TPP交渉参加問題も一息つき、大手紙が再び矛先を原発再稼動に向けつつある。

号令をかけたのは「原子力ムラ新聞」に属する産経新聞である。先日の大飯原発の稼動が9月定期検査まで継続されることを受けての主張が下記となる。

産経新聞3月22日:大飯運転継続 現実的な判断を歓迎する

冒頭から、大飯原発の再稼動が9月まで継続されることで「心配されていた今夏の近畿圏での電力不足が回避される見通しだ。」との主張をしている。

しかし、昨夏の需要ピーク前に電力供給が大幅低下した事実を忘れてはいけない。

関西電力は、昨夏に大飯原発3号機(118万KW)がフル稼働となる前日に、火力発電所6基(計300万KW)の稼動を停止していたのである。

つまり、昨夏は大飯原発2基(計236万KW)を稼動した代わりに、火力発電所6基(計300万KW)を停止して需要のピークを乗り切ったのである。

これは、昨夏に差し引きで計64万KWつまりは全電力供給量の約2%強を減少させても、電力不足とならず電力需要のピークは賄えたということである。

また、節電目標は2010年を基準に算出しているが、2010年は記録的な猛暑だった年であり、例年よりも10%程度ほど電力需要が伸びたのである。

つまり、2011年も2012年も2010年度比で15%の節電目標であったということは、例年通りであれば5%の節電目標ということになるのである。

これらより、2013年も例年通りの暑さとなれば、全原発の稼動を停止したとしても、理論的に3%の節電目標を掲げれば乗り切ることができるのである。

さらに、関西電力以外は節電目標を自主目標としても問題ないということになる。

このことを踏まえれば、産経新聞の「他の原発を秋にも再稼動すべき」や「規制委員会の審査日数が長すぎる」などの主張はナンセンスと言えるのである。

やはり、産経新聞が主張する「電力会社ありき、原発再稼動ありき、原子力ムラありき」の論調は、既得権である原子力ムラの本音を代弁しているのである。

産経新聞については、2月にも「原子力ムラ新聞」の双璧を成す読売新聞とタッグを組んで、連日に亘って下記の原発再稼動キャンペーンを張っている。

参考記事:原発再稼働のため安全基準を下げろ、福島原発事故を全く反省しない読売新聞と産経新聞

参考記事:暫定的に原発を再稼働しろと産経新聞、原子力ムラを規制委員会に参画させろと読売新聞

参考記事:発送電分離に反対して原発再稼働を催促、電力会社の利権を保守する読売新聞と産経新聞

おそらく、これから原発再稼動や電力改革において読売新聞も参戦するのだろう。

そして、読売新聞と産経新聞の「原子力ムラ新聞」が主張していることは、「安全基準を下げろ」「暫定的に再稼動しろ」「規制委員会を刷新しろ」「発送電分離をするな」「電力会社を潰すな」などとなるのである。

本日の産経新聞の主張は「発送電分離を先送りして原発を再稼動しろ」であった。

産経新聞3月25日:電力制度改革 取り組むべき順序が違う

もはや、原子力行政が立ち行かずに電力会社が潰れるという悲壮感が漂っている。
おそらく、いくら訴えても発送電分離と電力自由化が変わらない流れなのだろう。

これら産経新聞の言い分からは、できる限り早期に原発を再稼動させて、原発が必要不可欠であることを既成事実化して、原発ありきの電力自由化と発送電分離に電力制度改革することを目論んでいることが窺える。

なぜなら、現在の状態のままであれば、3年後に電力自由化、さらに5年後に発送電分離が進んでいけば、コスト高となる原発事業は止めざるを得ず、これに伴って電力会社が経営危機から統廃合が進むからである。

さらに、原発を再稼動するための大義であった「電力の安定供給」も、3年後5年後と月日が流れる毎に、拠り所とならない可能性が高くなるからである。

なぜなら、数年後は確実に省エネ家電の普及で電力不足が解消されるからである。

一般家庭における電力消費で上位を占めている家電は、冷蔵庫14%、照明13%、テレビ9%、エアコン8%で4割以上となっているが、それぞれでエコ家電の普及が進めば消費電力が削減されているのである。

エコ家電を10年前の家電と比べてみれば消費電力の削減幅が、冷蔵庫では年間50%、照明では年間80%、テレビでは60%、エアコンでは20%となる。

また、一般家庭における電力消費で上位を占める家電の普及率が、冷蔵庫では50%、照明では20%、テレビでは50%、エアコンでは50%となる。

これから少なくとも数年後に一般家庭の消費電力の約2割が削減できるのである。
再生可能エネルギーとスマートグリッドが普及でさらなる消費電力の削減となる。

このことを勘案すれば、今年も実施されるであろう関西電力の15%の節電目標を上回る20%以上の消費電力の削減が実現することになるのである。

つまり、産経新聞が煽る「電力の安定供給」も数年間しか通用しない理屈となる。

福島原発事故により国民が原発について認識したことは、原発が全電源で最もコストが高い電源であることと、最もリスクが高い電源であることなのである。

今年で「原子力ムラ新聞」の電力不足を煽る報道が3度目となるが、この報道が無力化され「原子力ムラ新聞」が「狼少年」だったことを実証する日も近い。

国民のため安全で安心で安価な電力供給体制を実現するなら原発は不必要である。



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