税務調査の撃退法・9.【実例】税務調査結果説明(前篇)・絶体絶命 | 税務調査専門の公認会計士・税理士、たけよしのブログ

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請願書提出から二カ月後、B統括官から調査が終了した旨の連絡があった。




代理人が結果だけを先に聞くと、X氏のバンド活動は事業として認められない、という結論になったとのこと。




連絡から二週間後、税務調査結果の説明を聞くため、代理人はQ税務署を再び訪れた。




時を前後して、税務署内で人事異動があったため、R国税局査察部(マルサ)から異動してきたC統括官が説明を担当した。




(以下、税務調査結果説明でのやり取りになりますが、録音した情報を元に、なるべく生のやり取りを伝えたいと思います。)




C統括官によると、




「結論から言うと、Q税務署の調査結果としては、事業所得ではなくて雑所得という判断になっています。」


「B統括官から伺っておりまして、わたくし個人の判断ではありませんけれども、税務署として上も了解した上で事業所得ではないという判断をしております。」


「ご本人様にお話をしていただいて、修正申告という手続きでされるのか、申し訳ないんですけれども修正されないという事であれば、こちらの方で更正という手続きで進めさせていただきます。」


「内容を説明いただいて、手続きとしてどちらを選択されるかという部分で、ご本人様とお話をしていただきたいんですね。」




とのことであり、バンド活動が事業ではないという判断はQ税務署内の審査を通した結果であり、上(税務署長か副署長と推測されます)も了解した内容とのこと。




そして、修正しない場合は更正処分を下すとのこと。
修正申告=全面降伏、更正処分=税務訴訟(泥沼)への入り口、とお考えください。)




これにつき、代理人は以下の質問を行い、C統括官から以下の回答があった。




代理人「税務調査の手続きは全て適法かつ適切になされ、「本人のバンド活動の所得は事業所得ではなく雑所得である」という判断には寸分の疑いも無いということでよいか」


⇒C「はい。」




代理人「事業として認められなかった根拠は、営利性が無いという事か?」


⇒C「そうですね。一番大きいところはそこです。営利性と、当然いろいろ総合的に勘案した結果ですけれども、生活の経済基盤となり得ているかどうかで、勤務状況だとか(を考慮して判断している)。実際最初からですね、先生、経済的基盤になり得るとは思えないですよ。大変申し訳ない、例えばこれが、1期2期であればある程度しょうがない部分もあるんですけれども、申し訳ないんだけども、先生、4年前からですから。例えば、今改善されていますよと言う部分であれば(考慮できますが)、はっきり申し上げてライブだとかそういった数が増えてるとか、そういった部分ははっきり言ってないので。経済的にどうなのかと言ったら、お勤めの収入で生活されていると思われる。」


C「バンド活動を生活の基盤として持ってくるのであれば、当然利益追求していかないと。例えばバンド活動で食っていこうというのであれば、何らかの改善がされていないとこちらの方としては(事業とは言えない)。例えば、バンド活動の割合が変わる、お勤めの割合が変わる、と言った部分で今のところ見えていない。明らかに今の段階で、ライブをやった時に利益が出るような仕組みになっているわけですかね。ご自分で一番わかってらっしゃると思いますけれど。」


C「(給与所得の勤務先について)勤務日数が月に30日の内28日出ていますよとか、平均で月25・6日以上勤務されている、という部分を考慮している。」


C「利益が上がらない可能性はあるんです。お仕事なので、結果として利益が上がらない可能性はあるんだけれども、上げるためにやるんですよね?ですから、それを追求するから営利目的という話ではないんですかね?そこが、今の段階では見えてこないので。」




代理人「利益を追求していないように見えるということか?」


⇒C「そうです。一回のライブでわずかしか利益が上がらないという話をされていますよね。結局それを続けても、ライブで1回わずかしか利益が上がらない。そこから、交通費とか直接的な費用も含めて、年間50万円から100万円出ていくという。これは、通常の形態から一般的に見ても(事業とは)考えられないですよね。それが1期2期だったらわかりますよ。これから事業を拡大してという。それが、今の段階では利益が上がってくるという状況が無いですよね。」




代理人「だから、CDを発売してこれからやっていこう、という状況につながるんですけれども。」


⇒C「(半ば苛立ちをこめて)だから、今の段階ではそういう判断をしました。国税側としては。」




上記のとおり、C統括官には取り付く島がなかった。




【筆者コメント】


最終段階まで来ましたが、予想通りの税務署の対応です。




この後、判例や法律に基づいて営利性について説明し、Q税務署の営利性の定義に関する見解に誤りがあることを指摘しました




そして、誤った見解に基づいて営利性が無いと判断している以上、営利性が無いという判断自体に瑕疵がある、という主張をしています。




もちろん、結果説明時ではこの主張は無視されました




無視も予想通りですが、今回の主張に対しては自信を持っていますので、税務訴訟になったとしても主張できる質を維持しています。




たとえ無視されたとしても「事実認定や税法解釈で戦っている」という外観や姿勢を見せる意味で、意義のある対応です。




このように、正攻法で税法理論を展開したとしても、税務署の判断が変わらないことはご理解いただけたかと思います




C統括官の最後の言葉、「だから、今の段階ではそういう判断をしました。国税側としては。」に集約されていると思います。




こちらとしてどんなに理論を展開して否定しても、「そういう判断をした」と言われては対抗のしようがありません




言ってみれば、税務署として本来抜くべきでない伝家の宝刀を抜いたものであり(実際は頻繁に抜かれていますが)、「お前の言う事はこれ以上聞かない。素直にお上に従え。文句があるなら不服申し立てなり審査請求なり税務訴訟なりやって国と戦え。後は知らん」という威迫とも言えます。




前にも書きましたが、国対個人では絶対に分が悪いです。




それを税務署も分かっているので、否認の根拠がなくても税務調査を強制的に終わらせて否認の結論を出し、後は国に戦ってもらおうという作戦に出たわけです。




おそらく、Q税務署内の審査で「X氏と税務訴訟になっても国が勝てる」という審査結果が出たのでしょう。(話が脱線しますが、税務署の審査は「納税者の処理が税法に照らして適切か」を審査するのではなく、「訴訟になって国が勝てるか」を審査する部門です。)




問題は今後です。




この時点で、ほぼ全ての税理士が戦いを諦めます僅かの税理士は「不服申し立て・審査請求・税務訴訟」を考えます




しかし、他に有効な方法はあります




否認という結論ありきの調査でしたが、最終の結論を出してしまった相手をどう崩していくか、これまでいくつの武器を得たかで決まります。




詳しくは次回記載します。



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