213.新年 縁の切れ目? | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

213.新年 縁の切れ目?

<大丈夫?>
<しんどくない?>
<ご飯、食べれてる?>
言葉をかえ、何度も何度も毎日彼にメールを送り続けた。
繰り返される不安な質問メールが続くのは、彼の返事が一切なかったからだ。
正月休みに入った彼から連絡がない。


私、しつこいだろうか…。


一応知っている。
テレビの恋愛番組なんかでよく見かける、人間関係の切れ目に自然消滅という傾向があるということは。
卑怯な人間がやることだと思う。
面倒になった相手にはシカトという行為で、気がない事を知らしめるもの。
運がいいのか悪いのか、私は自然消滅というものを経験した事がない。
言われなきゃ解からない。


だから、誰にも相談することなく、何を信じていいのかも解からず、何を求めているのかも解からず、ただただ、質問を繰り返す。
解からないフリをする。


家には親戚たちが集まっていて、私は少しだけ忙しい。
いつもの倍の食事を作り、お正月の準備を始めている。
もう直ぐ年を越す。
皆が年賀メールを作成し始めた頃、私は年越しそばを作り始める。
「そば、出来たよ~」
ズルズルと長いそばを口に運ぶ音と共に、近くのお寺さんが鳴らす除夜の鐘が微かに響いてきた。
そばをすすりながら、皆が左手で携帯をいじりだす。
私は台所からぼ~っとそんな皆の姿を眺める。
食べ終わった食器が返却され、スポンジに洗剤をつけて食器を洗う。
背後では着メロが賑やかになっている。
変なもので、この光景をお正月だなと思うようになった。
このご時世、元旦を待つ者は珍しい。
「せのりちゃんの携帯なってるよ」
「ありがとう、後でみる」
何となく、メールをチェックするのが怖かった。


<あけましておめでとう。今年もよろしくね>
私は友達にメールの返事をする。
そして、彼にもメールを打つ。
<あけましておめでとう>
メールのなかった彼へ、今年もよろしくしてもいいのか判らずに、新年のあいさつを終わらせた。
友達へのメールとは違って、何も言葉が見つからない。


「せのりちゃん、お正月は彼氏と会うん?」
「会わんと思う…」
「じゃぁ、今年も一緒に買い物いこうな」
「うん」
従姉弟との恒例となる約束。
こうやって家族や親戚達と過ごすと安心する。
切れない縁っていいよね…。



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