209.恋がしたい | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

209.恋がしたい

3日後、忙しそうな彼からメールが届いた。
<仕事と飲み続きでかなり免疫力ダウン。疲れ気味の毎日だよ。今週末はマラソンやのに全く練習してない。せのりは元気?お前この前、車に上着忘れたやろ!オカンからメールあったで…上着忘れてるって。年末は、実家戻れたらいいけど、寝正月な予感>
ため息が出た。
クリスマスを1週間後に控えているというのに、クリスマスはおろか年を越して正月の話を始めた彼。
そして、正月も寝て過ごすのだと遠い未来の予定を教えてくれたらしい。
シカトしてやった。
私は聞く耳持ちません。
そんな先の話、私は知らない。
会えないと解かっていても、私はまだまだクリスマス気分なのだ。
キラキラ光る街に心躍らせてる。
色んな事も考える。
もしかしたら会えるかもしれない…とか。
ただ、彼には伝えられない想い。


シカトしたままの翌日の朝、「おはよう」と彼がメールしてきたけれど、そんなメールにも私は応えられなかった。
たった一言「おはよう」と言えばいいだけのメールなのに。
何を拘っているのだ、子供みたいに…。
ふと、誕生日やクリスマスをここまで特別な日にさせた親の愛を何となく感じた。
どんな事があっても笑顔になれる日なのだとそんな風に思う特別な日。
涙を流したり寂しくなったりする日ではないと思う事が、与えられない特別に悲しくなった。
そして彼がいなくなる様な謎の感覚。


<クリスマス、よりによて福井へ出張が決まりました。鬼のような会社です。せのりに逢いたい気持ちがあることだけは忘れないで。昨夜のメール無視してるから多分怒ってるんやろ?逢えるなら逢ってるよ…>
昼、彼からメールが届いた。
愚痴一つこぼさなかった私にこんなメールを送ってきた。
リアクションに困った。
クリスマスの話を避けられても語られても私には辛かった。
会う時間があったのなら私に会いたいというのは本当なんだろうか…。
知らず知らずのうちに私は気持ちをセーブする。
<大丈夫だよ>
そんな風に返事をしていた。

私の心の中には「それでも会いたい」という気持ちが大きく存在している。
福井だろうがどこだろうが、私は彼を追いかける。

私の心を吐き出せば、きっと私は重い。
初めて男性に求め抱く感情は限度を知らずに押し寄せる。
伝えたい想いは伝えられない。
「言える立場ではない」こんな事を言ったら彼はきっと怒るだろう。
だけどそう思う、私はどうしても言えない、彼女のいる人にクリスマス会いたいなどと。
もうすぐ新しい年がやってくる。
時期的にも一掃させたい気分になる。
このままでいいのか?と自問。
堂々と答えられる強さもなく、心はモヤモヤと私をイジめる。
もっと、思いっきり恋がしたい。



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