2006-06-01

245.愛する決意

テーマ:彼女じゃない恋愛

「飲み会あって、女のメンツが足らんのやけど…?」
「やめとく」
「…やんな!まだ連絡こんの?」
「来てないよ~」
「そう…。仲直りしたらあんたらも結婚か~」
「何でそんな風に思うの?」
「そんな風に言ってたから…かな…」
「ふ~ん、ウチにはよく解らん」
「大丈夫!大丈夫!過去の清算ってのは想像以上に時間が掛かるんやって」
「ふ~ん」
「あんたも吹っ切らなあかんもんあるんじゃないの?!」
「そうかもね…」
「とにかく!また誘うから、覚悟しときや」
真っ白な卓上カレンダーをめくる。
そして伏せた。
「ご飯、食べるか?」
「今、いい」
「お前、骨と皮になりつつあるぞ」
「元々…」
「先、食べるぞ」
父が開けっ放しに出て行った部屋の戸をゆっくり閉めた。


6月も1週間が過ぎている。
パソコンを立ち上げ確認する。
あまり思い出せない日々。
今年に入ってからの全てが昨日の事のよう。
それは少し言いすぎた。
愛していると言われた日、連絡が出来ないと言われた日、いずれも何週間も経っているなんて思えない。
アレから何回ご飯を食べて、何回トイレに行って、何回眠ったんだろう。
数えられるようで目一杯。


布団の上で三角座りが日課になった。
瞑想など心得たこともないのに、無心になりたくて試してみる。
荒れる息、震える体を嘘つきだと戒める。


何ヶ月も前から動きのない静寂した部屋の空気が震える。
竦む体。
着メロがなりだす前に、携帯の震えを察知する。
鳴り出す携帯、メールを届けたと告知して、携帯はまた何もなかったかのように止まる。
「い……嫌ーーーーー!や!や!や!ヤダ…はぁはぁ…嫌ーーーー」
「せのり?!せのり!!」


痒い。
足の甲が小さくプクッと腫れ上がる。
爪で×印をつけた。
あぁ…私、外に出たんだな…。
神社の境内から空を見上げ、全てを忘れようとした。
ポケットの中に入っていた煙草と携帯。
歯を食いしばりながら、携帯を石段の上に置く。
そして煙草に火をつけた。


しばらくして携帯がなる。
携帯を操作していた私は思わず着信を受けてしまった。
「もしもし」
「もしもし、あんた今何処におるん?」
「え?!家の近くの神社やけど?」
「家族の人心配してたで!とりあえず家帰り」
「もう少ししたらね…」
「何があったん?」
「ん?」
「連絡…きたん…か?」
「うん」
「何て?」
「何かさ~、妙に心が落ち着いてるんよ…でも、涙が止まんない」
「大丈…夫なん…か?!今から…」
「来んといて!」
「けど…」
「発作繰り返してるとこ、見られたくないんよね」
「あんた…」
「大丈夫やで、これくらい慣れてるから」
「変な気…起こしたら…あかんで…」
「あはは、ゆうじと同じようなこと言うんやね~」
「え?」
「ウチ、そんな自虐するように見えるかな?全然死ぬ気なんてないよ!怖いもん。生きたくて生きたくて仕方なくて、ゆうじに縋ったんやもん。死にたいくらい辛くて橋の上から身を乗り出してみたら生きてる方が楽に思えたヘタレだよ。フラれたくらいじゃ…。ゆうじは、きっと側にいてくれるよ…うん」
「連絡ってメール?」
「そうだよ~」
「一方的に?何も話してないの?何て書いてあったん?」
「そんな一気に言われても」
「メール!何て!!??」
「何で…あんたが怒ってんよ…あはっ」
「メール読んで!」


<ずっと連絡できなくてごめんなさい。彼女と別れてからずっと考えていました。振り返ると沢山の人を傷つけていた。物言わずの数日間、傷つけてばかりだった償いは果たされません。お前と出会い、生きていくことを考えさせられた。強くなりたい、そう願った。そして、好きとか嫌いとか、愛すること、依存、信頼、根本から考えた。成らない俺は、せのりの事沢山傷つけたね。せのりと接してきて、俺はお前を確かに好きになりました。せのりは素晴らしい女性だと思います。純粋で、ひた向きで、頑固だけど、とても思いやりがあって、誰にもないもの沢山持っている女性です。そんなお前が俺には必要だった。だけど、せのりとは一緒になれません。結論としてだけ捉えない欲しい。お前には言葉で表現しきれないものがあった。選んだ言葉に間違いはなくとも、結論としては別の道だった。勝手だと罵ってくれても構わない、せのりはきっと理解してくれると信じています。これから俺は、もっと強くなろうと思う。そして、ちゃんと人を愛してゆこうと思う。今、愛している女性がいます。好きな人が出来たからと単純に捉えないでください。今、どうこうというわけじゃない。俺の決意なんです。せのり、幸せになってください。決して投げやりにはならないでください。ありがとう>


「意味が解んない」
「そうかな~?」
「私にあいつは…」
「ほら、言葉で表現しきれなかったって」
「だとしても、一般的に考えれば相当する事だって誰でも考えるでしょ」
「愛はあったと信じてるよ」
「恋愛じゃなかったって…?」
「そう!それそれ!!」
「愛があったら何でも許されるわけ?!私にしたら一晩で捨てられるのと同等だよ」
「もういいよ…」
「はぁ?あんたが良くったって、私は許さない」
「電話しても無理だよ。出ないもん」
「ありえへん!」
「ずっとさっきからもう何十回と掛けてるよ。怖いでしょ~」
「こ…怖いな…出るに出れん状況になっとるな」
「3回くらいで止めようかと思ったんやけどさ、ムカついて鳴らしまくってやってるの」
「そんな冷静に言われると、余計怖いねんけど」
「いつ出るのかな~」

「それ、少し休憩してもらえるかしら…」
「やってみたくなった?」
「いや、1回試すだけで十分…です」
「ゆうじはさ~、恋愛できないって言っただけだよね~。友達に戻れるよね~」
「…あいつって、あんたが言う程いい奴やったんかな?」
「違うかな~?」
「多分、もうしばらくしたら戻ってくるよ」
「しばらくか~。しばらくって怖いよね~」
「とりあえず何も考えずって言っても無理やろうけど、家に帰るかその場にじっとしてるか、ね!解った?」
「うん、足痒いし、家帰る」
「解った、携帯じゃなくて家に電話するから!あと、電話攻撃も休戦ね」


ゆっくり立ち上がり、ジャージについた砂を払い落とし、吸殻を拾い、煙草を石段にこすり付けて少し汚してしまったことを神に謝り、トボトボと家に向かって歩いた。
いたずらに道路の真ん中を歩く。
たまに通る車がゆっくり私を避けながら通る。
あまり生きていたくはなかった。
だけど胸が痛む。
私なんて…そう思いながらも確かに胸の痛みを感じた。
ごめんなさい、歩道を歩いて帰るほど、強くはないのです。
このまま真っ直ぐ、お家に帰りますから…。



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