税務調査の撃退法・7.【実例】資料提出要請1・調査官の違法行為 | 税務調査専門の公認会計士・税理士、たけよしのブログ

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調査終了から一週間後、再びA上席調査官から代理人へ電話連絡があった。




内容は、以下のとおり。




面談調査の情報だけでは事業かどうかの判断がつかない


・そこで、事業かどうかを確認するため、申告期間において給与所得を得ている勤務実態を調査するために、給与所得先の勤務に関する情報(以降、勤務情報という)を入手したい


・勤務情報とは、申告期間である平成20年1月1日から平成23年12月31日までの4年間において、平成某年某月某日に、どこで、何時間、何時から何時まで勤務したかという情報である。


・もし本人が用意できなければ、反面調査として勤務先から直接入手する




これにつき代理人は、X氏に連絡するとともに、①そのような膨大な情報の入手が本当に必要なのか、②日次では厳しいので月次や四半期の情報にならないか、という質問及び依頼をA上席調査官に行い交渉した。




A上席調査官は、上司や審査部門に相談すると言ったが、最終的に以下のような回答があった。




・勤務情報は、事業かどうかを判断するために必要であるから入手を求めるもので、それ以上の理由は無い(=答えない)。


理由につき、(代理人が求める)文書によって開示する義務を税務署が負う旨を規定する法律・条文は無い。故に文書による返答は行わない





これを受け、代理人はX氏との協議の結果、「国税通則法等の法律の規定に則った、社会通念上認められる通常の範囲での反面調査に限り同意する」旨をA上席調査官の上司であるB統括官に伝えた。




後に別の電話で代理人が状況を確認したところ、約二カ月後、A上席調査官がX氏の勤務先から実際に勤務情報を入手した旨を確認した。




また当該依頼があった後、B統括官へX氏のバンド活動が事業に該当することの根拠について、申述書を作成して差し入れている。




【筆者コメント】


まず、反面調査について説明します。




反面調査とは、一般的には納税義務者の税務調査をするにあたり、納税義務者以外の第三者(銀行や取引先)に対して行う税務調査のことで、その実施要件は「客観的に見てやむを得ない時」にのみ、実施することが出来ます




このように反面調査は実施に厳しい要件が付されていますが、税務の現場においては、安易な反面調査が横行しています




なぜなら、納税者にかなりの心理的圧迫をかけられるので、「反面調査されるならこの処理は否認で良い」という判断を引き出す目的で使われることが多いからです。




もちろん、こういう反面調査は違法ですが、これが反面調査の実態です。




この時点になってくると、調査官にも意地が出てきます。




しかしながら、前回の面談調査等により真正面から事業性を否認するのが難しくなりましたので、戦略を変えているものと思われます。




つまり、何が何でも否認してやるというよりは、どちらかというと、X氏に心理的圧迫をかけ、事業所得の申告を自主的に取り下げさせる、という方針に転換したものと思われます。




普通であれば、勤務先に個人事業をやっているということが知られることは避けたいという心情が働きますので、圧迫手段として反面調査をもちだしたものと推測されます。




実際のケースでは、A上席調査官から代理人へ反面調査依頼の連絡があった段階で、X氏には以下を伝えています。




今回の勤務情報は、国税通則法に基づいて税務署が入手する権原の無いものであり、提出を求める行為自体が違法である。


違法な提出依頼なので応じる必要はないが、応じられるならば応じた方がいい




X氏からは、勤務先に反面調査が入ることについて特に問題は無く協力可能である、という回答を得ました。




しかしながら、そのまま出すのは勿体ないので、少し焦らして税務署が強制的に反面調査を行って入手した、という体に持っていこうという事で結論を出しました。




その経緯が今回の実例ですが、「法律に則った範囲内でのみ同意する」という代理人の同意に対して、A上席調査官は法律の範囲を超えて実際に資料を入手してしまいました




もちろん、A上席調査官は気づいていないと思いますが、この事実は数カ月後に威力を発揮することとなります。




なぜ、勤務情報を入手する権原が税務署に無いのかは何回か後に記載しますが、税務署の違法行為はこれに止まりません。



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たけよし

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