206.予知夢 | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

206.予知夢

「せのり、起きて」
夢の狭間に彼の声が聞こえる。
「起きないと置いてくぞ」
彼の声がどんどん現実へと連れ戻す。
が、目覚めに2時間掛かる私はまた夢へと引き戻されるのだ。
夢を見た。
きっと私には霊感はないのだけれど、お告げ的夢をよく見る。
もしかしたら霊感があるのかもしれないけれど、霊的なものを目にしたことも聞いたこともない。
従姉弟には、はっきりとした霊感があって見たり聞いたりがあるらしく、そして私と同じくしてそういった夢をよく見るそうだ。
不思議なことに同時によく似た夢を見ることもあった。
血筋なのかもしれない。
朝の浅い眠りによくこういった事が起こる。
普通の夢との違いを説明することはできないのだけれど、ハッキリとした色、ハッキリとした声と全てが現実にに勝るほどの印象がそこにはあるのだ。
あやふやな言い方のほうがしっくりくるかもしれない、そう、心に引っかかる夢。
ただ、私にはそれを理解する力はない。
だから何を告げられているのか良く判らないのだ。
後々それは判る。
このことだったのかと…。
私は目を覚まし起き上がる。
「おっ、今日は結構早くに目ぇ覚ましたな、シャワー浴びるか?」
彼が私に話しかけている。
ボーっとしていて彼の声に応えられない。
私は完全に目を覚ましているのだけれど、心に残る不安を抱えててた。
夢が私を不安にさせている。
どういう意味?
理解出来ない夢が私を怖がらせている。
この感覚は当たる。
私にもう少し夢を理解する力があれば…。
あとどのくらいかは判らない、もう少しでこの感覚が現実になる…。


彼がシャワーを浴びる音が聞こえてくる。
私はベッドからそっと降り、ペタペタと風呂場まで歩いた。
するっとパジャマを力なく脱ぎ落とし、彼がシャワーを浴びている風呂のドアを開けた。
「せのり、どうした?」
そっと彼の目を見つめた。
「ん?どうしたんや?」
彼が優しく聞く。
私は開けたドアを閉めながら、風呂場に入る。
「え?!せのり、どうしたんや、おっぱい見えてるで」
彼は様子のおかしい私に少し半笑いでそう言う。
自分でもおかしなことをしているな…というのは感じていたが、よく判らなかった。
こうしたかったのだと自分の心が言っている。
シャワーはずっと彼の胸を打っていた。
彼は固まっている。
私はそっと彼に近づき、彼に触れた。
そっと手を彼の背中に持ってゆき、彼に触れた。
彼の胸に頬を当てた。
抱きしめる力もなく、そっとそっと。
シャワーのお湯が少し顔にかかる。
彼は慌てシャワーの位置を変え、私の背中にお湯が当たるようにし、そっと私の背中をさすった。
「どうした?ん?」
どうしたんだろうと色々考えた。
「中途半端にシャワー浴びたら風邪ひくぞ」
彼はずっと私をシャワーで温めてくれていた。
そっと彼の顔を見た。
「離れたくない」
「あはは、何?甘えてるの?」
「離れたくない」
「俺、頭にシャワー掛けたいんやけど~」
「離れない」
「離れないと掛かるぞ!目ぇつむれよ」
そういうと彼は頭から湯をかぶる。
ジャバジャバと湯が降る。
「よし、出るぞ」
「や!まだこのまま」
「俺は出る!早く準備しな、スッピンで連れ出すぞ」
「やだ!」
「じゃぁ、早く準備して遊びに行こう」
「うん」


私に夢の分析は出来ない。
だけど、何となくそれが彼をさしている気がした。
彼が居なくなるようなそんな気がした。
彼だけじゃないかもしれない。
何となく、一人ぼっちそんな孤独を感じる夢だった。
思い過ごしであればいいけれど…。
謎めいた恐怖が私をじんわり取り囲む。



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