税務調査の撃退法・8.【実例】資料提出要請2・反転攻勢 | 税務調査専門の公認会計士・税理士、たけよしのブログ

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前回の勤務情報の依頼から約三カ月後、再びA上席調査官から電話がありました。




内容は、「本人のバンドの状況について詳細に検討を行うため、本人がバンドを組んでいる他のメンバー2人(Y氏とZ氏)の住所又は電話番号(以降、共同事業者の個人情報という)を教えてほしい。情報を求める理由は、彼らはX氏と同じバンドのメンバーであり、他のメンバーがどのような確定申告を行っているかを確認するためである。ただし、現段階では必ずしも他のメンバーに対する反面調査を想定している訳ではない」というものであった。





代理人はX氏へ当該依頼があったことを伝えたが、他のメンバーに迷惑がかかるので、これは拒否してほしいという回答であった。




これを踏まえて代理人は、A上席調査官に対し、住所や電話番号は個人情報であり、他のメンバー本人の同意が得られなかったため提出できない旨を伝えた。




約一週間後、A上席調査官が作成したQ税務署長名を冠した「照会」という文書(添付画像)が代理人へ送達された





節税ドック管理人・サラリーマンの節税請負人 たけよしのブログ-照会


内容は、「(バンドのホームページに記載のある)X氏の共同事業者であるY氏、Z氏の本名、現住所及び電話番号の回答を求める。これは、国税通則法第74条の2に基づく照会である。」というものであった。



(※『国税通則法第74条の2に基づく照会』という文言は、「同法の質問検査権の行使により提出を求めるものであり、拒否する場合は同法の罰則を適用する。」ということを意味しますので、半強制的に提出を求めるという税務署の強い意思表示です)





これを受けてさらに一週間後、代理人はX氏と連名で「請願書」をQ税務署長へ提出した




請願書の内容は以下のとおりである。


共同事業者の個人情報の入手を求める行為は違法である


調査の違法性及び調査手法(調査の工数・選択)の問題点の指摘


違法かつ不適切な税務調査の実施により、X氏が精神的苦痛を被っている


これら問題点についての税務署としての公式見解文書の提出及び改善・救済の請願


・適切な説明があるまで「照会」への回答を保留する


・上記について、文書による返答を平成○年▲月×日までに求める





請願書提出の数日後、A上席調査官の上司であるB統括官から以下のとおり連絡があった。




・この案件はA上席調査官から上司であるBが引き継ぐ


・文書による回答はしない


・調査は一カ月後を目途に終わらせる


・これまでと同様に調査への協力をお願いする




一方、「照会」に対する回答を再度求めるという依頼はなく、今回の調査及び調査手法、「照会」提出に至った経緯に関する口頭での説明もなかった




【筆者コメント】


このあたりになってくると調査から半年以上が経過しており、未だにクリティカルな否認根拠を入手できない調査官に焦りと苛立ちが出てきます




八当たりは止めていただきたいのですが、そのあたりは、共同事業者の個人情報の入手依頼に如実に出ています。




税務署は、たとえ税務調査であったとしても、「その者の事業に関する帳簿書類その他の物件」しか、入手することができません。(国税通則法第74条の2第1項)



当然ですが、共同事業者の個人情報は「事業に関する帳簿書類その他の物件」に該当せず、税務署に入手権原はありません




理由は主に、①「共同事業者が何市に住んでいて電話番号が何番であるか」が分かったところでX氏の税額や事業性判断に影響は無く、所得税額の確認という調査目標を達成できない情報である。②X氏とY・Z氏間には何らの取引もない。等です。




そもそも、他人の申告方法如何で本人の所得税額が決定されるとか、反面調査前提で情報を入手するとか、法律を持ち出す以前の問題で論外です。




こういった基本的な知識を、A上席調査官を始めB統括官やQ税務署の審査部門すら持っていない、そして署内の誰も疑問を抱かない




Q税務署は自らの無能さを、文書という形に残る方法で署外にさらけ出してしまい、世間に恥をさらすこととなりました。




今回の依頼については、前回の勤務情報と同様に、違法であって対応不要であることをX氏に伝えました




今回は拒否してほしいという事であったため、請願書の提出による攻撃を行いました。




そして今回の収穫は、明確に違法行為が記載されている「照会」という公文書を、Q税務署に出させたことです。




「公文書を出して脅せば引き下がるだろう」とA上席調査官やB統括官は考えていたと思いますが、その攻撃はきっちり受け流して逆にこちらの攻撃手段に加えることが出来ました。




音声以上に文書は証拠力が高いものですから、これも大いに武器になります。




このように、調査官は切羽詰まってくると必ず違法行為を行うことをご理解いただけたかと思います。




違法行為は全て録音し、将来の武器に加えておきましょう




しかしながら、調査官は諦めが悪い人間のようで、今度は調査を強制的に終わらせようとします。




今回の請願書は火蓋を切った形での提出となりましたので、ここからは全面対決になります。



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たけよし

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