「二歩前を歩く」 石持浅海 光文社 ★★☆ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

小保方晴子さんの記者会見を見た。


たまたま休みで家にいたから何となく見ていたが、


正直、僕にはSTAP細胞がどういうものか正確にはわかっていない。


何となく、ぼんやりと理解しているだけだ。



その程度のものだから、それが嘘だろうが本当だろうが、


正直、どうでもいい。



STAP細胞が存在して、今まで治らなかった病気の人が治るようになったら、


それは素晴らしいことだと思うけれど、


STAP細胞が嘘だったからと言って、僕に何か迷惑がかかったわけでもない。



世間の大半の人たちにとって、STAP細胞はそういうものであるはずなのに、


なんでこれほど大騒ぎをするのだろうか。



街頭インタビューに答える一般市民や、テレビのコメンテイター、雑誌記者たちなんかは、


彼女に何か迷惑でもかけられたのかな?



まあ、それはさておき。


小保方さんとはかなり違ったタイプの科学者が主人公のお話。




スリッパが勝手に歩く?

留守の間に風呂場の照明が点く?
現代科学では説明のつかない不思議な出来事。
幽霊のしわざか、はたまた超常現象か?
そこに隠れた法則を見つけ出したとき、意外な真相が浮かび上がる。


二歩前を歩く



幽霊がいないと信じることと、


幽霊を信じないということはまったく別物だと言う科学者、小泉。


小泉は、科学でわからないことなどいくらもあると知っているから、


超常現象をあるがままに受け入れ、


それはそれとして、その超常現象が起こるルールを見極めて、


その発生条件を探る。


超常現象のメカニズム(ハウダニット)は無視して、


なぜそれが起こったか(ホワイダニット)のみを追求する。


そういうミステリである。



たとえば、密室なんかは「どうやって作ったか」よりも、


「どうして密室にしなければならなかったか」のほうが重要だと僕は思っている。


どうやって作ったかなんてのは、針と糸で十分。


それよりも、どうして密室を作ったかその理由に意外性があったほうが楽しい。



でもこの短編集に関して言えば………、


超常現象の起こる理由が斜め上過ぎてちょっとついていけない。


石持ミステリの「動機」は独自性が強すぎて、共感ができないことが多いんだよなあ。



もう少し、そのあたりに論理性があれば面白かったんだけど。