ドバイ旅行記②
2日目結局、夜バーで飲んでからホテルに戻ったのは11時30分過ぎで、寝たのは1時になってからだった。前日最初からかなり飛ばしたこともあり、目覚ましが鳴っても起きることができず、結局目覚めたのは10時になってからだった。しかし、程よく冷房の効いた部屋で眠ることができ、体調はここ3カ月ほどで一番良いのではないかと思えるほどまで回復しているように感じる。ちなみにホテルのエアコンは希望温度を設定することができ、その設定温度を超えたときのみ冷房が作動し、またその温度まで達すると停止するという非常にハイテクなものだった。部屋でコーヒーを飲むと、町へと買い物に出た。ドバイで行きたかった場所の一つに、日本では百円均一として有名なダイソーがある。なんとドバイ中に5店舗以上を構えており、近くのデイラ・シティー・センターにも入っているとのことだったが、それを知ったのはブルジュマンという場所にあるショッピングセンターに着いた時のことだった。グーグルマップも常に最新を示しているわけではない。ドバイは本当にショッピング天国で、規模の差こそあれほぼ全ての主要駅の近くにモールがあると言っても過言ではない。こんな町は世界でも他にないだろう。ダイソーが入るそのショッピングセンターは、他と比べると人の入りも多くなく、割と小さめのものだったが、それでも大垣市で一番大きなイオンショッピングセンターよりも大きいものだ。様々な専門店が入っており、ダイソーは3階にあった。一体どんなものが売っているのだろうと思っていたが、なんとほとんどが日本で売っているものと同じだった!商品名は日本語で書かれており、ここが日本だと言われても全く違和感がない。ここではルワンダに帰った時のことを考えて、サングラス、卵焼き用のフライパン、背中かき、お風呂用品などを中心に買い込んだ。やはり日本の製品とあって、きめ細かくて便利なものが多い。ダイソーを出た後は、タクシーをつかまえて日本食品店である「Fujiya」へと向かった。隣接しているはずの隣のフジヤ・レストランは廃業していたが、食料品店の方はそのままやっていたので助かった。これで、もしここも倒産とかだったら、ドバイに来た目的の4分の1くらいが消え去ることになってしまう。それにしても、ある程度有名だったはずのFujiyaが閉店に追い込まれるとは、ドバイはけっこう日本料理屋の競争が激しいのだろうか・・・ロンドンの日本食材店「ライスワインはうす」は、店員の態度がかなり悪かったので、ここもそうかと思っていたが、日本人がいないからか、みなフレンドリーだった。段ボール箱が欲しいと頼んだところ、空いているものをプレゼントしてくれて、漬物、インスタントラーメン、豆腐、味噌汁、柿の種などをはじめとして買おうと思っていた日本食材はほぼ全て買うことができたので満足した。アフリカから来たと言うと、アフリカのお客様は梱包について心配する人が多いと言われたので、アフリカからドバイまで買い出しに来る人も一定数はいるのだろう。任務を終えてホテルに戻ると13時30分だったので、近くの日本料理屋でランチすることにした。店の名前は「Itamae」。一体どんな感じなのだろうと思って足を踏み入れると、プロレスラーかと思えるよなゴツい男たちが食事をしているではないか!しかもみな店のTシャツを着ているのを見ると、少し早めのまかない飯のようだ。もう閉店しているのか?と思って聞いてみるとランチビュッフェはまだ続いており、ひとり45ダラム(約1300円)とのこと。メニューを見ると寿司、天ぷらなどが並んでおり、何の迷いもなくこの店に決めた。実際に食べてみると、味も悪くなかった。寿司はマグロとサーモンの二種類しかないが、新鮮で美味しかったし、海老天も、若干衣が多いことを除けば実もしっかりしていた。他にもエビを使った炒め物やタルタルソースを付けて食べる魚のフライ、巻物もあり、相当満足することができた。まさか、適当に選んだホテルの近くにこんなお値打ちな日本食があるとはびっくりだ。しかし、もっと可愛い女性を使えば良いのに、何故あんなゴツい男ばかりなのだろうか・・・中には相撲取りのように太った男性もおり、日本食にしては店員の雰囲気が威圧的過ぎるようにも感じる。15時30分にピックアップがあるデザート・サファリまではまだ時間があったので、デイラ・シティ・センターまで行き、昨日見つけた卓上扇風機やビーチマットを買うことにした。卓上扇風機は職場の暑さ緩和に、そしてビーチマットは、湖へのピクニックに必須のアイテムだ。その他にも大き目のサランラップ、銀紙、そうめんのつゆなどを買い込んで時間通りにホテルに戻ると、すぐにピックアップが来た。寝坊でかなり出遅れた割にはうまく巻き返せていると思う。そしてこのデザート・サファリこそが今回の旅行で、ブルジュ・ハリファに次ぐ、第二の目玉と言っても過言ではない。内容は、ドバイ郊外の砂漠をランドクルーザーで疾走した後、キャンプサイトに到着し、ラクダに乗り、夕日とダンスショーを見て、バーベキューを食べるというものだ。このツアー、実はピックアップされてから、砂漠に着くまでが非常に長く、だいたい1時間30分くらいかかった。しかも、ピックアップが最初だったため、最後の3組目が乗るまで約40分間ドバイの町を走り回った。しかしこれはこれで良かった。メトロからはわからないドバイの姿を見ることができ、この町の整ったインフラを目の当たりにした。ドバイはほとんどが4車線か5車線になっており、高級車が走りまわっている。どうやら公共交通機関を使うのは労働者が主のようで、ある程度の金持ちはみな車かタクシーを使っているように感じる。このツアーにはほかに2組が参加しており、ひとりはサウジアラビアで働いているフィリピン人の女性、もう一組は、サウジアラビアから休暇でやってきたという家族4人組だった。はじめ、家族の構成が父、母、娘2人だと思っていたが、実は母、兄、妹2人だった。男性には少々失礼だが、到底25歳の大学院生には見えなかった。男性はサイードと言い、ロスで修士課程に在学しており、今は休暇で国に帰っているのだという。おかげで見事な英語を話していた。彼曰く、中東の人の休暇といえばドバイらしく、自身もドバイに来るのは4回目で今回初めてこのツアーに参加したらしいが、デザート・サファリは、何もUAEだけではなく、ほかの中東の国でもよく行われているアラブの文化ということだった。彼にはサウジアラビアのことをいろいろと聞いたが、酒は国内に持ち込むことも、飲むことも禁止のようで、酒を飲んでいるのが見つかったら逮捕されると言っていた。UAEは、逮捕などはされないので、ここでもサウジがいかに厳格なイスラムの国かがわかる。しかし、そんなサウジも最近は国の発展を優先させるために、日本や中国といった先進国からの投資や人材を積極的に受け入れているようで、2~3年後には、一般旅行者も普通に観光できるようになるのでは?と言っていた。特にサウジの魅力としては「イスラム・ツーリズム」が考えられ、イスラム教について外国人に理解してもらうためのツアーが組めるのではないかという考えを聞かせてくれた。そうこうしているうちに、車はドバイ中心部からかなり離れた場所に到着し、ここからデザート・サファリが始まった。ここでいよいよランドクルーザーの真価発揮といったところで、土煙を上げながら砂漠の中を疾走していく。車が傾いて転がるのではないかというシーンもあり、迫力満点だった。それまでずっと一言も発せずに静かにしていたサウジ家族の妹たちもここばかりは嬌声を上げていた。周りには同じようなツアーのジープがたくさんおり、合計で50台くらいになるのではないかと思えるほどだった。もちろん互いに場所は接近していないためそれほど手狭には感じないが、これがいかに人気のツアーであるかがわかった。だいたい1時間弱デザート・サファリを楽しんだ後は、近くにあるキャンプサイトへと向かった。ここではラクダに乗ったり、馬に乗ったり、バギーに乗ったりするのを楽しめるが、どれもチップを要求してきそうな気配がプンプンしたので、馬だけに留め、あとは日蔭になった場所で本を読んだりして涼しくなるのを待った。だいたい6時30分にもなると、陽射しがかなり和らぐので、砂漠へと向かい、サンセットの様子を眺めていた。広大な砂漠に、だんだんと色をオレンジにした太陽が沈んでいく様子を見るのは圧巻だった。自然とと心が安らいでいくのを感じる。今日も、殺人的な太陽の光に照り付けられた、暑かった一日が終わるのだ。上空を見上げると、A380やB777をはじめとした大型機が旋回し、ドバイ国際空港に向かっているのが見えた。そして、次第に空と太陽はその色を濃くしていく・・・7時を過ぎると太陽は地平線スレスレまで落ちてやがて濃いピンク色の光を残して全て見えなくなってしまった。すると、心なしか吹き付ける風にも涼しさが含まれているように感じられた。砂漠に吹く風はドバイ中心のそれよりも乾いていて心地よい。陽が暮れたのを合図に、キャンプサイトではベリーダンスやファイヤーダンスなどのショーが始まり、ディナーの時間となった。この時間になるとコーラやファンタなどのソフトドリンクも飲み放題となり、これらでのどを潤した。ビールを飲むのは、今日も夜のバータイムまで取っておくことにしよう。デザート・サファリはもっと高いと思っていたが、払ったのは正味145ダラム(4500円)なので安く感じる。ひょっとすると、ツアーで参加していると思しき日本人はこれの倍くらいは払っているのかもしれない。ベリーダンスやファイヤーダンスはダンサーの質も良く、かなり見応えがあった。特にファイヤーダンスは、男がスレスレのところで火のついた棒などを振り回し、大きな歓声が上がるシーンもあった。他方、食事もアラブ料理のバイキングでなかなかのものだった。アラブ風のサラダや前菜などを取った後は、鶏肉とラムのケバブがひとり一本ずつもらえ、お腹もいっぱいになる。これまでアラブ料理を食べていなかっただけに、形だけでも食べることができて満足だ(しかしアラブ料理はバリエーションが非常に乏しく、それほど魅力的な料理もないのは事実だが)。ここまで旅行して思ったのだが、特にアラブ圏では、ひとりで旅行するなどということはほとんどないらしく、みな家族や友人、もしくは恋人同士で旅行しているので、ひとりで旅行していると言うと理由を聞かれ、「友人と行く予定だったが、彼が仕事でこれなくなったためひとりできた」というと、みな悲しそうな顔をして「Oh, I feel so sorrry」と言われる。女性の場合は特に一人旅など珍しいらしく、同じツアーに参加していたフィリピン人女性は至るところでそれを聞かれているという。ちなみに彼女は7年間付き合ったボーイフレンドがいたらしいのだが、別れてしまって仕方がなく一人で来たという。帰り道、流れゆくドバイの夜景を見ながら、次にドバイに来るときは少なくともほかの誰かと来ようと思った。