202.彼色に染まる | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

202.彼色に染まる

食事を済ませ何処とはなしにドライブすることになった。
当てもなく国道を走る。
「やっぱカジュアルはえぇよな」
彼はよっぽど嬉しかったのかまた私の服の事に対して話を始める。
「でも、スリムよりもストレートの濃い色の方がよかったかな」
「これしか持ってないもん」
「買ぅたろか?」
「え、いいよー」
「よし、服屋いこう」
彼はそういうと目的地まで真っ直ぐ車を走らせた。

私は少しテンパっている。

彼色に染まる的な何かが私をじんわりと刺激する。


一件の古着屋。
とても大きな古着屋だ。
都会の人がこの店を見てまず驚くであろう、平面駐車場の広さはこの辺りでは普通だ。
道沿い出入り口付近にはポツポツと空きスペースがあるが、この辺りに住む人たちはそんなスペースには目もくれない。
奥へ奥へと突き進み、店の出入り口付近の駐車スペースを探す。
結局見つける事が出来ず少し離れた場所に車を駐車。
「せのり、ちょっと先行っててくれるか?」
そう言われ私はトボトボと店の中へと歩いて行く。
早く追いついてくれと思いながら。
正直、頭の中はパニック状態だった。
男の人とショッピングという経験がない。
どうすればいいのか解からなかった。
とりあえず、入り口付近の小物売り場を一人眺める。
が、一向に彼は来ない。
同じところをクルクル回っていても不審なので、少し奥にある隣の雑貨コーナーを眺める事にした。
輸入雑貨が置いてあり、少し気分はハイだ。
見たこともないおもちゃで遊んでいると時間を忘れる。
ふと我に返り、彼が遅いことに不安になる。
「お前が興味あるのは服よりこっちか!」
彼が後方からそういいながら近寄ってきた。
「おもしろいよ」
「そか、んじゃちょっと俺みてくるわ」
彼はそういうと、すぐに店の奥へと消えて行った。
私はそっと彼を追う。
敷地面積の大きい店で、彼を見つけ出すことは難しかった。
何処を歩いても彼はいない。
私はまた雑貨コーナーに戻ることにした。


・・・つまんない。


変なサイコロを転がしてみたり、パズルブロックになっている置物を組み立ててみたり、一人ぼっちがこの変な雑貨に先ほど出会ったばかりの感動は一瞬にしてきえさった。
暫くすると雑貨コーナーの近くの売り場に彼がいるのが見え、私はそっと彼に近づいた。
「何かいいのあったか?」
「別に・・・」
「俺もイメージするものと違うんよな」
「そう・・・」
「うーん、流行が回るのは早いわ」
「ね・・・」
「追いつかんもんな」
服を手に取り、生地やデザインをチェックする彼の顔が仕事をしていた。
彼が仕事をしている時の顔は知らない。
だけど多分そんな顔だろうなって思う。
少しだけデート気分を残している彼の顔を見て、何となく私に相づちを打たせる。
「そろそろ行くか、いいのないし」
それは、仕事の材料が?それとも私へプレゼントが?
「うん」
私はトボトボと彼の後を追った。


・・・何しに来たんだろう。


その後アミューズメントビルへ行き私たちは卓球やビリヤードと施設内にあるスポーツで思いっきり汗をかきながらのスポーツデートを夜まで楽しんだ。
「そろそろ行くか」
「うん」
「疲れたし、映画は明日にしよう、な」
「明日?」
「今日じゃなきゃダメ?」
「うぅん、そうじゃないけど」
「遊びたりない?」
「うぅん」
「明日もいっぱい遊ぼうな」
「いっぱい?」
「あぁ、明日もいっぱい一緒にいよう」
明日に引っかかった私の気持ちが彼に伝わってしまったのか、彼は最後に強調してそういった。
明日もずっと一緒に居られることに私は驚いてしまった。
特に約束をしたわけでもないけれど、私の望みが徐々に叶ってゆく過程が何だかこそばゆい。
「ねぇ、ラブホ行くの?」
「え?!なんで?」
「9時45分だから」
「あはは」
「ほんと、A型さんだよね」



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