オレンジと太陽 | LIVESTOCK STYLE

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風琴工房詩森ろばのブログです。

イギリスでじっさいに行われていたという
児童移民。
「オレンジと太陽」は、
わけあって親元で育てられないこどもを、
オーストラリアに児童だけで移民させ、
不当なほど悪辣な環境に置いたとういう
歴史的事実を背景とした映画です。


なにか観るものないかなー、
と思って、
でもシネコンとかはゴールデンウィーク仕様。
シアターNやユーロスペースも
ピンと来る映画がやってなかったので、
岩波ホールはどうだろうか、
と調べてみたら
この映画をやっていたので見てまいりました。


これはこの映画とは関係ありませんが、
映画ってそういう選び方ができるのが
いいよね、と思います。
具体的にこの映画観るぞ、というときは
べつにして、
特に観たいものはないけど今日映画が観たい、
というときは、
いつも好みの映画をかけている映画館を
調べてそのなかから選ぶ、
つまり映画館自体がちゃんと掛ける映画を
選んでいるということですものね。



というわけで、
今朝まではその存在さえ知らなかった映画を
観てまいりました。
この題材ならいくらでもセンセーショナルに
できるだろうものを、
地味すぎるほど地味に、
そういったことを意志的に排除したことが
見てとれる
とてもいい映画でした。


そして、
わたしはこういう演劇が作りたいんだろうな
と改めて思うような映画でもありました。
事実をベースにしつつ、
俳優の限りない想像力によって、
事実よりも真実に近いのではないか、
とさえ思わせる、そんな作品。


主演のエミリー・ワトソンは
意思的で潔癖で、
素晴らしい存在感でしたが、
脇を固める俳優たちが
どのひともほんとに素晴らしい。
ドキュメンタリを見ていると錯覚するほどです。


監督のジム・ローチは
ケン・ローチの息子さんだそう。
劇場映画は初監督だそうです。
題材からカラフルな悲劇を想像する向きには
おすすめできませんが、
良質な、
もっと続きが観たいと思う、
とてもいい映画でした。
5月いっぱいはやってるみたいです。
つぎの「キリマンジャロの雪」っていうのも
おもしろそうだったな。
岩波ホールはハズレがほんとにないですね。


昨日はとっても混んでましたが
そのほとんどが年配の方たち。
こんな良質の映画をかける映画館を
見過ごすテはないぞ若者よ、
と言いたい詩森です。