244.群盲象を撫ず | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

244.群盲象を撫ず

彼の言葉が頭をめぐる。
いずれもそれは、彼と恋愛を始める前のものだった。
彼の言葉で私は変った。
なりたかった自分を手に入れる喜び。
いつかに捨てた筈の自分を取り戻す。
もう諦めていた。
何故だろう、彼の言葉に安心する。
何故だろう、彼の言葉で強くなれる。
何故だろう、彼の言葉で弱くもなれる。
何故だろう、彼の言葉が私を優しく強く包んでる。
彼に頼った。
彼の言葉を信じた。
裏切られることはない、絶対的な信頼。
目をつむると目の前に彼が居て、私をいつも支えてくれる。


目をつむる。
涙がほほを伝う。
遠くの闇に彼が居る。
遠い。
彼が私に向かって言うのだ。
好きだとか、愛してるだとか…。
そして、最後にいつも彼は言う。
さよなら…と。
信じようとした、でも直ぐ忘れる。
幸せははかなく、いつも幻のようだ。


何で…何で…。


彼を失うことはきっとない。
彼はいつでも私を支えてくれる。
だけど彼が去っていきそうで怖い。
うぅん、それでも遠くても彼は側にいる。
自信と不安…。
根拠のない両極端な絶対的な思いは何処からやってくるのだろうか。


彼はどんな人ですか?
嘘はつかない人です。
でも、隠し事は沢山あるみたい。
愛すること真剣に考えている人です。
でも、解らないままセックスしてるみたい。
素直な人なんです。
優柔不断に見える。


彼は私を裏切ったりはしない。
でも、彼女にはなれないよね。
彼とは恋愛だけじゃ…。
だけど、愛の告白を受けてる。
彼には彼の考えが…。
彼を良く見すぎなんだよ。
彼を悪く見すぎなんだよ。


彼はどんな人なんですか?


私は恋愛中の彼の事を自信を持って話すことができない。
彼がどんな想いで私に言葉を投げかけたのかよく解らない。
目に映る彼はいつも素敵だった。
私は何故、今、一人ぼっちなんだろう。
私が必要だって言ってくれたじゃん…。
私は一人部屋にこもっているけれど、あなたの為になっているのでしょうか。
私はまた、昔のように戻りつつあって、あなたを探しています。


<ねぇ、何を考えてるの?一人っきりで考えないといけないことなの?お願い、離れていかないで。ウチ、どうしたらいいのか解んないよ。前みたいに何か言ってよ。私は嫉妬しちゃいけなかった?声を聞かせて!もっと話をしてよ>
5月が終わる。
部屋の隅、毎日彼を探した。



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