第9地区 | LIVESTOCK STYLE

LIVESTOCK STYLE

風琴工房詩森ろばのブログです。

どんな内容かもほとんど知らずに見たのですが、
ほんとに素晴らしいのね。
はい。遅ればせながら「第9地区」を拝見しました。



南アの首都、ヨハネスブルグに
巨大宇宙船が停泊。
そこには労働者層と思われるエイリアンたちが幽閉されていて、
そのエイリアンたちの保護区となったのが
第9地区。



映画はエイリアンたちのこの第9地区からの移転を巡り
トラブルに巻き込まれた役人の男を主人公に
ドキュメンタリ映像、
監視カメラ映像、
実写のドラマを行ったりきたりしながら進みます。



見始めるとすぐ、
エイリアンというメタファーを借りて描かれた
南アのアパルトヘイトに関しての
フィルムだということはすぐに解るのですが、
それに甘えない態度が貫かれています。
エンターティンメントとしても完成度が高いし、
だからと言ってハリウッド的な二元論に落ちない
複雑な世界観の構成も凄い。
これは今までになく、
これからもおそらくはそうはない
SF映画を見ているんだな、
と誰でもが思うと思います。
いや。
サイエンスフィクション映画、
とカンタンにくくることもはばかられる
カテゴリなど
軽く越境していく映画なのでした。



監督はこれが第一作目だそうです。



わたしがいろいろ言うのはカンタンなのですが、
公開時には事件ともいうべきほどの話題作でしたから
いまさら作品の素晴らしさを並べ立てても
仕方ありますまい。



DVDには監督のロングインタビューが
併録されています。
これが本編に負けず劣らず見応えがある。
監督の哲学というものが、
作品にどれほどの深みを与えるものかが
如実に解ります。
映画館で見たよ、という方も
クリエイターならそれを、
見るだけでも借りる価値がありますし、
ぜひ見るべきと書いておきます。



この監督に共感するのは、
問題意識を深くもったうえでの
類いまれなるユーモアのセンス。
主人公の肉体が壊れる映像や、
アパルトヘイトを思わせる重い部分でも
おんなじようにかるーく
「おもしろいよね。」
で済ませちゃうところがいい。
創り手がくらーく深刻になっても世界は変わらないからね。
その覚悟も含めて、
見るべき映画でしたよ。



もちろん観終わったあと、
ベットのうえで飛び跳ねましたよ。
飛び跳ねましたとも。