなくなっているのが残念でなりません。
こちらの記事もぜひご参照の上お考えください。
3.「1052: アースについてもう一度考えてみませんか(前編)」
前編で書いたように、ここに仕掛けなどしなくても回路系の電源インピーダンス全体を低下させ、設計全体を見直せば電源ラインノイズに対する耐力は十分得られますのでノイズフィルタなど無くて困る事はまずありません。(インパルスノイズ・静電気放電放電イミュニティ共に)
(ノイズ対策の三要素)
①「進入経路を絶つ」
②「進入しても電気エネルギーとして回路上で活性化させない設計」
③そして残りは「発生源を絶つ」
この3つがEMC対策上の3ルールですが、特に ②の仕上がりが決め手になります。
ノイズフィルタはおそらく①に対する期待なのでしょうが実は②がダメな場合、まず効果は有りません。
②に自信がないか対応する能力のないがゆえに、機器にノイズフィルタをお守りのように入れてゴマカス傾向を多く見てまいりましたが本当に「お守り」です。
そんな延長線上に「アース」をゴマカシの上塗り手法として、逃げ道として誰かが見つけたからややこしいことになりました。
機器のEMC設計最大の要は②にこそあるのです。
理にかなわない目的と手法による「アース」と「シールド」はかえって害になります。
ちなみに前回、「1052 :アースについてもう一度考えてみませんか (前編)」 で冷凍コンプレッサーからの障害波の対策では ③のみ を行ったわけですが、システムダウンを最短時間で復旧させるための緊急避難処置ですので、その後全端末と、ホスト側機器ともに完全対策を実施すると同時に隣地スーパーの冷凍機側も(電波法上の処置として)改善を実施させました。(三重県 I 市)
私(Shin)は日本の異常な商用電源事情ではこの「ノイズフィルタ」の有害性のほうが問題であることを機会があるたびに20数年前から忠告しております。
※(日本以外ならどこの国でも問題ないので誤解なく)
≪危険なノイズフィルターの回路≫
(この回路を「アクロス・ザ・ライン型」とメーカーでは呼んでいる様ですが
(これが危険なノイズフィルタ現物だ) 危
日本ではこの種の部品とこの回路使用を禁止すべきです。)
それが実現できれば
★音響現場と楽器演奏中の感電事故は殆ど防止出来るのだ。
(前面より) (背面より)
ごく一般的な機器のULタイプのインレットACコネクタ。
中身はこのようにノイズフィルタになっている事が多い、(高級機材ほど多い)
上の(参考図1)と併せて危険回路を確認してください。
・・・といってもこのタイプのノイズフィルタは「分圧中点がフィルタケースに接続されているので漏電による感電から逃れるすべがない。
この場合フィルタなしのULインレットに取替えてフィルタを取り去る以外に防衛策はありません。
ところがこの回路を何の疑問もなく、そのまま個別部品で採用するメーカがあとを絶たないので困ったものです。
ギターAMPでは「オリジナル」の回路(海外の回路)に”忠実に”と、日本に合わない「C1+C2を入れて中点をシャーシアース」をそのまま再現するギターアンプの個人ビルダーさんや何の疑問も持たず採用する国内メーカーが存在します。
ここはNIPPONですよ!
「アース信仰」に異議アリ!No2 の記事を見て驚かれた有名な某ビルダーさんの場合、海外製ギターAMP実回路をご提示いただき、メールでのやりとりの上、現在ではビルダー仲間の方に中点シャーシアースの危険性をご自身のサイトを通じて訴えておられます。
海外製品はトランスタップだけ100Vにすればよいわけではありません。
回路の読める方なら危険性はわかりますよね、
「とにかく外しましょ!フィルタの中点」 、危険インレットタイプなら撤去改造しかありません。
しかしこんなのおかしいでしょ、本来なら製造メーカーに改善させるべきですが・・・しかしPSE法で下のように。 お役所は安全も人命も守りませんので念のため
(PSE法自主検査項目より抜粋)
1. 外観検査
目視等により外観に異常がないか確認
2. 絶縁耐力検査
電気部品、電気製品に十分な絶縁性能があるかどう
かを確認(耐圧試験、耐電圧試験とも呼ばれています。)
耐圧試験器3158、絶縁耐圧試験器3159 等が使用
できます。
耐圧検査の条件
絶縁耐力試験には4 つの試験条件が必要です。
試験条件: 試験箇所
試験電圧
試験時間
漏れ電流上限値( カットオフ電流)
試験条件の例
( 1)試験箇所 コンセント一括8210; アース用端子
( 2)試験電圧 1000V
( 3)試験時間 60 秒
( 4)漏れ電流上限値 10mA
↑
こんなバカな (ヒトは10mAの電流が10秒間心臓を貫いた場合死亡に至る)
(日本の電力環境に適したノイズフィルタ)
まあ使うならこれが安全という事で
(参考図2)
コンデンサは片側無くても良い(全くなくてもいいけど^^)
(漏電問題を起こさない接続ができるノイズフィルタ)
このタイプのノイズフィルタは「中点」の接続を外すことにより危険回避は可能。
別にTOKINが憎いわけでもTDKの回し者でもなんでもないですよ、各社共に製品群は同じようなモノですから。
(かつてShinの提唱で定めた某業界でのEMC基準の一部)
コモンモードノイズ耐力 : 4KV以上(たしか矩形波インパルス50ns 注入相 0度~360度、
35ms反復だったかと記憶)
静電気放電耐力 : 10KV以上(CとRはたしか150PF 500Ωだったかと記憶)
これは現在でも不合格機器が出る値、20数年前としてはとんでもなく厳しい値です、「オーバースペックだ」という意見には「シャバでは確実に必要」である事を訴えて全てのOEM先(大手家電・OA機器通信メーカー数社含む)
に求め、これに満たない機器は試作機の段階で不採用とし、そのかわり機器の対策ポイントは細かく提示し、夢中でレクチャーして廻ってでも改善させていくしかデジタルの未来は折れて行くという切迫感の中で・・・夢中です。
各社とも、デジタルのハードとソフトウェアがあれば「イケイケ」だ。「アナログ技術」など過去の遺物としてスポイルしまくった時代、真空管時代から最後の一人になってもそれは絶対に違う・・・と強気になるしか本質が見えてこない。
考え方のイロハから説明してもなかなか伝わらない、「筐体構造」はEMCのカナメなのだが「分布定数回路上」で考える為一層意味不明らしい。だからやってみて結果を出して強制する以外にないと感じた。
あるOEMメーカー、品管・品証も ESD(静電気放電耐力試験)は「バンデグラフ法」でやってますと・・・何をシミュレーションしようというのだ、核兵器でもこしらえるのか?(何もやっていないのか、根本からズレている。)
・・・あきれてはいられない、検査基準も測定手法も変えさせた・・・現在、美人が液晶薄型TVを宣伝しているうちの1社ですぞ、どこもかしこもこんな具合。
この時代の業界全体のこの問題に対する思い違いと無理解は現在の比ではなく、どこへ行っても結論のみを求められる日々。
私の作業場は基板の切れはし、パスコン・デカップルの各種コンデンサ、アルミホイルテープ、未エッチング極薄基板、銅版、シールド網線、フェライト材、ジャンパ線クズ、そしてノイズ対策新材料といわれるサンプル達で埋め尽くされていき、棚には未対策マシンとバラバラになった対策途中のマシン。
測定台周囲は各シミュレータのラックに囲まれ、座るとまるで戦車のピットだ。
どんなに高度化しようともデジタル技術を根っこで支えてるのはまぎれもなく「ドロドロ」のアナログ技術なのです。
その頃、インパルス・ノイズシミュレータや静電気放電シミュレータ・VDSはあるものの、まだ機器内・基板上のノイズ分布を可視化する手法は一切存在せず、ノイズスペクトラム分布で基板の色でも変わってくれたら・・・といつも思っていました。
これは現在実現しています。
機器現物から分布定数の等価回路を頭に描き出し、元無線職人特有のカンも頼りに手を打っていくという誰にも説明できない方法、対策後に評価測定を行い、実施内容の正否を確認。
「バシッ」という音を立てて青白いスパークが走る、 「死ぬぞ・・・!」とは同僚、本人より周囲の方が恐怖に感じる高電圧静電気放電を繰り返したり、機器のACプラグから高電圧のインパルス・ノイズを加えて正常に動作している機器をわざわざ誤動作させるわけですから・・・
デジタル系の技術者達にそれは理解されるはずがなく・・・どこから見ても「奇術者」か「変人」、上司からは「会社で遊んでいるんじゃないのか?」だと・・・・
でも出してみたり、ひん曲がったスプーンでも転がしてみたら「やっぱりネ・・・」と云われそう。
でもShinさん、 ムチとロウソクは使いません。
そして、「一応入れてある」ようなノイズフィルタはしだいに無意味となっていった。
しかし、きっちりとEMC設計された機器では「ノイズフィルタ」はそれなりの雑音排除能力を数値で示してくれました、それだけです。
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【おことわり】
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★製作物・加工物の性能・機能・安全性などはあくまでも製作される方の責任に帰し、当方(Shin)ではその一切を負いかねます。
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