アトリビュート | スーラ・ウタガワの「画家ごっこ雑記帳」

スーラ・ウタガワの「画家ごっこ雑記帳」

画家ゴッホではありません、画家ごっこです。

浮世絵名所の再発見をコンセプトに自分の気に入った名所を探して油絵を描いています。

そんなリタイア後の画家ごっこライフや、美術についての受け売り雑話をアップしているブログです。

私も”ごっこ画家”として絵を描き始めたからには、

それなりに美術の本なんぞを見ることもあるのだが、

なかなか理解できない美術用語もある・・・

(陰の声:な~に言ってんの、ほとんどわからないくせに。)

コホン、そんなわけで、私も勉強することにしたのだが

ふと、気づいたね!?

これをブログのネタに加えよう、どうせ読者の方も

知らない方が多いだろうから(失礼!)多少いいかげんでも

構わないだろうし・・・


そこでネットのフリー百科事典ウイキペディアにならい

”美術ことばSeuratpedia"(スーラペディア)を

私のブログのテーマに加え、受け売りウンチク解説を書いて

ときどきアップしようと考えました。

皆様一緒に勉強しましょうね。

(陰の声:また、長いブログになる予感が・・・)


では、最初は、前のブログ「大画家をまねた大画家」で少しふれた

”アトリビュート”のおさらいからスタートしたいと思います。


アトリビュート ( attribute )

原義は「特質」、美術に表現された聖人や神話の神々、擬人像を

判別する目印となるもの。新旧聖書やギリシャ・ローマ神話に

由来があり、子供の頃から聖書や神話に親しんでいる欧米では

常識の知識とされているが、なかなか日本人には敷居が高い。

まあ、簡単な事例をあげるので勉強のきっかけにしてね。

赤い衣にブルーのガウンは聖母マリア

ラファエロ・マリア
美しき女庭師<聖母子像> (油彩・1508年頃)
ラファエロ  

赤色の服にマントはくすんでいるが青色の女性はもちろんマリア、

下にいる子供のうち、一人はイエスだが、もう一人は誰?

これも持ち物でわかります。ラクダの毛皮の衣に葦の十字架を

持っているのは洗礼者ヨハネと決まっているのです。

エルグレコ・受胎告知
受胎告知  (油彩・1603年頃)
エル・グレコ

ラファエロの絵から約100年後に描かれた絵だが、やはりマリアは

赤い衣に青いガウンを着けてる。さらにこの絵は受胎告知を示す

必須アイテムがいっぱい描かれているよ。

まず、右側にいるのが告知をした大天使ガブリエル(百合の花が

アトリビュート)、白い鳩は聖霊を、マリアの読んでいる本は

救世主の誕生を預言する旧約聖書のイザヤ書、右下にある花瓶の花は

マリアの純潔をあらわす百合の花だ。

そして、天上からの光と受胎告知のアトリビュートがすべて

描かれている作品だそうです。


イエスの弟子、十二使徒もみんなアトリビュートを持っているよ。

ペテロ磔刑
聖ペテロの磔刑 (油彩・1610年)
カラブアッジョ
(十字架に逆さに磔にされて処刑されようとしている絵)

ペテロは教会を建てよとキリストに命じられたことから、

天国の鍵がアトリビュートだが、ローマで逆さ十字の磔刑になった

ことから逆さ十字架もアトリビュートになっている。

ちなみに、現在のバチカンのサン・ピエトロ大聖堂は殉教した

ペテロの墓の上に建てられたと言われている。。


その他の使徒たちもみんなアトリビュートを持っているのですが、

長くなるので代表例だけ述べます。


聖トマス :復活したキリストの脇腹の槍傷のあとを確認した使徒、
      また、インド布教中に槍に刺されて殉教したので「槍」

聖フィリポ:布教に行ったスキタイで十字架で竜を撃退したので
      「十字架」と「竜」

聖マタイ :元徴税人なので「財布」また、複音書マタイ伝を書いた
      ことから「書物とペン」
    
 

ギリシャ・ローマ神話のアトリビュート

カバネル・ビーナス
ヴィーナスの誕生 (油彩・1863年)
アレクサンドル・カバネル


女性が海で溺れている絵ではありません。

上空にキューピット達が飛んでホラ貝を吹き鳴らして

ビーナスの誕生を祝福しているのです。

愛の女神ビーナスにはキューピット、定番ですね。

この絵には描かれていませんが、リンゴ・薔薇・鳩・ホタテ貝

・白鳥などもビーナスを示すアトリビュートです。


では、ギリシャの神々のアトリビュート例も少々・・・

ゼウス(全能の神):雷(稲妻)・王しゃく・鷲

ポセイドン(海の神):三叉の矛・馬

アポロン(太陽の神):弓矢・竪琴・月桂冠

バッカス(酒の神):葡萄の蔦の冠・葡萄の房・山羊・豹など


一昔前までの西洋画はアトリビュートを前提にして描かれているので

欧米の人には絵の内容が理解でき、より楽しめたが、

われわれ東洋の人は、さっぱり意味がわからず、ただリアルで

暗い絵だなという感じであった。

だから、日本では明るくわかりやすい(見たまま・単純?)

印象派の絵が人気だ!という説もあります。

まあ、これから宗教画や神話画をご覧になるときの参考にして

いただければ嬉しいです。


でも、日本の絵や彫刻でもアトリビュートはあるよ、

たとえばお地蔵さん(地蔵尊)は錫杖(しやくじょう)をお持ちですし、

薬師如来には薬壺(やつこ)が描かれているはずです。

これらは持物(じもつ)といいますが、まさにアトリビュートの

適切な日本語訳ですね。


今回は新テーマの挨拶もあったので少々長くなりましたが、

これからはできるだけ簡潔にこの”美術ことばスーラペディア”を

ときどきブログに混ぜて行きたいと思っています。

(陰の声:ネタが増えてよかったね、でも簡潔に頼むぜ。)

     
         <美術ことばSeuratpedia "アトリビュート":了>