174.彼とのメール | 彼女じゃない恋愛*愛した男には彼女がいた

174.彼とのメール

一般的に彼氏・彼女とはどのくらいの頻度で連絡を取り合っているのだろうか。
そしてその連絡がメールだとしたら、一回の連絡につきどのくらいメールが往復するのだろうか。
誰かと比べて寂しくなる。
私が比べる対象は、親友カップルだ。
寂しさを感じる時、自分は普通ではないのだと思う。
そして羨ましく思う親友をきっと普通なのだと思い彼にそれを求めるのだ。
1日1回あるか無いかのメール。
電話はデートの前以外は殆どない。
メールが来て返事をしたら終わり。
どんなに「?」を付けて送ってもその返事は翌日繰越だ。
何?自分ルールがあるなら教えて欲しい。
街を歩けば、ピコピコ携帯を弄る男性を見て蹴り飛ばしてやりたくなる。


<出張です>
彼からメールが来る。
出張先では、殆ど連絡をくれない彼。
社会に出た事がない私は、仕事というものに対し考えが甘い。
その甘さだけは自覚しているが、どうしても仕事が何なのさと思ってしまう。
もっとどうにでも出来んだろう!?と思ってしまう。
そう思うだけで、口にはしない。
理解しているフリをする。
理解したいと思っている。
だから、確実に仕事が終わったであろう時刻に私は連絡をする。


─ パケット通信中です。お繋ぎ… ─


彼に電話をすると、彼はメール中だった。
少ししてからもう一度掛けると今度は話中だった。
胸が騒ぐ。
10分、15分と時は過ぎてゆく。
段々やけになって、私は繋がらない電話を掛け続ける。
1時間が過ぎ…いったい私はどのくらいの間、彼に電話を掛け続けただろうか。
日付が変わって少ししてから、やっとコール音を聞く事が出来た。
掛け続けていたのでよく解かる、彼がたった今電話を切ったこと。
もしかしたら彼はまだ携帯を手に握っているかもしれない。
だけど、私のやっと繋がった電話は彼の手により切られてしまった。
掛けなおしたら電源が入っていなかった。
私の背中はハゲオヤジもビックリする程の哀愁を漂わせていたと思う。
ありえなかった。
対抗意識か知らないが、何故か私も携帯の電源を切った。


数日が経った金曜の朝、出張先からメールが届いた。
<今日で最後や、頑張るわ。明日は家にオカンが来るらしいから早く帰って掃除せな!厄介や>
<大変やね、頑張ってね>
何となくの当たり障りの無いメールを私は返す。
何となく詰まる話をしても返事がないように思ったからだ。
メールを送信した後の彼の意識はもう私には向いていない気がした。
彼はどんな風に私にメールを打つんだろう。
絶対に見ることは出来ない姿を想像する。
私が想像する彼はとても投げやり感たっぷりの仕上がり。
ふーん、オカンとは連絡とってるんだね…。

私からの繋がらなかった連絡はなかったことになったんだね…。


それから週末が終わりかけようとしている夜にやっと返事が届いた。
<あぁ、もう大変大変。連絡遅れてごめん。やっと肩の荷が下りたよ。しかし、おばさんとはうるさい生き物やね…。せのりを全く構ってやれてないけど、いつもせのりの事は想ってるよ。最近日常的にややこしい事多くて、いつもながらにお疲れです>
<そっか。ご苦労様やね。うちは、大丈夫と思う>
強がってみせた。
素直になるというのが、私と彼との間では約束事のようなものなのに、強がった。
フラれたくない思いからなのか、寂しさからなのか、強がらずにはいられなかった。
防衛反応だったのかな。
彼は私の強がりに気付かなかった。
返事は返ってこなかった。
素直になっていたら、今、私の胸は痛みに支配されていたのだろうか。
そっか・・・そっか・・・一人納得する私にはどうだったのかは解からない。
ちょっぴり胸を刺す痛みを、強がりがフォローしている気がした。



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