2006-05-15

234.追いつかない理解

テーマ:彼女じゃない恋愛

彼に自分から会いに行くと言ってから、ほぼ毎日残業だったというメールが届く。
自動車免許の更新をしただとか、新幹線で私の住む町を通過しただのと言う下らない内容も嬉しかった。
もちろん、彼に会うことはない。
大丈夫…不意に私の心に生まれた感情。


<今、京都です。展示会がもう直ぐ始まるよ。頑張ります>
3月半ばに届いたメールだ。
それ以来、彼からの連絡はない。
気温も徐々に暖かくなり、3月はもう直ぐ終わりかけようとしている。
イラつきは体を落ち着かせることがない。
手のひらや指が、気づけば爪あとだらけになっている。
噛み続けている唇は、乾燥で皮がめくれはじめている。
痛みが伝わらない。
否、少し痛いかもしれない。
大丈夫…だと思う。


毎日、彼は忙しいのだからと言い聞かせた。
毎日、バレンタインの日を思い出すようにした。
彼を思い浮かべると笑顔になれた。
だけど、彼の顔が色褪せはじめる。
彼の顔ってどんなだったっけ…。
彼の声ってどんなだったっけ…。


<しばらく連絡できなくてごめんなさい。携帯が故障してて、やっと昨日替えてきました。今は展示会真っ只中で、東京に向かっている途中です。来週大阪展示会でまだまだ忙しい日は続きます。4月16日に行きます。もう少し待っててな。ごめんね>
全てがリセットされたような理由だった。
善しも悪しも…。
寂しかった日も不安だった日も…このリセットで解消される筈。
<故障してたんだ。大変だったね。今まで私が送ったメール、読んでもらえてないんだよね…。ずっと寂しかったんだよ。もうメール届くよね。返事も…くるよね>
寂しいと思った日も不安だと思った日も、彼の手によりリセットされた。
この数日間、何もなかったかのように。
<忙しいから、やっぱり返事はなしか…。16日は、ひぃお爺さんの百回忌だから家空けれない。会いにいけない>
携帯が直って言葉は届いても、機械で気持ちなんて伝えられないと思った。
<寂しい想いさせてごめん>
私の気持ちが伝わらなかったのか、彼の気持ちが伝わらなかったのかは解らない。


<おはよう!4月だよ。今日はね、爺と婆が旅行に行ったから早起きなんだ>
<眠いよ~。会いたいよ~。お腹すいた>
<何か今日はすごくぽかぽかやね。風が気持ちいい>
<寂しくて寝付けないんだ…。ゆうじはもう寝た?声が聞きたい>
<おはよう>
<いってらっしゃい>
<頑張ってね>
<おやすみ>
<ゆうじ…>

自分、ウザイって思った。
2週間、返事を打たない相手に送り続けた言葉。
送信履歴は古いものから順にどんどん削除されていって、私が残した歴は哀れだ。
現状を解ってるから誰にも相談できなかった。
誰の言葉も借りずに、今を理解したいと思った。
忙しいからじゃない、携帯の故障が理由な分けじゃない。
答えを出すのは私でも友達でも世間でもない。
たった一人彼だ。
だから…もう…。


メールを送るのをやめて2日、空っぽになった体にタバコの煙は酔う。
裏切りに似た空虚。
喪失感は時に救いだった。
何をしていいのか解らず、見慣れた自分の部屋を何かを探すように目線を配った。
目についたのは、CDプレイヤーで考える間もなく私の右人差し指は、再生ボタンを押していた。
入れっぱなしになっていたCDがスピーカーから音を出す。
「TWO」というCHEMISTRYの曲。
無差別に手向けられた言葉は無責任だ。
潤んだ目は涙をもち堪えられずに溢れ出た。
知っていたとしても背を向けずにはいられない時がある。
いつかは、そう思う彼を理解したいという気持ち。
曲を終わらせたCDは、少しの間空回りし静止した。
だけど、ずっと鳴り響いている音楽。
この部屋に溢れた想いは、その曲そのものだった。
音のない部屋で、毎日我慢していた涙全部、流しきった。


<ねぇ、いつまで続くの?届いたメールはいつも謝ってて、ゆうじが何を考えてるのか解らない。去年の年末からだよ…ずっと。最近じゃ何の反応もない。表す感情は薄くとも、無視され続けてたら辛いんだよ。謝って欲しいんじゃないこと伝わってるのかな…?解ってもらえてるのかな…?もっと言い訳してよ>
それでも彼からの返事はなくて、流しきった涙は出てこなかった。
<そっか…メール1通遅れないくらい忙しいんだね。解った。それでも返事が欲しいと思う私はゆうじに頼りすぎなんだね。もういいよ、頑張ってね>
最後…そう思ったメールだった。
彼の返事を期待しつつ、毎日眺めた携帯を閉じた。
思いっきり泣きたいと思った。
だけど泣けなかった。
力いっぱい握り締めた拳に痛みはなかった。


彼が来るといった前日、15日の夜、23時を回っても彼からの連絡は1本もなかった。
もう終わりかもしれない、この思いはもう頭を通り過ぎることはない。
とどまり続ける思い。
震える手で私は携帯を手に取った。
ボタンを2回押すと彼へと繋がる。
とても簡単だ。
その繋がりを切るのもとても簡単だ。
コール音はしつこく鳴り響いている。
私にこの繋がりを切る気はない。
「もしもし」
どれくらい経っていただろうか、面倒くさそうな低い声で彼が応答した。
「もしもし」
「はい、誰?」
「え、あ、あの…ゆうじ?ウチ…」
そういうと、彼は黙ってしまい、暫く無言のあと、彼は咳払いをし大きく息を吸い込んだあと、無言で電話を切った。
息を吐く事もなく…。
<何で切るの!うち、避けられてるの?>
彼が眠ってしまう前に、急いでメールを打つ。
<明日、会いにいきます>
直ぐに返事が返ってくる。
<何で!メールは読んでくれてないの?会えないって言ったじゃん。それでも来るって言うの?私の都合お構いなしに。連絡1本なく、勝手に明日来るんだ。もう会いたくないって言いに来るの?もう、嫌だ!ずっとずっと待ってたのに…嫌われてたの気づかなかったよ。もう解ったから…そっとしておいて>
<明日、何とかして会って>
<もう解ったから明日じゃなくてもいいでしょ。疲れちゃったよ。あまりイジメないで…。無視してたくせに、さよならする時はちゃんと返事するんだね。うち、ずっと愛されてる気でいたよ。大丈夫って…。怖いの、明日会ったらどうなっちゃうのか解んないよ…>
心で否定しつつ、心にとどまる言葉たちが溢れ出た。
もう彼は私を好きではないんじゃないだろうか、そんな疑い。
シカトされて、それでも気づかないフリをしてきた自分。
何らかの理由がある、彼が話をしてくれる時まで待とうと信じた自分。
震えは止まらない。
彼が居ない時の過ごし方を私は知らない。
生きられない…。


嫌…嫌……嫌………。


<嫌!!怖いよ、ゆうじがおらんようになったら、ウチはどうなるの?ずっと守るって言ってくれたのに。ずっと好きでいてよ。好きって言って、仕事が忙しかっただけだって言って、否定してよ、何か言ってよ>


彼からの返事はなかった。
彼は何も言ってくれなかった。
この夜は明けるのだろうか…。



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CHEMISTRY, TETSURO ASO, KAZUNORI FUJIMOTO, YAMADA NORIKO, Jun Abe
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