1分で読めるショートショート&ショートストーリー 『エキストラ人生』 -1032ページ目

倦怠期

結婚して、今年で12年。


私はそろそろ、夫と一緒に寝ることに限界を感じている、
40歳の主婦である。

 

新婚時代は、腕枕なり抱き合うなり、
色々サービスしてくれた夫も、
ここ5年、エッチどころかチューすらしてくれない。

 

 

それどころか、毎晩毎晩至近距離で、
でかいイビキと、くっさい寝屁をこく。

 

 

私をオンナだと思っていたら、
とてもじゃないけど出来ない行為だ。

 

もう、いい加減にしてほしい。

 

世の中の夫婦間による犯罪の2割は、
夫が妻を異性として扱っていないことによるものではないかと、
私は真剣に思っている。

 

 

ネコのミーが、ニャオンと鳴いて2人の寝室に入ってきた。

 

 

「ねぇ、あなた」
私は、ベッドライトで本を読んでいる夫に声をかける。

 

 

「悪いけれど、隣の部屋で寝てもらえない?」

 

 

夫が、まじまじと私を見つめた。
「なんで、また?」

 

 

なんで、じゃないのよ。

 

「イビキとオナラのことは、前に話したでしょ」。

 

「どうして俺が?お前が出て行けよ」。

 

 

つまらない夫婦ゲンカが、始まりそうだ。
ミーをそっと抱き寄せる。

 

 

「とりあえず、今夜は私、ミーと一緒に寝るから
あなたはとなりの部屋で寝てよ」

 

 

私は、夫に客用のふとんを投げつけた。
夫は、悪態をつきながら出て行った。

 

翌朝、ひさしぶりに快眠できた私は、
めざめよく起きた。

 

 

「あれ?」
横で寝ているはずのミーがいない。

 

「夜中、オレのところへ来たよ」
ミーを抱いた夫が、ドア付近で勝ち誇ったように笑っていた。

 

 

「お前の歯ぎしりに、一人では耐えられなかったんだろうな」