半径5メートル | LIVESTOCK STYLE

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風琴工房詩森ろばのブログです。

半径5m以内の演劇を描く演劇はもういいんじゃないかって、いろんなひとが言っています。わたしも基本的にはそう思うのだけれど、でも結局ひとは、半径5m以内のことしか書けないのではないかとも思うのですね。その5mの範囲にあるものが、わたしは家族とか日常ではないだけで。

ガザ地区の痛ましい空爆が続いています。わたしはたとえば自分の失恋よりも、そういう世界の矛盾について考えることのほうが多いし、それを半径5m以内に感じる人間です。重いとも思わず毎日毎日考えている。考えていない人生はもはやわたしの人生ではない。

その分、じっさいに5m以内にあるもの。家族や友人や、それにまつわるさまざまな日常にはほとんどなんの関心もないと言ってもいい。愛情が薄く、とても淡白で、ときに残酷でさえある。

わたしのまわりにいるひとたちは、あんなヒューマンな芝居を書いてるのに、人間性に問題がありすぎる、と思っていると思います。客観的にみて、それはまったく正しい。まあ、でも、物書きなんて、だいたい、そんなものでしょう。

なので、わたしは劇作家はじぶんの半径5m以内にはなにがあるのかをしっかり見極め、そのことのプロになっていけばいいのではないかと思う。ささやかな日常を描いた芝居でもいいものはいいし、どんなにセンセーショナルな社会的テーマを扱ったって、ダメなものはダメだ。ただでもときどき、少し遠くのことも考えてみる。あるとき、それが半径5m以内に入り込んでくることだってあるかもしれないし、じっさいわたしにはなんどもあった。そして何を書こうと、それがほかのテーマに較べて優れているものだなんてことはないんだよ。そこ。かんちがいしちゃいけない。何を書くか、ではなくいかに書くか。いかに書くか、書いたか、にはもちろん、優劣がある。

資料、読んでいると、いままでにわたしが知らなかったモノの尺度を教えてくれます。今回も夢中で取り組める作品に出会えたみたいで、このことに関してだけはほんとうに運がいい。そして、わたしはほんと書くことに育てられているんだな、と思います。

そして今年からは、もう少しまわりの人間関係に愛情を持とう。
持たなきゃ。