税務調査の撃退法・10.【実例】税務調査結果説明(後篇)・起死回生の猛攻 | 税務調査専門の公認会計士・税理士、たけよしのブログ

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前回に引き続き、税務調査結果説明のやり取りを記載します。




まずは、勤務情報について攻撃をした。




代理人「国税通則法第74条の2第1項においては、質問検査の範囲として、「その者の事業に関する帳簿書類その他の物件」を検査し、又は提示もしくは提出を求めることが出来ると規定されています。


当該勤務情報は、本人の事業であるバンド活動において利用できる情報ではなく、本人が事業活動に際して作成または保管を義務付けられている情報でもなく、一般に通常人が保持し得ない膨大な情報です。


にもかかわらず、この勤務情報が「事業に関するその他の物件」であると判断した理由をご教示いただけますでしょうか?」



⇒C「そこは、先生あれですね。当然いわゆる、申告として、こちらとしては当然事業の確認だけではないですから、所謂申告の確認という意味で、事業区分の中で、事業に該当するのかそれ以外の区分に該当するかについて判断するうえで、必要になってくるから、確認申し上げているだけで、確認が必要なければ当然やりません。」




代理人「国税の調査の質問検査権の行使のところに、税務の職員は、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査、提示、提出を求めることができると記載されています。


帳簿書類その他の物件の提示を求めるにあたっては、「そのものの事業に関する」という限定が付されています。ですから、これを入手されたという事であれば、勤務情報がそのものの事業に関する帳簿書類その他の物件に該当するものと判断していることが前提になると思うんですけれどそれはいかがでしょうか。」




⇒C「そうですね、必要という判断で。」




代理人「いや、調査において必要かどうかではなくて。税務署が必要と判断するもの全てを入手できるわけではない、ということはご理解いただいていますか。




⇒C「はい。」



代理人「限定的に、事業に関する、帳簿書類その他の物件であれば入手できる、ということはご理解いただけていますか。」




⇒C「はい。」




代理人「今回、反面調査として本人の勤務情報を入手されましたよね。」




⇒C「はい。」



代理人「ということは、物件の提示を求めた、もしくは提出を求めたということですよね。」




⇒C「はい。」



代理人「となると、その対象になる物件は、事業に関する帳簿書類その他の物件に限るということですよね。つまり、この勤務情報が、事業に関する物件であるとご判断されているのが絶対に前提になると思うんですけれども。」




⇒C「・・・」



代理人「逆の聞き方をします。では、この本人の勤務情報は、本人の事業に関しない物件として入手を依頼されたということですか




⇒C「あの、いわゆる所得の確認の部分というよりは、所得区分の判定をするのに必要な書類ということで判断して、当然、こちらの方で確認をしたつもりです。




代理人「では、所得区分を判定するにあたって、入手できる物件というのがどこに書いてありますか?


所得区分を判定する目的であれば、税務職員はいかなる書類も入手することが出来ると、どこに書いてありますか?




⇒C「・・・」




代理人「国税通則法に基づいて、質問検査権の行使の一環として入手されているということは、絶対にこの法律の中のどこかに該当するものでないと入手できないはずですよね」




⇒C「・・・」




この後C統括官から、確認して後日回答する、という返答があった。




次に、共同事業者の個人情報について攻撃をした。




代理人「貴税務署の正式見解として、共同事業者の住所及び電話番号は、本人の「事業に関する帳簿書類その他の物件」に含まれる、という見解でよろしいでしょうか




⇒C「・・・これも後日回答いたします。」




代理人「貴税務署から送達を受けた「照会」文書の返答という形で、以前請願書を差し上げたんですね。


それに対して、貴税務署が当方に対して誠実に説明を行えば、当方は当該物件の提出を行った可能性があります


にもかかわらず、当方が照会に対する返答として提出した請願書に対する回答を拒否され、当該調査の必要性を説明することを放棄した合理的な理由をご教示ください。」




⇒C「・・・これも後日回答いたします。」



代理人「そもそも、この照会で提出を要請した共同事業者の住所及び電話番号は、本人に対する税務調査において絶対に必要で不可欠な情報であったのでしょうか?」




⇒C「・・・」



代理人「Yes以外あり得ないと思いますけれど。」




⇒C「はい。」



代理人「では、絶対に必要不可欠な情報であったという理解でよろしいでしょうか?




⇒C「はい。」




代理人「当該情報が必要不可欠であれば、今回の税務調査の結果である「X氏のバンド活動の所得は事業所得ではなく雑所得である」という判断形成の過程において、必要不可欠な調査が漏れていることとなり、必要な調査を実施することなく最終的な結論が下ったことになります。


照会に対する当方の回答を入手することなく、このような結論を下すことが出来た理由をご教示いただけますでしょうか?又は、最終的な判断を下すにあたって実質的に不要であった当該情報の入手を求めた合理的な理由の開示でも構いません。」





⇒C「・・・実際問題ですね、こちらに関しては、引き継いで書類を見た限りですが、この後、私どもの方で、Y氏とZ氏の課税の状況というのを確認させていただいております。(照会に対する)回答が無かったというように判断しているのですが、こちらについては国税の方で保有している書類について確認できる範囲で確認した結果、確認ができたと。」




代理人「つまり、それは我々に対し、「こういう調査をやって確認します」という情報を言わずに(確認を)されたということですよね?




⇒C「はい。そうですね。」



代理人「わかりました。事務運営方針に「調査について必要がある場合においては、質問検査等の相手方となるものに対し、帳簿書類その他の物件の提示を求めるときは質問検査の相手方の理解と協力を得て、その承諾を得て行う」と規定されていますが、相手方である我々の理解、協力、承諾は得なかったということですよね。




⇒C「はい。」




代理人「さらにおかしいのが、こちらから情報を提供することなく情報にアクセスされたということですけれど、それができるのであれば、なぜ、この照会を出されたのですか?聞く必要が無かったですよね?」




⇒C「私が来る前の話ですが、その段階では、判らなかったのかもしれません。」



代理人「なるほど、後で調べればすぐにわかったのに、拙速に出してしまったということですか。」




⇒C「それは、この段階の話なので、大変申し訳ないですけれども。」




代理人「共同事業者の同意なく個人情報を提供することは、本人と共同事業者の信用を著しく毀損する行為であり、バンドの解散だけではなく、本人の事業継続自体を危うくする非常に重大な影響があります。貴税務署として、X氏の事業継続の断念という私的利益を衡量した結果、それでもなお、個人情報の入手が税務調査において必要不可欠であったという理解でよろしいでしょうか。」





⇒C「この段階ではそういう判断だったと思います。」




代理人「最後の質問です。最後にもう一度伺います。今回の税務調査の手続きは全て適法かつ適切になされ、「本人のバンド活動の所得は事業所得ではなく雑所得である」という判断には寸分の疑いも無いということでよろしいでしょうか?




⇒C「はい。」




そして、以下の意思表示をC統括官に伝えた。




今回の税務調査には著しい法律・通達違反があることが分かった


・にもかかわらず更正処分を下すことは、Q税務署として、国家賠償を請求されても構わないし、不服申し立て・審査請求・税務訴訟に行っても構わないし、これを担当した調査官が罷免されようが刑事告訴されようが構わない、そういう覚悟だと受け止めた。


勤務情報の入手、共同事業者の個人情報の入手未遂という著しい違法調査が行われた為、当該調査の無効を主張する


・併せて、無効な調査に基づく更正処分の差し止め、適法・適切な税務調査の再実施、違法行為をなしたA上席調査官、その上司であるB統括官に対し、直接、X氏に対する正式な謝罪を求める


・万が一、これらの要求が受け入れられず、不当な更正処分が下された場合には、公務員による人権侵害行為がなされたことになる。


・その際には、X氏の人権救済及び公益の維持のため、不服申し立てや審査請求に限定せず、担当調査官及びその管理監督責任者個人の刑事告訴等を検討し、違反者の責任を追及するとともにX氏の利益の救済を図る




この後代理人は、作成していた告訴状ドラフト(添付)をC統括官に見せつつ、「将来の刑事告訴に備えるため、(被告訴人欄に記載されている)A上席調査官及びB統括官の異動先の所属を開示してください。」と両名の名前を指差しながら要請した。(ちなみに、公務員の所属は公表されるものであり、開示することで守秘義務に抵触することはない。)



ドラフト




C統括官は「少々お待ちください」と発言し、退出した。




5分後C統括官が戻ってきたが、回答を拒否する旨を伝えられた。




代理人がその理由や根拠を問いただしたところ、「とにかく、答えることが出来ない。そして、拒否できる根拠条文等は特にない。」という回答があり、税務調査結果説明は終了した。




この後代理人は、C統括官の面前で「現在平成○年▲月×日☆時□分です。これで録音を終わります。」と発言しICレコーダーの録音を止め、C統括官に対して秘密録音をしていたことを暗に示した




【筆者コメント】


前回、税務署から「全面降伏(修正申告)か泥沼の戦争(税務訴訟)継続か、2択から選べ」と言われています。



そこで、小職は第三の選択肢を要求しました。



すなわち、「税務署の全面撤退」です。



前回の威勢はどこへやら、C統括官の発言がしどろもどろになっていきます。




沈黙が増え、後で確認するという逃げの発言を多用し、結果説明の終盤は憔悴しきった表情で対応していました。




ある程度誘導尋問もしましたが、「責め立てると同時に一か所だけ逃げ道を作っておき、そこに相手を誘いこんで事前に仕掛けておいた罠で補足する」という作戦にうまくはまってくれました。




今回の武器は、勤務情報と共同事業者の個人情報です。




また、今回のやり取りの中で、新事実が二つあぶり出されました。




一つ目は、B統括官が代理人やX氏に承諾を得ることなく調査を行ったことが判明し、通達違反の事実があったことです。




そして、これについてC統括官が認めたという言質を押さえています。




二つ目は、照会に対して請願書を出した当方に対するC統括官の発言「(照会に対する)回答が無かったというように判断している」です。




これについては現段階では推測の域を出ませんが、請願書において回答”保留”としているにもかかわらず、税務署は回答”拒否”だったと考えているかもしれないという点です。




簡単に説明しますと、”保留”であれば正当事由ですから何もありませんが、”拒否”であればこれは明確に国税通則法違反で検査忌避の罪に該当しますから、X氏が逮捕される可能性があることを意味します。



一見すると、こちらが危ないように見えますが、実態は真逆です。



今回、Q税務署は”保留”という真実を”拒否”として扱っている可能性があり、もしそうであれば「公務員が無実の国民に対して事実無根の犯罪行為を捏造し、それにより処分を下そうとしている」という国家犯罪が行われた可能性があることを意味します。




このように、攻撃の最中でも次の攻撃材料を見つけることは可能ですので、攻撃に転じたときは一気に責め立てる必要があります。




今回は解説をしても冗長になりますので、3点ほど補足します。(それでも多いですが・・・)




1点目は、C統括官の税務調査に対するスタンスです。




これは他の調査官でも共通に持っていると思いますが、該当する発言は、以下のものです。




所得区分の判定をするのに必要な書類ということで判断して、当然、こちらの方で確認をした」


「そうですね、必要という判断で。」




つまるところ、C統括官は「税務調査において調査官が必要と考える情報は、いかなるものでも入手する権原がある」と勘違いしていると言えます。




税務調査も法律に縛られますので、国税通則法で規定するように「そのものの事業に関する帳簿書類その他の物件」しか、税務署は入手することはできません




これは至極当たり前のことで、例えば調査官が「税務調査に必要だからお前の全裸の写真を提出せよ」と言ったところで、「それは事業に関しない情報なので提出を拒否する」と断っても、何ら問題ありません




上記は極端な例かもしれませんが、調査官は成果が出ないと要求がエスカレートします




故に、そのような暴走を止める枷がこの規定なのですが、上記発言のとおり、「調査官が必要だと判断した情報は全て入手可能」という勘違いをしている調査官は多数存在します




法律違反の認識が無い以上、調査官は平気で違法行為を行い得ますので、しっかりと録音して準備しておくことが肝要です。




2点目は、C統括官がA上席調査官とB統括官の所属情報の開示を拒否したことです。




それまでの経緯を踏まえますと、「将来告訴がなされると、A上席調査官とB統括官に官憲の捜査が及ぶ可能性が高いが、C統括官はそれを認識したうえで敢えて告訴を妨害し、将来行われるであろう官憲の捜査を妨害した」という行為ですので、刑法103条「犯人蔵匿等罪」に該当します




このように、きっちり事実を押さえれば調査官の犯罪はあぶり出されてきますので、地道な証拠収集が効果を発揮します。




余談ですが、C統括官からA上席調査官とB統括官の現在の所属開示を拒否された後、小職はQ税務署から一旦外に出ましたが、その10分後に再びQ税務署の受付に行きました。




そこで、「A上席調査官とB統括官の現在の所属を教えていただけませんか」と尋ねると、受付の方はすぐに調べて教えてくれました(笑)




さらに、A上席調査官はわざわざ小職に挨拶をしに受付までいらしてくれましたが、今現在、自身がどういう状況に置かれているかも知らず、何とまあ呑気なもんだと内心は思っていましたが・・・




訊けば簡単にわかる情報をなぜC統括官は頑なに開示拒否し、法律違反まで犯したのか、追いつめられると統括官とは言え思考回路がおかしくなるようです




3点目は、敢えて録音をしていることをC統括官に示した点です。




やや拙速だったかと反省していますが、その前に告訴状のドラフトを見せたあたりで明らかにC統括官の表情が一変し、只事ではないという雰囲気が出ていましたので、追い打ちをかける意味で、「今までの違法行為は全て証拠に残っている」ということを示して威圧を与えたものです。




これは次回行われるであろう追加説明の場において、「秘密録音の拒否」を宣告される危険も孕んでいましたが、表情からC統括官には明らかに余裕が無かったので、勝負をかけました




次回は、顛末について記載します。



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