もはや読売新聞と産経新聞を「原子力ムラ新聞」と認定しても許されるのだろう。

片や「電力会社が潰れるから暫定的に原発を再稼動しろ」、片や「安全基準が厳格すぎるから規制委に原子力ムラを入れろ」の主張を国民に披露したのである。

産経新聞:電力の大幅赤字 暫定再稼働の道はないか

読売新聞:原子力規制委 組織の運営方法に問題がある

これは「電力会社ありき」や「原発再稼動ありき」の発想で時代錯誤と言えよう。

そして、福島原発事故原因の「規制当局は電力事業者の『虜(とりこ)』」を扇動したのが、読売新聞や産経新聞など権力迎合新聞であったことを意味する。

権力迎合新聞は、電力供給不安を煽り、電気料値上げ不安を煽り、暫定的な原発再稼動すべき、安全基準を引き下げるべきとの偏見報道で世論を誘導するのだ。

偏見報道が示すものは、電力会社は絶対に潰さない、原子力ムラは絶対に解体させない、年間数兆円の既得権を絶対に死守するという意思の表れである。

もちろん権力迎合新聞が偏見報道する直接的な要因は、電力会社から既存メディアに流れる年間1000億円近い広告費の削減を阻止するためとなるだろう。

去る2月1日にも、読売新聞と産経新聞が揃って「原発を再稼働するために安全基準を下げろ」との主張をしたことから、相当な焦りを感じているのだろう。

参考記事:原発再稼働のため安全基準を下げろ、福島原発事故を全く反省しない読売新聞と産経新聞

この理由には、原子力ムラが解体せざるを得ない方向で進展していることがある。

去る1月31日に電力9社の連結決算が出揃い、2013年3月期通期の最終赤字額は電力9社合計で1兆円超の見通しとなったことが発表されたのである。

これには、電力会社が業績回復したくてもできない、原発を再稼動したくてもできない、電気料金を値上げしたくてもできない事情を抱えているのである。

まず、原発の再稼動については原子力規制委員会の田中委員長が、新安全基準を世界最高水準を目指すこと、電力会社の事情を考慮しないことを述べている。

この結果、原発の安全基準をクリアするため多額の設備費用が必要になり、最終的に原発が割安ではなく割高な電源となることが結論として出たのである。

その結果、原発を稼動させるより廃炉するほうがコストが安くなる、原発を稼動させるより廃炉するほうが電気料金が安くなるという矛盾を抱えたのである。

ある意味、総括原価方式と地域独占という電力業界の構造的欠陥が晒されたのだ。

次に、電気料金の値上げについては電気料金の値上げを審査する専門委員会で、電気料金の原価が適正に計算されているかを検証している最中である。

途中段階で明らかになったのは、顧問や相談役の給与が含まれたり、稼動が未決定の原発工事費が含まれたり、給与水準が民間企業よりはるかに高かったり、赤字企業ではあり得ない大甘で緩々のコスト削減だったのである。

その結果、コスト削減せずに電気料金だけ上げたい電力会社と、電力料金を上げるならコスト削減を要求したい国民との間に大きな溝が生まれたのである。

ある意味、潰れないことが前提で経営する電力会社の構造的欠陥が晒されたのだ。

これらより、読売新聞や産経新聞など権力迎合新聞が必死に偏見報道を繰り返すのは、「総括原価方式」「地域独占」「潰れない電力会社」を守るためとなる。

その必要十分条件が、「安全基準を引き下げ早期に原発を再稼動させる」である。
今回の産経新聞と読売新聞の主張も、正にこのことを訴えていると言えるだろう。

まず産経新聞は、安倍総理に対して、安倍総理は「原発ゼロ政策」を「ゼロベースで見直す」と約束したから、電力の安定供給と日本経済再生のため、早期再稼働の実現してほしいと訴えているのである。

しかし、これは自民党の政権公約を無視して民意を無視する主張をしているのだ。
自民党の政権公約では、原発の再稼動について下記のように訴えているのである。

『原子力の安全性に関しては、「安全第一」の原則のもと、独立した規制委員会による専門的判断をいかなる事情よりも優先します。原発の再稼動の可否については、順次判断し、全ての原発について3年以内の結論を目指します。安全性については。原子力規制委員会の専門的判断に委ねます。』

このことを踏まえれば、「まずは暫定的基準で再稼働を進め、安全性を段階的に引き上げる」との発想が出ること自体が、政治を混乱に陥れる元凶と言える。

次に読売新聞は、原子力規制委員会の田中委員長に対して、過去の原子力規制に携わった専門家を排除せず、審議組織に加えてほしいと訴えているのである。

しかし、これは先日発覚した原子力ムラと規制庁の癒着問題を無視しているのだ。

参考記事:原子力ムラと原子力規制庁が癒着、幹部職員が日本原電に敦賀原発の断層評価を事前漏洩

読売新聞の過去の原子力規制に携わった専門家とは、福島原発事故原因の「規制当局は電力事業者の『虜(とりこ)』」で虜になった専門家ということである。

つまり、福島事故以前の形態に戻して原発を再稼動すべきと訴えているのである。

このことは、率先して、原発事故原因を追究して、原子力ムラの闇を解明して、原子力政策の現実を国民に伝える報道機関の役割を放棄していると言える。

もはや読売新聞と産経新聞を「原子力ムラ新聞」と認定しても許されるのだろう。

既得権の主張をすることは勝手なのだが、民意を無視した主張を繰り返しては、広告費は稼げても販売部数は減り続け、自分で自分の首を絞めることに等しい。

「安全が確認できない原発を稼動すべきではない」との考えは国民の総意である。

この大前提を崩さず、「総括原価方式」「地域独占」「潰れない電力会社」とこれまで築いた既得権の聖域にメスを入れて、原子力ムラを解体すれば電気に対する安全・安定・安心は担保されることになろう。

その第一歩が、原子力規制委員会が新安全基準を世界最高水準にすることである。


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