198.守りたいものが | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

198.守りたいものが

私はとあるデパートの中心にあるフードコートでカフェオレを飲んで寛いでいる。
白で統一された背景に、観葉植物の緑が映える。
私は時計を気にしている。
待ち合わせだ。
もうすぐ彼が来てくれる。
ソワソワする気分の中、一角が騒ぎ出すのに注意を引かれる。
そんな騒ぎは人の流れを作り出す。
私はそんな人の流れを見て思わず席を立つのだ。
そして、そんな異変を理解しようと目をこらす。
何が起きたんだ?
あちらこちらで女性の悲鳴があがるのが聞こえる。
マズイ、逃げなきゃ。
だけど、私は動けなかった。
ここを動いてしまったら、彼に会えなくなってしまう。
私は立ちすくんだまま騒ぎのある方向をずっと眺める。
すると、騒ぎを起こしている者と目が合ってしまう。
騒ぎを起こしているのは男性だ。
如何にも変質者を思わすトレンチコートを着た男が、目が合った私にジリジリと押し迫ってくる。
右手には万能ナイフが握られている。
どうすれば・・・。
2・3歩後ずさった反動で私はその場から似げる。
走りながら後ろを振り返ると、変質者は私目指して追いかけてくる。
何で私なのだ・・・。
どうやら私は逃げ遅れたらしい。
逃げるデパート内に人影はない。
人って何故、逃げ場のない所を逃げ場に選んでしまうものなのだろう。
行きどまって初めてしまったと気付く。
振り返ると、変質者は余裕たっぷりに私に近づいてくる。
その足取りは私に更に恐怖を煽る。
変質者はナイフをかざし、今にも襲いかかろうとしている。
「いやーーーー」
私は頭を抱え叫びながら座り込んだ。
ドンと押しつぶされる感覚に恐る恐る目を開け顔を上げると、目の前には彼の姿が。
ぶつかった相手はどうやら彼。
足元には万能ナイフが転がっている。
彼が助けてくれ・・・た?
警察が駆けつけ変質者は、連行されていった。
「ちゃんと待ってろって言うたやろ」
彼は私にそう言う。
「怖かった」
「俺が守ったるやん」


<って、言う夢を見た>
<いい夢見れて良かったやん♪ま、現実には俺のが「変質者」かもよ…。何か変わったことはないか?>
<まぁね、それでも守ってくれる変質者なら大歓迎。変わったことと言えば最近やたらとゆうじが構ってくれることくらいじゃないかな>
<そか、んま否定は出来ん…>


何故こんな夢を見たのか、何かを訴えかけるように鮮明だった。
守って欲しかったのだろうか。


その夜、曽祖父がいる病院から電話連絡が入る。
「今夜がお別れです」
家族が病院へと向かう。
既に延命器具を取り外された曽祖父を看取る為に。
私は留守番だ。
彼に電話を繋げる。
「ちゃんとお別れできるか?」
「やだよ・・・」
「側におるから、ちゃんとお別れするんやで」
胸が張り裂けそうだ。



[ ← 197 ]  [ 目次 ]  [ 199 → ]